全ての自らに課せられた使命を果した時、
わしは全ての前から消え去ろう。
それが皆の為になるのだから….




Keep one's promise




「綺麗だね…。」


伏羲、いや太公望は普賢に逢いに神界を訪れていた。
普賢の急に走り出した方を見やると桜の木が一本、ぽつんと立っている。
まだ若いのか、決して大木とは言えないがだが、美しい花を満開に咲かせていた。
ひらひらと舞い落ちる花びらがシャワーのように降り注ぎ、幻想的な世界を作り出している。
普賢は嬉しそうに目を細めながらその光景を眺めていた。


「ねぇ、約束しよう…?また、この場所で、この木の下で逢おうよ?」


くるっと急にこちらを向いて、わしの顔をじっと見つめて言った。
だが、太公望はその言葉に返事をすることが出来ず、目を逸らすことしか出来なかった。
なぜなら、その約束を守れる自信がなかったから…。
守れない約束などしたくない。

でも、普賢はそんなわしの迷いに気づいていたのだろう…。


「何年、何十年後でも構わないよ。再び、望ちゃんに逢えるなら…。僕はいつまでも待ってるから。」


その言葉にハッとし、見上げると普賢の笑顔が見えた。
大好きな、美しい笑顔…。
妖しくも美しい、夜の闇と月の光を受け、淡く光った桜のほのかな桃色がとても似合う。
青空の下で見る美しさとは別の美しさを見せていた。


「…わしにはやく、…んっ、ふっ」


約束できない、そう言葉を紡ごうとしたつもりだった。
本当は、出来ることなら『約束しよう。』と言いたかったけれど。
けれど、その言葉を紡ごうとした瞬間、普賢の唇が太公望の言葉を遮った。
今まで交わしたキスと比べれば、軽く触れただけのようなキスだったが、いままでのどんなキスよりも普賢の心に触れたような気がした。


「信じてる。信じてるから。望ちゃんはいつか、きっと来てくれるって。僕は望ちゃんに逢えるのをずっと待ってるからね…。」


その時、普賢の頬を涙が伝った。
そんな泣いている普賢を見て、不謹慎にも、綺麗だと思った。
そして、愛おしいとも…。
大好きで、でも、自分にはしなければいけないことがあったから。
どうしても果さなければならない使命が自分にはあったから。
だから、普賢の元を離れた。
危険な目に遭わせたくなかったから。
でも、それも無駄な行為だったが…。

でも、それでも、当分ここを訪れることはないという気持ちは変わらなかった。
もう、心に決めたことだから…。
本当は二度と来るつもりはなかったけれど、でも、普賢が懐かしくなった頃に来るのもいいかもしれないと思った。


「いつか、いつかまた、ここで逢おう…。」


そう、今日みたいに満開の桜が散りゆく中で…。
きっと、何年、何十年たってもわしには普賢だって分かる。
昔のようにお茶でも飲みながら、飲茶でも食べて、昔の話に興じたりして…。
きっと楽しいに違いない。


「いってらっしゃい。」


別れ際の普賢のそんな言葉に思わず笑ってしまった。
さようならと言おうと思っていたのに、こんな酷い、何もかも皆に押し付けて姿を眩ますわしに、そんな言葉をくれるのは普賢ぐらいだから。
でも、何故だか分からないが、その言葉が今のわしは似合う気がした。

あぁ、きっと普賢がわしの帰る場所なんだろうか…。

そう思った。
人が一番落ち着ける場所。
それが最後に帰る、行き着く場所だから。


だから、

「いってくるよ…。」


そう、笑顔で別れることにしよう。
また、この場所で君に逢うのが楽しみだ。
今度は、青空の下で。
その時は、この桜も更に見事な大木になってることだろう…






その桜の木は一本なのにまるで何本もの花の華やかさを持っていた。
立派に成長した桜の木の下にあの時の様に普賢は立っていた。
風が吹く度に花びらがひらひらと散っていく。
普賢は太公望の姿を認めると嬉しそうに微笑んだ。
その懐かしい笑顔につられてこちらまで自然の笑みがこぼれる。


「ただいま、普賢…。」

「お帰りなさい、望ちゃん。」






END





***あとがき。***
桜の季節に、あまりにも更新できなくてBBSにかいたSSを「普太」にしました〜☆
というか、もともとこの二人の話のネタだったんだけどね。
でも、BBSに載せれないな〜と思って、「君」=「普賢」と「僕」=「太公望」で書いてみたの。
なんども「君」を「彼女」って書きそうになったけど、意識して「君」にしたのだ。
だって、こうすれば、見ようによっては「ボーイズラブ」だし(笑)
何年たっても、忘れない。そして、帰る場所って素敵ですね。
故郷ってそんなものだと思う。
つまり、望ちゃんにとってはふーちゃんが故郷なんだなーって。
にしても、ありみ的には夜桜が似合うのは望ちゃんなのに…(爆)
でも、話的にふーちゃんになっちゃったのだι
ゾクッとするようなくらい妖艶(笑)な望ちゃんが書きたかったのになぁ〜。はう。そんな望ちゃんって素敵だわvv(萌)
来年、リベンジ?





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