天使の降った夏
君が降りたあの夏
君の笑顔が僕の幸せだった
僕は君とあの夏を永遠に忘れない
どんなに君が変わってしまっていても
きっと君を見つけだすよ
早く君に逢いたい…
一番暑い日のことでした。
神様が天使のルカを呼びました。
「地上に行って天野翔と言う男の子の最後を見届けなさい。」
と、神様は言いました。
天使のお仕事は綺麗な心の持ち主の最後を見届けて、天に連れてくることなのです。
まだ十六歳になったばかりのルカにとってそれは初めての大仕事です。
ルカは初めての地上にドキドキとしながら地上に降りていきます。
雲をいくつか通りすぎるとやっと地上につきました。
お姉様たちに教えられたように、人間たちを驚かせないように羽を消し服も換えました。
これから天野翔を探そうと思ったそのとき、ある声が聞こえました。
「大丈夫か、お前。」
何だろうと思って見てみると、ある少年が一匹の子犬が車に轢かれそうになったのを助けてあげたところでした。
ルカはその少年の笑顔にドキッとしました。
その少年のやさしい笑顔がルカの頭からなかなか離れませんでした。
ルカが天野翔の家を探し当てた時その家から出てきたのは、なんとあの少年でした。
ルカは驚きを隠せずにはいられませんでした。
おろおろしていた所に、一台の車が走ってきました。
ルカは車に気づいていません。
それに気づいた翔は、
「危ない!」
と叫びながらルカを突き飛ばして助け、気絶したルカを家に運び手当をしてくれました。
目を覚ましたルカは翔に送るから家は何処かと聞かれ、困ってしまい帰る場所がないと話しました。
翔はそれなら、居たいだけここに居ればいいと言ってくれ、泊めてもらうことにしました。
楽しそうにルカは笑っていたけれど、あと五日、あと四日と最後の日に近づくにつれ悲しい表情を浮かべるのでした。
ルカは翔の笑顔や悲しい表情を浮かべるルカを気遣うのを見るたびに心が痛みます。
もうすぐ死んでしまうと思うと目には涙が浮かんできます。
来なければいいと思っていた日がとうとうやって来ました。
「遊びに行こう。」
日がたつにつれ元気がなくなっていくルカを心配して翔が遊びに行こうと誘いますがルカは泣いているばかりです。
翔はルカを気分転換にむりやり連れて公園に行こうと外に出ました。
その時です。一台の車が猛スピードで走ってきたのです。
危ないと思った翔は自分よりルカを助けようと突き飛ばしました。
車は急ブレーキをかけましたが間に合いませんでした。
翔は車に轢かれてしまったのです。
あわててルカが駆け寄り翔を抱きかかえ、話しかけます。
「翔、大丈夫?ねえ、何か話してよ!」
翔はなにも話ません。もうこの世にはいないのですから。
「翔…どうして…どうして死んでしまったの…私は天使だから死ぬことはないのに…。…どうして私にはあなたの運命を変える力ないの?!」
ルカの涙が頬からこぼれ落ち、ルカの首に掛けていた石にこぼれ落ちました。
その時です。急にその石が光り輝きだしました。
この石は天使の命の源。一点の曇りがなく美しいのはルカの心が清らかで美しい証拠でした。
ルカは気づきました。まだ若い天使のルカにはあまり力はありませんがこの石の力を使えばルカにも強い力がつかえるのです。
ただしルカの命と引き換えに…
「この石の力を使えば翔を生き返せるかもしれない…でも、神様の命令に背くことに…それに、私の…でも…私は翔を生き返したい!」
ルカの強い決意と共に光りがますます強くなりました。
ルカは石をはずし、翔の手に握らせ、叫びました。
「石よ、その力をもって彼の者を生き返らせたまえ。」
白い光りの洪水がルカと翔の体を包みました。
翔の傷が癒され、頬に赤みが差していくと同時にルカの体はだんだんと薄れていきます。
けれど、ルカには全然怖くありませんでした。なぜなら大好きな翔を救えたからです。
「さようなら。そして、ありがとう。」
ルカはそっと翔にキスをして消えてしまいました。
翔は目を覚ましました。車に轢かれて死んだと思っていたのに不思議と何処もけがをしていません。
手に何かがある感触がして見てみるとそれはルカのネックレスでした。
ルカは大丈夫だったのだろうかと思って見回してみましたがルカの姿が何処にも見あたりません。
心配で毎日いろいろな所を翔は探しました。けれども、ルカは見つかりませんでした。
そんなルカを必死に探す翔を心配して神様が、ルカは天使で自分を助けてくれたせいでいなくなってしまったことを夢で教えてくれました。
けれど翔は、ルカが見つからないことがわかっていても諦めた訳ではありません。
なぜなら、他にとても良いことを神様が三つ教えてくれたのです。
それは世界中の人間から清らかな心が消えない限り天使は生まれ変わると言うこと、本当は神様の命令に逆らったルカは生まれ変われないのだけれど今回は特別に許してくれたこと、そして三つ目は、ルカを人間として生まれ変わらせてくれることでした。
翔はこれからも生まれ変わったルカを探し続けます。
だからきっといつかまた、あの時のようなとても暑い暑い夏の日に人間になったルカと翔はまた出会うことでしょう。
今度は幸せに暮らせるといいですね。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||