僕の世界に光はない
僕はただ、生きるだけ


ラオンは黙って夜空を見上げた。
周りには蓮の花が咲き乱れていて、幻想的な雰囲気をかもしだしている。
大きめの石に腰掛け、星を数えながらラオンは蓮の花に触れた。
ぱあっとほんわかした光が溢れ出してくる気がする。ラオンはその光に飲み込まれるように、石から落ちた。
眠りについてしまった。


『ラオン・・・・・・』

自分を呼ぶ声で、ラオンは目覚めた。

『ラオン・・・・・・・・・あなたはなにを望むのです』

困惑したラオンは眼をまんまるくさせて声をきいた。

『僕は・・・・・・』
『わかっています・・・・・・あなたは、母上に逢いたいのでしょう?』

 ラオンの母は幼いときに死んだ。ラオンは母の顔を憶えていないが、預かってくれた寺の住職が、あなたは母上によく似ている、とつぶやいたのを憶えている。
 こくん、とラオンはうなずいた。

『逢わせてあげます。いらっしゃい・・・・・・』

 声に付いていくと、蓮の花が一面に咲き乱れている場所へ出た。

『あなたの母上は・・・・・・私は、蓮が好きでした』

 声の主が母だったのだと、ラオンはそのときさとった。

『蓮ははかなくて・・・美しくて、幻想的で・・・・・・あなたを身ごもったときも、蓮を眺めていました』

 蓮の花がいっせいに揺れた。

『死んだときも、私は蓮を眺めていました・・・・・・・・・』

 最後に見たものは、蓮でした。

『ラオン・・・・・・』

 慈しむように名前を呼ばれて、ラオンはつい、そちらに走っていきそうになった。
 だけど。

『行けません』
『ラオン・・・何故?』
『僕はまだ、生きなきゃいけません。あなたのために』

 自分の命を捨てて、僕を生かしてくれたあなたのために。
 蓮の花が、いっせいに揺れた。
 花弁からキラキラと雫がこぼれた。
 泣けないあのひとのための涙だと感じた。

『・・・・・・帰りなさい。私のぼうや・・・・・・・・・』

 ラオンは蓮に触れた。あたたかな光が満ちる。

『ありがとうございました』

 一言つぶやくと、ラオンの意識は瞬く間に闇へ落ちた。


『ラオン、ラオンおきなさい!!』
『あ・・・・・・住職様』
『一体どうしたのじゃ、こんなところで』

 ラオンは地面に倒れていた。一面に咲いた蓮の花を押し倒して。

『どうした?』

 ラオンが涙を流すのをみて、住職は驚いたようにその様子を見守った。

『うっ・・・・・・ひっく・・・・・・』
『わかった、わかった。もう泣くでない』

 住職はそっとラオンを抱きかかえ、寺の中に戻った。


 蓮の花が泣いたのを、誰も知らない。
 蓮の花が揺れたのを、誰も知らない。


                                    乱世藤馬




*お礼な気持ち*
こんな素敵なオリジナルなお話をありがとーございました♪不思議で幻想的でv
とても良い話なのでvvな感じでした!!今後もよろしくお願いしますね!




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