神界
                         
乱世籐馬




「普賢さん、面会ですよ」

 誰が来たのだろう、と思いながら、普賢は扉をあけた。面会用の部屋だ。神界は決まった自分の領土というところがないので、面会はたいていこの部屋で行われる。防音設備つき、飲み物は自由というこの部屋を利用するものは、たいてい決まっている。
 部屋のカーペットの上にあぐらをかき(イスもある)、瞑想している風の後ろ姿を見たとき、小さな叫びがもれた。

「・・・望、ちゃん・・・?」

 人物は振り返った。行方不明、もしくは死んだとされている伏羲、その人であった。

「普賢・・・元気にしておったか?」

 懐かしい声、懐かしいトーンで名前を呼ばれた普賢のひすい翡翠色の瞳から、瞬く間に涙があふれ、頬をつたった。

「普賢!?なにを泣く!?どうした、おい!!」

 あわてふためく伏羲を優しい瞳で見つめ、涙をふいた普賢は、心なしか元気のなさそうな笑顔を伏羲に向けた。

「望ちゃん・・・ごめんね、ちょっと懐かしくなっちゃって・・・」

 スペアの太極符印を抱えている、生前のままの普賢を見た伏羲は、泣いていた普賢と同じように、懐かしさにとらわれた。

「・・・ところで、どうしたの?ここまで来たのなら、武吉君や四不象にも逢っていきなよ」
「・・・あやつらはもう、わしがいなくても大丈夫であろうから・・・」

 普賢に逢いたかったら、とはいえぬ伏羲は、うつむいてそういった。

「僕に逢いたかったんじゃないの?」

 いきなり笑顔で核心をつかれ、伏羲はどきりとした。素直にうなずけばよかったものの、プライド意地が彼の感情の邪魔をした。

「ち、違う!!たまたまこの辺に来たから、普賢はどうしているかなあ、と・・・」
「いや、絶対に望ちゃんは僕に逢いたかったんだよ」
「違う!!」

 しばらく言い合った後、体力を使い果たしたふたりは寝転んだ。普賢が口火を切った。

「望ちゃん・・・」
「なんだ?」

 少し言いよどんだ普賢は、結局続けた。
「望ちゃん、お帰りなさい」

 一言で、伏羲の心はなごんだ。そして、さらに普賢は続ける。
「そして、行ってらっしゃい」

 どういう意味か、と傍らの普賢を見る。普賢のひすい翡翠と、眼が合った。

「僕、望ちゃんに頼るのはやめにしたんだ。僕は・・・ううん、僕たちは、望ちゃんがいなくても生きていける。望ちゃんは、望ちゃんらしく、気の向くままに生きてよ。前みたいに、のんびり無理なく笑えるようになったら、また僕のところに来てよ」
「・・・そうだのう・・・もう・・・皆を頼るのはやめにしよう・・・わしはわしらしく生きるとするか・・・。普賢、世話になった。また来るよ」
「うん。行ってらっしゃい、望ちゃん」


fin




雑談〜
どうも、乱世藤馬です。またまた太公望小説を送りつけちゃいました。
これもかなり前に書いたものです。多分・・・・・・半年くらい。古いものですが、どうぞおおさめください。

*お礼な気持ち*
「お帰りなさい」「そして、行ってらっしゃい」の言葉にvvです!!望ちゃんの帰る場所はここだ!!
みたいな感じだしv(笑)望ちゃんは普賢ちゃんと仲良しが一番のほほん♪でよいですわv
今後も私のことよろしくです!!愛してる!!(爆)






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