「・・・何ニヤニヤしてんだってば、いの」
「え?」


突然のナルトの鋭い指摘に思わずいのの声はいつもよりワントーン高くででしまった









winter and smaile













「な、何の事よ?」


しまったと思いつつも、必死でフォローしてみるが遅く、ナルトはそんないのの顔を無言で指差している
一応、背後を確かめてみるが、自分達以外には誰もいなかった・・・
自分達以外に他人に出会う事のない場所だからこそ、こうやって話せているのだから当然だった

つい、考え事が表情に出てしまったらしい
気が緩みすぎたようだ


「もしかして、この寒気、いののせいじゃないだろうな?」


冗談でなく本当に寒気がするのか、ナルトはブルッと軽く身震いをした
今日の格好は下忍の格好なので、いのに比べたらもこもこで暖かいはずなのだが・・・

知らなかったが、もしかしたら寒がりなのだろうか?
まぁ、自分にとってそれは好都合だが
にしても・・・


「ナールートー!!ちょっと失礼よ、乙女に向かってその台詞は!!」
「いのが原因てのが?」
「違う!ニヤニヤってのよ!!」


これだけは聞き捨てならないと怒る
せめて、やけに笑顔だけどどうしたんだ?という感じに聞いてほしい
好きな人にニヤニヤとまるで変態さんのような表現をされるのはとてつもなく嫌な事なのだ


「怒る場所はそこなんだ…」
「何言ってるのよ。一番重要じゃないの」
「はいはい。ごめんなさいってばよ」
「気持ちが籠もってなーい!!」


むぅ、と言った感じに頬を膨らませていのは非難するが、ナルトははいはい、と言った感じに軽くあしらった
本性を表すとこれだ
普段とのあまりの違い、ナルトの演技力にいのは思わず関心してしまった


「で、つまりは、原因ってのはあってる、っていうわけ?」
「うぐっ…」
「いの、表情に出すぎ。そんなんじゃ、いつまでたっても追いつけないぜ?」
「…それは嫌。ぜーったいに追いついてやるんだからっ!!」
「ま、頑張って」


言葉とは裏腹に、ナルトは一瞬、ほんの一瞬だけれども優しく微笑んだ
きっと、自分がそんな表情をしてるという事に彼自身知らないんじゃないかなといのは思う
自分や、シカマルと一緒にいる時、時々、本当に時々だけれどもナルトは綺麗に笑うのだ
女の私が見惚れてしまうような、綺麗な微笑み
あんな風に笑えるようになったのは最近だとシカマルから聞いた
だから、嬉しくて、思わずいのの頬も緩んだ


「で、何を考えてたわけ?」
「えーっと…」
「ん?何?」


今度は先ほどとは違った意味でにっこりと綺麗な笑顔を湛え、顔を近づけてきたナルトにいのの顔は青から赤、赤から青へと大忙しだ
このナルトの笑顔の脅迫には滅法弱いいのとしては、反則だと心の中で唸った
…実は、いのの取るコレと似たような戦法にナルトは弱いのでお互い様ではあるのだが、残念な事にいのは気づいていない


「あー、ほら、ね、最近寒くなってきたじゃない?」
「うん?冬だしな」
「だから、厚着しても誰も気に止めないでしょ?帽子とマフラーとか着込めば気づかれないかな、って…」
「・・・・・」
「ほら、ナルト嫌がるじゃない、バレるの。でも、その格好なら変化しなくても一緒に歩けるじゃない…?」


最後の方は声が段々小さくなってしまった
目の前のナルトが無表情だからだ
機嫌を悪くさせてしまったのだろうか?

でも、いつも一緒にいたかったのだ
寒いね、って言いながら手を繋いで
笑いあって
そんな風に過ごしたいと願うのはいけない事なのだろうか?


「あの、その…、ごめん…」


どうしよう、とおろおろとするいのの姿を見てふぅとナルトは溜息をついた


「別に、謝ることじゃないし。俺の事を思ってだろ?」
「でも…」
「俺、いつもみたいな元気ないのの方がいいな。いのは笑ってる方が美人だし」
「…え?ナルト」


ちょっとビックリして顔を上げたが既に彼は目の前から少し遠くの所を歩いている
流石、現役暗部と言うべきか

まさか、ナルトから聞けるとは思ってもみなかった言葉に、嬉しさを通り越して早く打つ鼓動に胸が苦しかった
一番、言われて嬉しい人からの言葉
そう思ってくれた事に喜びを感じる
胸を押さえながら、前を行く彼を追いかけた


「ほら」
「?」


追いつくと目の前に差し出されたのはナルトの手
なんだろうと思っていると、手を取られ、ぎゅっと握られたかと思うと、そのまま歩き始めた
自分も自然と引っ張られて一緒に歩く


「ナ、ナルト?」
「…別に、人さえいなきゃ、こうやって一緒に歩けるだろ?厚着なんてしなくったってさ」
「うん」
「だから、あまり落ち込むなよ?俺、人の慰め方なんて知らねーから困る」
「うん、うん…」


なんで分かるんだろう
自分がこうして手を繋ぎたかったんだって
一緒にこうやって歩きたかったんだって

ちょっぴり泣きそうに笑う自分を、ナルトは困ったなぁというように笑った



離したくない、とぎゅっと握り返す自分
仕方ないなぁ、と呆れながらもそのまま握らせてくれる彼

ぴゅーと吹き抜けて行く北風に二人して身を縮めた

でも、繋いだ手と心は暖かい









「ほら、冬に手を繋ぐって、一緒にいれるっていいでしょ?」



そこには、いつもみたいに笑う彼女の姿があった








fin









***あとがき。***
こんにちは、いのナルです。 強気美人でおせおせーな感じのいのちゃんが好きです。それに押され気味なナルトも大好きです!(笑)うーん、押しに弱い主人公ってちょっと可愛いですv
にしても、やはり冬は手を繋ぐのが可愛らしくていいですねv特に小さい子供がやると可愛さUPだと☆
WEB拍手公開用だったため、普段より短いですιごめんなさい。

少しでも皆様のお心に留まりましたら幸い…

04.12.19「月華の庭」みなみ朱木





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