【海上の愛】 海の上の離れ小島。 小さな船で、この島まで来たのは、古の故人の無言の意思でだった・・・。 カレは、物から昔の記憶を垣間見れるもの。 名前は、ロデオ。 しかし、その名を呼ぶものは遠い日のセピア色の記憶の中の恋人と、過去の現実(リアル)で会える『彼女』だけだった。 小高い丘の上、海を見渡せる位置にカレを待っている建物があった。 崖の上に聳え立っている小さなお城。 その建物が、彼を呼んでいるのだった。 カレは、その運命とも言えることに逆らおうとはしなかった。 これも、星の導きと言うものだった。運命は、星の導きの元で・・・。 彼女がよく言っていた言葉だった・・・。 遠めに見て小さいと思っていたお城は、近づいてみるとそれほど小さくはなかった。 慎重に、お城の両開きのドアに手をかけると、自動ドアのように内側からドアが開いた。 誰かが、内側からドアを開けてくれたのだ。 遠い昔の誰かが・・・。 無言で中に入ると、1歩1歩確実にその部屋へと歩いていく・・・。 どこの部屋なのかは、誰かの意思によって分かっていた。 ただ、その先にあるものは分からなかった・・・。 2階の、丁度崖の上。海を見渡せる部屋。 その部屋は、ドアが壊れていて四角くフレームが残っているだけだった。 カレは、そっと壁に手をついた・・・。 波の音が激しい・・・。 窓は全開に開いていて、カーテンが大きな音を立てて揺れている・・・。 潮の香りが、怒っているかのように強い。 夜の海。月光が怪しく照らす。 部屋の中央には、ベッドがあった。 誰かが寝ている。 その横には、長いブロンドの髪の女の人・・・いや、少女と言うくらいに若い女の子が立っていた。 手には、光るものを持っている・・・。 それがナイフだと分かるのに、瞬間もいらなかった。 『ライル・・・。どうか許して』 瞳から、1雫、涙が流れ落ちた。 少女は、大きく上に手を上げると、思いっきり振りおろした。 しかし、その手はベッドに寝ている、ライルのすぐ上で止まった。 彼女は、震える手を無理に自分の体のほうに持っていくと、ナイフを床に落とした・・・。 そして、ベッドの横に崩れた。 『ライル・・・。私の従兄弟・・・』 少女は、誰に言うでもなく海に向かってポツリポツリと言葉をこぼし始めた。 『本当に好きだった。ライル。貴方も好きだといってくれたわ。貴方には婚約者がいたのに・・・。いいえ。私にもいた。 でも、嫌だったの。ライル。貴方が一番好きだった』 波の音が激しい・・・。 『2人で相談して、結婚するのは親の決めた婚約者。けれども、心は一緒だって誓ったわ。それだけで、十分だった。 誰に祝福されなくても、たった2人。当人同士が祝福しているならば、それでいいと思った。だから、秘密にしようと決めたわ』 風が潮の匂いを運んでくる・・・。 『本当に些細な事だったの・・・。本当に。ばれる事はないと思ったわ。入るお墓は別々でも、心だけは一緒のお墓で・・・。 その、心のお墓まで持って行こうと思ってた。そこで、初めて公に言うの。私とライルは愛し合っていますって・・・。 それが、私の夢だった』 少女の髪が、風になびく・・・。 『でもね、私の婚約者が・・・ずっと疑っていたのね。貴方と2人であった時、見ていたの。彼は言ったわ。彼を殺して来いと。 ライル。もし、殺してこなかったら、貴方が私をたぶらかした事のように言いふらすとまで言われたわ。 私はあの人のお城の中で幽閉されて、ライル、貴方は世間体を落とされる・・・』 少女のすすり泣く声が聞こえる・・・。 『私は、自分が死ぬと言ったわ。でも、それは家族を、家を裏切ると言うこと。私のために、みんなを犠牲に出来ない。 だから、本気で貴方を殺そうと思った・・・。でも、出来ないわ。どうして自分の手で殺められると言うの?』 少女はすっと立つと、窓のそばへと倒れこむようにして近づいた。 『ライル。今分かったの。何に変えても、貴方が一番大事だって・・・。コレが、愛だと言うのなら、 貴方の幸せを願って死んでいく私の姿があっても・・・それが私の愛の形なの。でも神様・・・』 少女は、海に向かって叫ぶように声を張り上げた。 風が声を掻き消し、少女の髪を乱す。 『これも愛だと言うのですか?好きなのに、報われない。一緒に生きれもしない。コレが、貴方が私たちに与えた愛なのですか? 好きだと、お互いに気持ちを言うことも出来ない。一緒に時を刻む事も出来ない・・・。それでも、私は彼を愛するより他、 生きる術がありません・・・。一緒に生きぬいて愛し合う術は・・・教えてくれませんか・・・?』 少女は、乱れた呼吸を整えると、そっと寝ている彼の元へと擦り寄った。 『ライル。もう一度、名前を・・・最後に名前を呼んで欲しかった・・・』 少女はそういい残すと、窓の外へと消えた・・・。 月明かりが、静かな夜の海を照らしていた・・・。 カレは、手を離した。 頬に流れる涙を、手の甲でぬぐうと、そっとお城を離れる事にした。 少女の名前は『マーリーン』 お城の中庭にあった、古びたお墓の名前を読み取ったのだ。 その隣は『ライル』・・・。 ロデオはゆっくりと、お城に背を向けると歩き出した。 ふっと、視界の隅・・・海の中央辺りに人影がうつったような気がした。人魚のような人影が・・・。 【余談】 ロデオシリーズ第3作目です☆ ・・・シリーズ化をした覚えはないのですが、何故か・・・。 今回は、人魚姫をモチーフにしてみました。 花月は、人魚姫の話は小さい頃から好きでした。でも、一方であまり好きじゃありませんでした。報われない悲しい恋の話。 そこが、いつも切なくなったんです。なので、今回は最後の最後でハッピー・・・(?)エンドにしてみました。 えっと、お墓が並んでるあたりが・・・(苦) 本当に、毎度毎度長い文章をすみません・・・!! でも、これからもよろしくお願いしますね・・・? ・・・でも、本当に文才がないなぁ・・・(涙) ***お礼な気持ち*** 花月さま、素敵な小説をありがとうございます♪ あいかわらず、とてもシンとしたせつなさがとても良かったですv こういうお話は大好きなので嬉しいですvv …てか、なかなかアップできなくてすみませんでしたー(泣) み、見捨てないでくださいーιι 今後もよろしくお願いしますねv |
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