思い出の灯火






何度となく、それを思い開いては閉じたのだろう?
何度となく、それを繰り返したのだろう・・・?

もう2度と戻らない ただのひと時の夢
もう2度と同じ温もりは得られない 一瞬だけの炎
だけれど、僕にとってそれは現実(リアル)以外のなにものでもない・・・。











そこは、タダの薄汚れた館だった。もう何十年も前に館主を失った、孤独な館だった。
遠目にはそう見えたかもしれない。壊れた木の門、蔦のはびこった外壁、硝子の割れた窓、伸びっぱなしの庭の草花。
だけど、カレにとってはそれだけではなかった。
ふっと壊れた木の門に手を触れた瞬間、そこは別世界になる。
薄汚れた館が、一瞬にして手入れの行き届いた館になるのだ・・・。
綺麗にペンキの塗ってある木の門を押し開け、中に入りそっと木の門から手を離した。とたんに、目の前の夢は崩れ去り無常なまでの現実(リアル)が襲い掛かる。

カレの名前はロデオ。
触れたものから、過去の記憶を垣間見れるもの。

カレはゆっくりと門をぬけて石畳の道を歩くとそっと壊れかけた玄関の取っ手に手を差し伸べた・・・。
ガチャリ
鍵なんてしなくて良い周りは森だ。この館以外に近くに家などない。自然の中に隔離された館だ。

「あら〜。ロデオ君、いらっしゃい」
ロデオに気が付き、すぐさま笑顔を向けてくれる金髪の女性。
綺麗に整った顔だが、小さなしわが年齢を感じさせる。
『おばさん、おじゃまします』
カレも心の中で復唱する。

普通カレは触ったものの視線で物語・・・過去の出来事を見ることが出来る。でも、今回の館だけは別だった。カレも物語の登場人物の一人なのだから・・・。この館だけは、なにに触ってもロデオの視線でしか物語は進行しない。

「ロデオ!いらっしゃい!待ってたのよ〜!」
ふわふわと軽そうなブロンドの髪の毛の女の子が走り寄る。
瞳はスカイブルーだ。
少女はロデオの腕につかまった。甘い香りが漂う。
『シシリー。あんまり走るなよ』

そう。彼女の名はシシリー。体が少々弱いのだが、普段はそんな事感じさせないほど元気な女の子だ。カレの・・・いや、ロデオの婚約者だ。

シシリーはロデオの腕を引っ張ると、リビングを抜け小さなテラスへと誘い込んだ。
「ねぇ、ロデオ、星はお好き?」
『星・・・?好きだけど?』
「私ね、夜空を眺めるのが大好きなの。星が大好きなの」
シシリーは壁にある小さな丸いスイッチを押した。
天井が、小さな機械音を立てて横にスライドする。
シシリーが上を向き、ロデオもつられて上を向いた。
そこには満開の星空があった。
『綺麗だ・・・』
「ね?素敵でしょう?・・・でも、不思議よね。何光年も離れた星から何年も前に出された光が今ココに届いて、ソレを私たちが見てる。神秘的ね」
『そうだな・・・』
シシリーの瞳にはうっすらと星の輝きが写っていた。
「ところでロデオ、今日はなにをしに家にいらっしゃったの?」
クルリと向きかえったシシリーの瞳は悪戯っ子のような輝きを発していた。
シシリーはロデオがなにをしに来たのか知っていた。それなのに、聞くのだ・・・。
ロデオはそっとズボンのポケットから小さな四角い箱を取り出すとシシリーに手渡した。
「これはなに?ロデオ?」
不敵な笑みが口元を覆う。
『シシリー・・・僕と・・・』
そこまで言った時だった。何か重たいものが倒れるような音と、おばさんの悲鳴が重なったのだ。
そのすぐ後には銃声が館に木霊した。
「お母さん!?」
シシリーが飛び出す。止めようと手を伸ばしかけた刹那、再び銃声が轟き目の前のシシリーが横に飛ばされる映像がコマ送りに映し出される。
『シシリー!!』

カレはそこで小さな息を一つ吐いた。
映像はコレでおしまいだった。ココから先は、カレ・・・ロデオが気を失っていたので記憶がないのだ。記録はココで途絶えている。

あの日、なにがあったのかは詳細に思い出すことは出来ない。
ココで見る記憶の記録が全てだった。
目が覚めたとき、館は静まっていた。シシリーの体も、血痕ですらもここからなくなっていた。ただ、何物かに荒らされたらしき痕跡が残っているだけだった。
その時からだった、カレにこんな特殊な力が備わったのは。
一瞬だけ見えた銃を構えた男。見間違えでなければ軍の関係者らしかった。何も分からないまま、カレは過去と現在を行ったり来たりしているのだ・・・。

何も分からない・・・何も分かってはいけない。

ただ分かる事は、彼女と楽しい時を過ごしたこの館も、過去として見えるのは最後の映像。一番悲しい映像だけだった。

悲しい映像ならば、ただのひと時の夢でしかないのなら、見なければいい。この場所に訪れなければいい。過去を見れることは出来ても、変える事は出来ない。未来が変わってしまうからだ・・・。シシリーは戻ってはこない。悲しいだけのひと時の夢、見れば再び後悔と悲しみの渦に落とされると分かっている。でも、それでも見たいと思うのは、ただの映像であっても君に会いたいからなのかもしれない・・・。

再び巡り会う事はないと分かっていても、例え嘘のぬくもりでも、過去を見ているときはカレの現実(リアル)なのだから・・・。

カレはふと、この日の数日前に交わしたシシリーとの会話を思い出した。

『ねぇロデオ。もし、もしもよ?私が死んだらどうする?』
『シシリーは死なないよ』
『もしもの話だってば!』
『・・・忘れて、違う人を見つける』
『も〜!ロデオったら!ふんだ!もし、ロデオが先に死んだら私もそーしてやるっ!』
『はは・・・嘘だって。毎日悲しみにくれるよ。シシリー以外のことは考えられなくなるよ』
『・・・ロデオらしいね。でもね、もしも私が先に死んだら、私の事なんかさっさと忘れちゃって?』
『なんで?』
『愛せないのに愛されてるのって・・・フェアじゃないでしょ?』
『そうかなぁ・・・?』
『そうよ!だから、ね?忘れて、自分自身のために生きて?』
『じゃぁ、シシリーももし僕が先に死んだらそうしてくれよ?』
『・・・いいわ。じゃぁ、約束ね』
絡み合った小指から、暖かな体温が伝わる。

約束は、遠い忘却の彼方。最後の約束は果たせないまま、もう幾年の月日が流れたのか・・・それですらも遠い忘却の彼方・・・。

愛しいから、忘れるなんて出来ないばかりか過去の君に毎年会いに行く僕。
夢でも会いたいと思うのは、間違った事ですか・・・?









END









【余談】
こんな長いのをいきなり送りつけてしまってスミマセン!!しかも、前作の続きみたいな感じになっちゃってますよねぇ。全然文才ないのでなにを言ってるのか?と思う箇所があるかも知れません・・・が、そこは温かな目で見守ってやってください!

でも、もしロデオと同じ状況なら花月はどうしてるんだろうって思いました・・・。やっぱり、会いに行っちゃうかも知れませんねぇ。夢でも、嘘でも良いから会いたいと思ってしまうかもしれませんねぇ・・・。
でわ、今回も例のごとく苦情は随時受け付けております!
本当、こんな長文・・・申し訳ありませんっ!(涙)



***お礼な気持ち***
花月さま、素敵な小説をありがとうございます♪
前作の謎が!って感じで喜んでしまいましたv
まさか、こんな意味があったとは…。ドキドキですねv
せつなさがとても良かったですv
今後もよろしくお願いしますねv




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