その子供は月夜にとてもよく映えた

きらきらと月の光を浴びて微笑む

金色の小鳥













月夜に巣立つ小鳥















金色の子供は微笑んだ

月の下の元で

それは壮絶なる美

子供の歳はまだ13歳にも満たないだろうに

この匂い立つばかりの艶美なる美しさ

その手は血に染まりながらも

さらにそれが子供の美しさを引き立てている

誰しもが一瞬、恐れを忘れて魅入るほど

思わず金色の子供の隣に立つ大人はその姿に見惚れた






「なに笑っていやがるんだ、アスマ」

「いや、美人だなと思ってな」

「…一遍死ぬか?」






無表情で鋼糸をみせるその子供

そして

子供より2周りも大きな大人が1人

立派な体躯と顎の髭がその大人を実際の歳より幾分か上に見せている

黒と金の色を覗けばまるでその姿は親子のようだ

大人は両手を挙げて降参の手ぶりをする






「相変わらずだな、ナルト…」

「蒼輝」






直ぐに否定されて大人は苦笑した

それでも、可愛くなったものだと大人は1人思う

この金色の子供が話してくれるようになったのだから






昔の金色の子供を彼は知っていた

彼の人の大切な忘れ形見

金色の髪が美しく

日の下でその髪はきらりと光る

空の青を映したかのように澄んだ蒼玉の瞳

そして

とても可愛く笑う子だった

誰もが彼に微笑みかけてしまうぐらいに…





でも、

長き任務を終え、再びこの地を踏み、子供を見かけた時

金色の子供はいつのまにか笑わなくなっていて

無表情で

その感情を映さない青い瞳は氷のよう

それがとても悲しくて

切なくて

そして、なによりも自分の不甲斐なさを悔やんだ

何も出来なかった自分

何も気付かなかった自分を

そして、また、彼を救えぬままに次の長期任務へと飛ばされる自分もだ





そして月日が立ち、暗部になった金色の子供と出会った

初めて交わした言葉は実に可愛げのないもので

さらに周りを拒絶して

そして全てを諦めていた

聞いた噂によれば、彼が懐いていた女性が殺されたのが原因だろう


"誰の愛もいらない"

"誰も信じれない"


それはとても悲しい孤独

冷たくて

温もりを感じないモノ


でも、金色の子供にとってはそれが唯一の取るべき方法で

期待して傷つくぐらいなら

誰かを受け入れて傷つくぐらいなら

もう、これ以上、人を信じたくない


そして感情を捨てて…



絶対的な強さを身に付けた子供は誰も必要としない

全てを1人で終わらせて

自分を

守ってあげたいのに

何もできない自分

孤独を癒す事も出来なくて

ただ、見守るだけ


ソレジャ カレヲ スクエナイ






でも、いつからだろう

誰かが金色の子供の心の扉を開いた

硬かった殻はもう、ない

今や残るはただの子供の悪戯

いや、照れ隠しで

その変化が嬉しくて

その誰かに感謝した


"誰か"


でも、

悔しい事に、それが自分ではないことは解っていた






「おい、アスマ。ぼーっとするなよ、任務中に」

「ん?わりぃ」

「熱でもあるのか?変な顔してるぞ」

「そうか?」






大人は心配そうに自分の顔を覗きこむ子供の金色の髪をわしわしと乱暴に撫でた

そうすれば、子供にこの表情を見られなくて済む

子供は突然の大人のその行動にビックリしたようだったが、なんだかくすぐったそうに笑った

その笑顔に心が少し穏やかになる

今、この笑顔が戻ってきてくれたことの方が重要だと






「子供扱いするなって言ってるだろうが!」






その事にふっと笑うと怒られた

まだ、素直になりきれない

そんなトコが可愛いと思う






「子供だろうが」

「でも俺、アスマより強いし。アスマ、俺と組み手して勝った事ないぜ」

「…お前が強すぎるんだよ。ったく、俺がこの歳の時はもっと遊びふけてる馬鹿な奴だったぞ…」

「お前が俺の立場だったら、同じ様になってるさ」







大人は悲しげに表情を歪ませた






「悪い…」






しかし、反対に金色の子供は微笑んだ

綺麗に

美しく






「バーカ。そんな表情すんじゃねーよ。俺はこれでもよかったと思うんだぜ?」






月光が静かに金色の子供を照らす

濃紺の空の下、冴え冴えと凛と輝く月光はまさに子供の色






「愛されてる事を、大切にされている事を知ってる

独りの弱さ、独りじゃない強さを知っている

大切な人がいる、それだけで心が暖かくなるんだ」






細められた目

その表情は優しくて






「生きている意味が解らなかった

要らない存在

汚らわしいモノ

そう言われ、そう思い

殴られ、罵られ、そして、殺し

愛する人を奪われ

全てに絶望し

ただ、無意味に生きていて

死ぬ日を待っていた…」






その言葉に大人は自分を許せないというかのように、手を握り締める

でも、子供の声音は酷く優しい






「でも、今は違う

俺が生きているのを喜ぶ人がいるから

見守ってくれている存在を知っているから

幸せなんだ

そんな人達のいる場所を守れる

そんな気持ちを知った

それが、嬉しい

意味のない殺戮が、意味のある戦いになるから

この強さがあって、好かったと心から思えるんだ」

「ナルト…」

「今は蒼輝だって、言ってるだろ?」





困った奴だ、というように子供は大人に微笑んだ

まるで立場が正反対で






「俺はまだ、強くなるよ

好きな人達を守りたいから

あの時の後悔をもう二度としたくないから

もちろん、アスマもな」

「俺も?」

「そう、アスマも。…その視線が優しかったのを知っていた。気付かないと思ってたのか?この俺がさ。甘いね。それで暗部だ、上忍だなんて大丈夫かよ?」

「…俺もまだまだだな」

「だな」






可笑しそうに微笑んで

あぁ

その笑顔が何よりも愛しいと思う

守りたい

そう願う

いつまでも見守ろうと…






「ありがとな。で、気付かなくてごめん」

「…守ってやれなくて、悪かった」

「いいんだ。アスマはずっと俺を嫌わなかった。それだけでも嬉しいんだ」

「強く、なったな」

「孤独は人を弱くする。温もりは…温もりは人を弱くするかもしれないけれど、知らなければない、強さを持ってるから」

「あぁ、そうだな…」






子供はどんどん成長していく

周りの愛を温もりを知って

その中に俺が入っていた事を嬉しく思う

少し、

遠くへ行ってしまったようで寂しいけれど






「大好きだよ」

「俺も好きだってばよ?」






可愛らしく返す子供を大人は再度、頭を撫でる

やめろ、と子供は悲鳴をあげる

楽しそうに

嬉しそうに

それは、大人にとって、初めて見る、子供の子供らしい笑顔

そして

最高の笑顔だ

月光も下で冷然と笑う子供は何よりも美しいと思っていたけれど

でも、この笑顔には叶わない






「2度と、お前が寂しがらねーよーに付きまとってやるよ」

「…料理が上手かったら考えなくもない」

「よーし、その言葉、忘れるなよ?俺の料理は上手くて有名なんだぜ。太らせてやるよ!」

「わっ!おい、辞めろ!!」






金色の子供のその軽すぎる体を腕に抱え、大人は疾走する

月明りの下

きらきらと輝く髪を頬にくすぐったく感じながら











金色の小鳥は巣立った

完全に

自ら作り上げた孤独という殻を破り

この世界に接する戸惑いを抜け

ツバサを広げ

子供によく似合う月夜に









新たな強さを手に入れたから…



















******あとがき。******
こんにちは。お久しぶりのスレナル成長小説。いつの間にかシリーズ化してます(笑)
念願のアスナルですよ!!万歳!!!くまぴよ最高ですっvvv体格差がたまんないですよvv(逝)ふぅ。このシリーズに出せて幸せです。フフフフ(怖)
てか、そろそろタイトルが辛いデス。ニワトリはないしね(笑)次はなんでしょう??まだまだ続きます☆
そろそろ時間軸が原作辺りになる予定。しばしお待ちを。お待ちを。…ι
そう言えば、蒼輝という名前をよっぽど気に入ってしまったのか、ここにも使っちゃった。え、他の話とリンク?!みたいな。えぇ。なんとなくリンクです(オイ)あははー

では、このお話が少しでも皆様に気にいってもらえたなら幸いデス…
04.5.6「月華の庭」みなみ朱木

06.1.13 一部改正しました。








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