「お主は愚か者じゃよ…」 君は少し困ったような、悲しみを含んだ微笑みを私に見せた。 「全ては君のため…」 私は君に向かって満足気に微笑んだ…。 全ては… どうして君はそんなに無理ばかりするのだろう。見ている私の方が心配でおかしくなってしまいそうだ。 人間界での戦いで君は自分の腕を失ってしまった。 細くて、白く、美しい腕だったのに…。 大好きだったのに、君の腕はもう無い。 どうして私は君と共に居られないのだろう。近くに居たのなら君にそんなことをさせなかったのに…。 許せない… 出来ることなら私のこの手で八つ裂きにしてやりたかった。でも、もう敵はいない…。 私はもう居なくなってしまった人物を恨むことしかできないんだね。 相手を怒っていいのに、負傷の復讐をすればいいのに、 何故、君はそれをしないのだろう…。 君はただ、事実として受け止める。 例え、君は腕を失おうとも、その手が血で染まろうとも厭わないんだろうね。 そんな君だからこそ私は好きになったのだけれど、心配でたまらない。 本当は何もかも捨ててしまって、ただ君の側にいたいのだけれど。 でも、それは君を困らせることになるから…。 だから、私は仙界で君の為に出来る限りのことをしよう。 でも、あまり心配をさせないで欲しい。その内、私の心臓が持たなくなってしまうよ…。 まだ私は君の側にいたいのだから。 ナタクを作った本当の理由を告げたら君は怒るだろうね。でも、私は作らずにはいられなかったんだ。 君が本当は強いのだという事は知っていたけれど、 それでも、君が傷つくのを見たくなかったから、そして、少しでも君の負担を減らしたかったからなんだ。 私自信では君の足手まといにしかならないほど弱いから。 ナタクは私の代わりなんだよ。 宝具だってそう、いつか君の役にたつかもしれないと思ったから勉強したんだ…。 君が喜ぶ姿を見たかったから。 君の笑顔が見られるのならば、私は私の人生さえも君に捧げよう。例え君に恨まれようとも構わないから。 君のためにナタクという戦力を作り 君のために失った腕の変わりを作り 君のために… 私の人生は全て君のためにある。 全てが終わる少し前に私は真実を告げた。 本当は告げるつもりはなかったのだけれど、君は目を離したら消えてしまいそうだったから。 「お主は愚か者じゃ…」 君はそう言ったね。 決して真実は君を私の元へ止める楔とはならなかったけれど、 この想いは叶わなかったけれど、君は私に一度だけ微笑んでくれた。 誰でもない、私だけのために…。 その微笑み一つで全ての努力が報われたような気がした。 今はもう、君は何処に居るのかさえも分からない…。 でも、いつかまた会えることを祈っている。 私は君のために生きているから… そう、これは、もう一度君の微笑みを見たい身勝手な私の我が侭…。 |
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