太公望
                           
乱世籐馬




 まっすぐに伸びた針は、どこまでもすらりと伸びている。・・・ように見える。水の中で、魚達がその針をよけて進む。
 その針を水の中に落とした張本人、太公望は釣りをしながら考え事をしていた。

「望ちゃん・・・」

 黄巾力士に一緒に乗ってきた人物に声をかけられるが、太公望は微動だにしない。

「望ちゃん・・・?寝てるの?」
「・・・普賢。すまぬ、考え事をしておった」

 返事をしなかった太公望を責めるでもなく、水面に目を落としたままの彼に普賢は笑いかけた。

「望ちゃんのクセだよね。釣りをしながら考え事をするのは」
「・・・そうだのう・・・。おぬしにこの釣り針をもら貰ってから・・・」

 それ以上言葉は続かなかった。続ける必要がない。

「なにを考えてたの?」

 足首まで水につかり、カニと片手で遊びながら普賢は言った。太公望は、ゆっくりと答える。

「・・・今朝見た、夢のこと」
「夢?」
「ああ」

 カニのはさみに手をはさまれて、普賢は少し顔をしかめた。血が出るほどの傷ではないが、少し皮がむけている。

「・・・どんな、夢?言いたくなければそれでいいけど」
「・・・・・・仙人界が、血で染まっていた」

 想像して、普賢は眉を寄せた。争い事は嫌いなほうだ、自分も、太公望も。太公望は続ける。

「みな皆が、次々といなくなる。血が、そのごとに増えていって・・・」
「もういいよ、望ちゃん」

 つらそうな親友の様子をみて、普賢は太公望の言葉をさえぎった。だが、太公望は続ける。

「けど、わしの後ろにはおぬしがおって・・・」
「いいってば、望ちゃん」

 やめる様子のない太公望に、普賢はなおも言う。むだ無駄だとわかって、太公望のとなりに腰をおろした。

「周りから誰も人がいなくなって、でも、おぬしがいるから大丈夫だと後ろを振り返ったら・・・」
「いいよ、望ちゃん。もうやめて」

 太公望の澄んだ瞳から、涙がこぼれ落ちた。普賢は悲しそうな顔をして、もういいよ、と続ける。

「・・・おぬしが・・・普賢が・・・いなかっ・・・」

 涙で声を詰まらせる太公望の肩に、そっと手を置いた。膝に顔をうずめて、声を押し殺して泣く太公望を、普賢はあたたかな瞳で見つめた。

「・・・望ちゃん、それは夢なんだよ。望ちゃんの不安が見せた、夢」

 子供のように泣きじゃくる太公望に、母親のように普賢は言った。静かだが、一言も聴きもらさないようなしっかりした声だ。

「僕はココにいるよ」

 自分の存在を確かめさせるように、肩を何度か叩く。

「望ちゃんがいつか、戦いに身を投じることになっても、僕は望ちゃんのそばにいる」


ずっとずっと、そばにいる・・・望ちゃんのそばに、僕はいつでもいるよ・・・




fin



雑談〜

ども〜、乱世藤馬です。ありったけの太公望小説を送りました。
まぁ、読んでくださるといいですな。でわ・・・

*お礼な気持ち*
こんな素敵な望ちゃーんvな話をありがとーございました♪
望ちゃんと普賢ちゃんの二人の話はほんとーに好きです!切なくて好きv
いつもほんとーにありがとうございますv感動しながら読んでますよ!!
今後も見捨てないできださいましvお願いします〜(π0π) ウルルルル(笑)




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