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風の旅人
乱世藤馬
天化の師である清虚道徳真君と、父である武成王黄飛虎が封神されて初めての夜。天化は眠れず、寝台の上に身を横たえる。特になにをしたいわけでも、することがあるわけでもない夜は、ほとんどこうして寝台に横たわり、ボーっとしているのだ。だが、今夜は勝手が違った。ボーっとしすぎているようだ。口にくわえているタバコの灰が、はだけている胸の上に落ちて、熱さでようやく正気に戻る。
「熱っ･･･」
タバコが短くなっていることに気付き、灰皿に押し付けて、また新しいタバコを取り出す。火をつけずに･･････いや、火のついていないことに気付かぬまま口にくわえた。
「天化兄様ぁ･･････」
「天祥？どうかしたさ？」
幼い弟のか細い声で現実に引き戻された。ドアの隙間から蒼い瞳が覗いている。天化はドアを開け、天祥を中に招いた。
「眠れない･･････」
つぶやくように言われ、天化は天祥を膝に乗せる。天祥は黄金色の頭を硬い兄の胸に押し付け、そのまましばらくじっとする。
そっと頭をなでてやると、わずかに身動きする。どうかしたのか？という問いを乗せたつもりだった。しばらくして、天祥の蒼い、大きな瞳から涙があふれた。
「･･･っく･･･」
本格的に泣き出してしまう。とりあえず思い切り泣かせておいて、あとで事情を聴こうと思い、天化はしばらく泣かせるままにしておいた。銀製のライターに手を伸ばし、タバコに火をつける。そういえばこのライターは、何歳かの誕生日のときに道徳がくれたものだ。タバコには幾度となく手を出していた天化に、これはうまいぞ、というイチオシのタバコつきで送ってくれたものだ。そういえば、吸いすぎには注意しろよ、という言葉もついてたっけ。以前道徳が吸っていたタバコと、愛用していたライターらしい。弟子をとってからはタバコを止めたらしいが、今となってはこの銀製ライターと莫邪の宝剣Ⅱだけが師匠の形見となってしまった。知らず涙があふれそうになる。それを拳でぬぐって、泣き止んだらしい天祥のほうを見た。
「天祥は、オヤジが大好きだったんだなぁ･･････？」
こくん、と小さい頭を縦に振る天祥を碧の瞳で見つめ、天化は次の言葉を乗せる。
「オヤジが、憧れだったさ？」
「･･････お父さんだけは、死なないと思ってたのに･･････」
ぽつりとつぶやかれた言葉は、天化も少し思ったことだった。「オヤジだけは･･･頑強なオヤジだけは死なない」。そう思って安心していた矢先に、飛虎の魂魄が飛んだ。
「誰が、悪いの？」
「え？」
「誰が悪かったの？なんでお父さんは死んじゃったの!?」
こらえきれなくなった思いをぶちまける天祥の頭をそっとなでてやった天化は返答に困った。
「･････････」
「なんで!?どうしてお父さんは、死んじゃったの!!??天化兄様、答えてよっ!!!」
なおも問いを投げかける天祥に向かって、天化はやっと思いついた言葉をそっと言う。
「仕方ねぇのさ、天祥。これも天命ってもんさ」
「天命って誰が決めたの!?その人はそんなに偉いの!?」
それこそが、天化が一番考えて欲しかったことだ。だからあんなことを天祥に言った。
「･･････誰だと思うさ？」
「え･･････う～ん･･････神･･･様･･･？」
「その『神様』とやらは、人の運命を、人生を狂わせるほど偉ぇのかい？」
天祥は天化の膝から滑り降り、横に座った。涙を浮かべた蒼い瞳が、天化をまっすぐに見る。天化は言葉を続けた。
「天祥は、『仙人』って偉いと思うかい？」
「仙人様･･･？･･･うん、偉いと思う」
「どうして？」
どうして、と問われて天祥は首をかしげる。すぐに天化に向かって言った。
「う～んと･･･人とは違う力を持っているから？」
「その『人とは違う力を持っている仙人』は、人より偉いのかい？」
「･･････わかんないや」
だからな、と天化は天祥の頭に手を置いて語る。
「だから仙人は、人の運命を変えられるほど偉いのかいってことさ」
隣に座った天祥の蒼い瞳を覗き込んで、天化は話し続ける。
「たとえば、宝貝人間」
「なたくにーちゃん？」
自分が知っている人のたとえ話になったからだろうか。天祥は真剣な面持ちで天化の話を聴いている。
雑談。
＊乱世籐馬＊
はじめまして、乱世藤馬と申します。掲示板で小説提供の告知をしたところ、真っ先に手を挙げてくださったのがありみさんでした。
乱世のつたない文章ですが、もらっていただけて光栄です。風の旅人、続きます。どうぞよろしくお願いします。
＊お礼な気持ち＊
ありがとうございましたｖいやはや。私は遅筆なので非常に助かりました♪しかも、不足していた長編ですし（笑）しかも、天化と
天祥のお話しはまだ無いので光栄ですヽ(￣▽￣)ノ続き楽しみです☆
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