とくべつ。 リリリリリリリリリ… ある日曜日の朝8時、枕元に置いてある目覚ましが大音量で部屋中に鳴り響いた。 「ん、ん〜。」 ぼくは眠い目を擦りながらもう片手を必死に伸ばして目覚ましの置いてある場所を探った。 ガチャッ ようやく手に目覚ましの感触があり、ボタンを押すことに成功。 (ね、眠い…。) ………。 うるさい音を止めたと分かったら、また眠気が襲ってきた。 瞼が開かなくて、起きなきゃとは思いつつ、意識は夢の中へと引きずられていく。 夢うつつの中で、なんでこんなに早くに目覚ましが鳴ったんだろうとぼくはぼーっと考えた。 (いつもだったらもっと遅いんだけどなぁ…。) 「あぁぁっ!!」 ガバッ! 今日が何の日か思い出した瞬間、僕はベッドから飛び起きた。 そうだった。 今日は待ちに待った三連休の2日目。 いつもなら休みなしであるサッカーも大会までまだあるし、一日ぐらい休みにしないと体が持たないということで無い。 つまりは、久しぶりに何もない休みなのだ。 いつもなら、こんな日は昼頃まで熟睡しているのが常だが今日は違う。 なんたって今日は『デート』なのだ。 しかも、相手は、ようやく相思相愛になれた翼さんなのだ。 遅刻なんて真似は絶対にできない。 昨日のうちに選んでおいた服に袖を通しながらチラッと壁に掛けてある時計を見ると8時15分を指している 「よし。十分間に合う。」 一応、几帳面な性格なので、待ち合わせの1時間前には起きるように目覚ましをセットして置いたのが良かった。 着替え終えたので、鏡で変ではないかチェックをしてみる。 「こんなもんかな?」 (いつもなら気にしないんだけどな…。) 翼さんはとっても可愛くて(男の人に『可愛い』て言葉は使うのはおかしいと思うけど、ぼくはピッタリだと思う。)、だから、みんなの目を惹く。 そんな人の隣に居る自分が変な格好をしていると翼さんに恥をかかせてしまうかもしれない。 「だから気が抜けないんだよね。」 じ〜っと鏡の中の自分を見つめる。 鏡に映る、あまり格好いいとは言えない自分の姿を見て、未だに分からない謎が浮かび上がる。 (翼さんは、こんな僕のどこがいいんだろう?) ぼくは一目惚れだった。 綺麗で頭脳明晰でサッカーの技術も凄くて、なにより、そこに宿る強い意志に惹かれた。 そして、翼さんと接しているうちに、ますます好きになった。 でもぼくは、人並みの容姿だし、サッカーもみんなと比べたらまだまだで。 こんな自分を翼さんが「好きだよ。」って言ってくれたのは自分にとっては奇跡に近い。 そう、一生に一度、有るか無いかの奇跡。 その瞬間をぼ〜っと思い出して、うっすらと顔が赤くなって火照ってきた。 少し、時間がたって、やっと、ハッ!と我に返って慌てて時計を見た。 時計の針は8時半を指している。 最低でも15分は待ち合わせ場所まで掛かってしまう。 (ということは、あと…。15分?!) 「ヤバイ!まだ朝食食べてないや。」 あわてて台所に行き、トーストを焼き、スクランブルエッグを作って急いで食べた。 食べ物を味わう暇もなく口の中に詰め込む。 (翼さん、もしかして、もう待ち合わせ場所にいたりして…) そう思ったら、早く行かなきゃという気持ちになってしまって、食事もそこそこに切り上げた。 最後に、鏡の中で再度、軽く身だしなみを整えて、ぼくは急いで家を飛び出した。 「はぁ。はぁ。はぁ。」 慌てて家を飛び出てから約15分。 全速力で走ったかいがあり、なんとか約束の時刻よりも前に着くことができた。 何処に居るんだろうかと、辺りをキョロキョロと見回す。 (いた!) 翼さんは待ち合わせ場所である噴水の前にたたずんでいた。 通り過ぎて行く人々の視線が翼さんに集中しているので居るということがすぐに分かる。 (やっぱり、翼さんは綺麗な人なんだなぁ。) 周りの人々の行動で再確認してしまった。 「あれ?」 翼さんはちょっとムスッとした顔をしていて、機嫌が悪いように見える。 (まだ、約束の時間まで時間ある、よね?) 心配になり、慌てて腕時計に目をやる。 8時53分。 まだ約束の時間まで7分はある。 ぼくが約束に遅れたから、という事ではないのろう。 (なにかあったのかな??) とにかく、早く声をかけなきゃと思い、走ってきて少し乱れた髪を直した。 (髪、乱れていないよね?よし。) 確認すると同時に、手を振りながら小走り気味に翼さんに駆け寄った。 「翼さ〜ん!」 ぼくに気づいた翼さんは、さっきまでのムスッとしていた顔を少し緩ませた。 「将。遅いよ!」 「ご、ごめんね。あっ、でも、約束の時間までまだあるけど…。」 「なに?遅れてなかったら俺を待たせてもいいって訳?」 「えっ…。そんなことはないけど。」 「ふ〜ん。なのに、将はそうゆう事言うんだ。」 「えっ…。」 「ふ〜ん。」 翼さんは怒ったのか、ぼくを置いてスタスタと先に歩いていってしまった。 「あ、待って!ごめんね。ごめんなさい!」 慌てて、謝りながら翼さんを追いかけた。 泣きそうな顔をしながら追いかけてくるぼくを見て、翼さんはくるりと振替って笑った。 「ウソだよ。別に、待つ相手が将なら何時間でも待つし。」 「…嬉しい。」 ぼくはちょっと顔を赤くさせながらそう言った。 翼さんはそんなぼくの反応をみて楽しそうに笑った。 「で、将はどうなの?待っててくれる?」 「もちろんだよ!」 即答したぼくの答えを満足そうに翼さんは頷いた。 「あっ、さっきなんだか怒っていたみたいだけど何かあったの?」 目的地に向かう途中、色んな事を話した。 朝の事も気になっていたから聞いてみたら、また不機嫌そうな顔つきになった。 「あっ、言いたくないならいいんだよ?」 「…将を待ってたらナンパされたんだよ。それも男に。確かに、俺はそこらの女と比べでも、美貌は上だろうけど、ムカツク。」 「…で、ど、どうしたの?」 翼さんはピタッと立ち止まってぼくの方を見て言った。 「何言ってんの?怒るよ?断るに決まってるだろ。俺には将がいるんだし。」 『俺には将がいる』その言葉をあまりにも普通に翼さんが使うので、聞いているぼくの方が嬉しさと恥ずかしさで照れてしまう。 「なに笑ってんの?」 なんだか複雑そうな顔をしている。 「俺は将の『恋人』なんだから。」 「うん。ごめんね、翼さん…。」 翼さんはちょっと反省して落ち込んでるぼくを見て、くすっと笑った。 翼さんがぼくの額を人差し指で軽く押した。 「分かってくれればいいんだよ。それより、将。二人きりの時は、俺のことちゃんと名前を呼び捨てで呼べって言ってるだろ。」 「えっ…。あ、ごめん。もう癖みたいになっちゃってて。」 「俺は、将に『翼』って呼んで欲しいんだから言ってるんだよ?」 「う、うん。」 「ほら、言ってみな?」 「つ、翼?」 「もう一回。」 「翼。」 ぼくが『翼』と名前を呼ぶ度に翼さん、いや、翼は嬉しそうに笑う。 そんな様子を見ると、なんだかぼくまで嬉しくなってくる。 翼がぼくに念を押して言った。 「今後、二人きりの時は絶対に『翼』って呼んでよね?」 「うん。」 「絶対だからね!」 何度も「うん。」と頷いて、やっと信用して貰えた。 そんなに何度も言われると信用がないのか不安になってしまう。 「そんなにぼくのこと信じられない?」 思わずそんなことを言ってしまった。 そうしたら、翼が怒った顔をして言った。 「将。俺は、将のことが好きだよ。だから、好きな人、自分にとっての特別な人には自分の名前を呼んで欲しい。この気持ちが分からない?将は『恋人』の俺に『将さん』って呼ばれて嬉しいの?」 「あっ。…ごめん。ごめんね。」 涙が溢れ出てきた。 自分が翼にそんな風に呼ばれたことが無かったから分からなかったのだということが分かる。 『将さん』なんて翼に呼ばれたら嬉しくない。 なんだか、あまり親しくない感じがして悲しい。 (ぼくはバカだ…。翼の気持ちも分からなかったなんて…。) 「ごめん、気づかなくて…。」 「泣くなよ…。俺が泣かせているみたいに見える。」 「あっ。うん。ごめんね…。」 慌てて涙を拭いたけけれど、止まらずに流れ続ける。 「あれっ…。おかしいなぁ…。ごめん。涙が止まらないや。」 目をゴシゴシと擦る。 「分かってくれればいいよ。だから、もう泣くなよ。こっちまで悲しくなるだろ?」 「うん。」 「翼って呼べよ?」 「うん。」 翼は僕を慰めるように抱きしめながら僕にもう一度言った。 ぼくは、今度は真剣に何度も何度も頷いた。 大好きな、特別な人に名前を呼ばれるってことがどんなに重要なのか分かったから。 そして、今回のことでどれだけ、翼がぼくのことを想ってくれてたのが分かったから…。 だから、ぼくは翼の耳元で囁いた。 「ぼくも翼のことが大好きだよ。」 END ***あとがき。*** 友達の本にゲストで出させて貰った時に書いた小説です。 は、恥ずかしい〜(〃_ 〃)なんか、どれだけ砂を吐かせれば気が済むんだよ?と殴り込みに来られそうな甘さですなιι 書いてる時はそーでもないんだけど、書いた後で死ぬほど後悔してますよιι なんたって、一行読むだけで笑えてきますから(死 にしても、一番間違ってるのが、半分ぐらい翼が出てこないという暴挙(笑 「なんでやねん!」と書きつつ自分でもツッコミ!でも、そのまま(オイ 次回、書くことがあったらリベンジ!! |
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