『月明かり』


月光の光を浴びて、窓辺に座り美しくそして、怪しく微笑んで いたのは実の姉だった。淡いブルーの瞳。月の光と同じ色をし た見事な金髪。肌は大理石のように白く、折れそうなほど細く 儚げな体つきをしていた。
姉は美しかった。絶世の美人と言われるだけのことはあった。
何せあの母の子供なのだから・・・。

 「貴方がお父様とお母様を殺したのでしょう?」

薄紅色の綺麗な形をした唇から紡ぎ出された言葉は、私の耳に 冷たく届いた。

 「そ・・・そんなこと・・・!!」

たじろいで声を上ずらせた私の反応を見て、姉の美しい瞳の色 が怪しく輝いた。すっと目を細くさせる。

 「汚らわしい子ね。実の両親を自らの手で殺してしますなん て、なんて惨めでかわいそうな子」

軽蔑と侮蔑が入り混じったその声には、昨日までのあの親しげ な温かな感情はひとかけらも垣間見れなかった。

 「殺してません!!」

思わず叫んだとたんに、後悔した。興奮すればするほど、自分 が惨めになって行くのが分かったのだ。

 「殺してないですって?何を言うの?だって、貴方の手は真 っ赤よ?それに、貴方からは血の臭いもするわ・・・」

私は思わず、視線を落とした。手は真っ赤に染まり、スカート にもべったりと赤いものが飛んでいた。

 「可哀想な子。私を比べられるのが嫌でお母様とお父様を殺 したのね?いつも私ばかりが可愛がられるから。いつも私ばか りがみんなに受け入れられるから」

月の光がいっそう強く姉を照らし出した。いつもは美しいその 顔には、今は表情というものがなく、彫刻のように怪しい美し さをかもし出しているだけだった。

 「可哀想な子。親から見離されたからといって、親を殺した ばかりに、神からも見離された。可哀想な子。誰からも愛され ずに一人ぼっちで死んでいくのね」

姉はそう言うと、すっと私のほうへと向かってきた。足取りは 軽く、まさに舞っている様な軽快な足取りだった。

 「でもね、私だけは愛してあげられるわ。お母様も、お父様 も、神様も。貴方を愛してあげられなかったのは・・・」

姉はそこまで言うと、私に抱きついた。髪が揺れ、甘い香りが あたりに広がった・・・。

 「貴方は本物の私の妹ではないからよ。貴方はお父様のお兄 様の子供。そうよ。実の親を殺した罪で自らも命を絶ったあの 男の子供なのよ。・・・貴方は決して祝福されて生まれてきた 子供じゃなかったのだもの。神も、両親も、貴方を愛せるはず がないわ」

私は小さく微笑んだ。

 「それに、貴方は妹じゃないわ。私の従弟なんだから・・・ 」

月が雲の陰に隠れたのか、辺りが急に暗くなった。
私・・・いや、僕はそっとその部屋から抜け出した。
ここから先は、見てはいけないもののような感じがしたのだ。
この館の古い記憶は、これからどんな悲惨な事が待ち受けてい るのかは見当もつかなかった。または、もしかしたらハッピー エンドだったのかもしれなかった。しかし、これ以上のものを 見るのは到底無理な話だった。
僕は、物から古い記憶を少しだけ見る事が出来る能力があるだ けの人間だ。過去を変える事は出来ない・・・。
僕は、館をそっと後にした。月明かりに照らされてみるその館 は、美しくも不気味な容貌だった。
僕は、未来を垣間見る事は出来ない。過去を、覗けても変える ことは出来ない。ただ、明日に向かって生きるだけだ。
この先も、信じられないような過去を見たりすることもあるだ ろう。心が暖かくなるような過去もあるだろう。その時代時代 にその人が生きていたと言う証をこの先もずっと見続けていく だろう。だけど、僕は今と言う狭い範囲の中を生きる事しか出 来ない・・・。だからこそ、今と言う時間を大切に生きていく んだと思う・・・。



               END



〜余談〜
絵のお返しにと思って書いてみたのですが、なんじゃこりゃぁ 〜!?と言うような作品になってしまいました。スミマセン。 苦情は随時受け付けております(泣)
とりあえず、今を生きましょう!という事が言いたかったんで す〜。・・・説得力ないなぁ・・・。


***お礼の言葉。***
小説、ありがとうございましたvイラストはキリリクだったから、 そんなお礼なんていらなかったのに、貰えて嬉しかったですv
しかも、こんな素敵な小説!!読んでいてドキドキしました!
また、このような素敵小説を読ませてくださいねv





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