咲き乱れる黄色い花
そして、
青々とした緑が眩しく映った







タンポポと晴れと彼の












「…桜、散っちゃったわね」



いのが桜の木とその向こうの青空を眩しそうに見上げながら隣りに立つナルトへと語りかける
その会話は一方的なもので、ナルトは答えることなく前を歩く
つれないなぁといのは内心苦笑するも、それでも、こうして散歩に付き合ってくれるだけましだろうと我慢する
久しぶりに任務がないと喜んでごろごろと転がっているところを引きずってきたのだったが、お陰で先ほどからナルトはむっつりと黙り込んでいる
…機嫌が多少悪いのも仕方がないかもしれない


が、
永遠とこんな空しい一方的な会話にいのが我慢できるはずがなかった(笑)



「ナールートー!!もう、いい加減機嫌治しなさいよっ!!!」



いのはほっぺたを抓りながら、耳元で叫ぶ
その攻撃にさすがにナルトの頭はガンガンとする
…それはナルトに対しても限界の値を振りきらせてしまった(笑)



「〜っ…!お前な、いの!俺は、この5日間!休みなく!ずっと任務で働かされてたんだぞ!?ようやくもぎ取った休みなんだぞ!?」
「それが?」
「それが!?俺の貴重な休みを勝手に潰しやがって、その行為に対しての言葉が、それか!?」
「そうよ。それが何が悪いの?」



だらだら過ごしてると人間ダメになるのよ!日の光を浴びて、自然に触れ合って過ごすのが一番なのよ!!と自信満々に胸を張って言うその姿に流石のナルトも反論する気を失う
…何を言っても通じない、受け入れてもらえない事を今までの経験で身を持って知っているのだ
そもそも、彼女に押しきられる形で、自分の正体をばらされてこんな感じの関係にまで至ってるのだ
もう、こういうものだと諦めるしかないのだろう
…というか、絶対にいのは、先回のようやく取れたと思った休みにシカマルと二人で過ごしていたのを根に持っているのだ
別に二人で示し合わせて会ったわけではないのだが、いのはそんな事知ったことではないと大激怒し、大変だったのだ
思い出すだけで疲れるほどには…

はぁ、と一つ溜息を口から零してごろんと下の芝生へと寝転がった
せめて寝転がらせて身体を休ませてもらえないとやってられない

なんというか、こういう時はいつも、シカマルを尊敬したくなってしまう
なにせ、このいのとだ、長年幼馴染をやってこれたということが凄い
…本人に言わせれば、だからお前ともやっていけるんだ、免疫あるからと言っただろうが、幸いの事ながら彼はこの場に居合わせていなかった
彼の心の平穏を考えると本当に幸運だった


汚れるわよ、といういのの声を無視してごろりとさらに転がれば、緑の芝生からは青い草の臭いと土の匂い
天を見上げれば青く晴れた空が眩しくて、ナルトは目を細めた
木々から漏れる木漏れ日、小鳥の囀り
時折吹く風が心地よい
布団でごろごろと転がっているより、癒されるなと正直思う
…悔しいので決してそれを口にはしないのだけれど


そんな事を考えていたら、隣にいのが腰を下ろす
腰まで長く伸びた蜂蜜色の髪が緑に雑じる
この髪の色も瞳の色も、ナルトが好きな色で
それはどこか郷愁の念を感じさせた

綺麗だな、と目の前のそれを見やりながら、そうぼんやりと考える
すると、くすりと落ちてきたのはいのの微かな笑いまじりの声

その声に上へと視線をやれば、穏やかに楽しそうに笑う君の表情
冷たくしても、何しても、いつも強気に隣にいて、笑っていて



「ナルトの頭はタンポポ色だから混じっちゃってわかんなくなりそう」



いのは傍に咲く一輪のタンポポの花を手折る事なく優し気にそっと撫でながら、再度くすりと笑った

だからか、
何故か最後まで無視出来なくて…



「桜の花は直ぐに散っちゃったけど、まだ、タンポポの花は咲いてるのね」
「…あぁ、本当だってば…」



本当を言うと、自分とは違ってナルトの見事な黄金色の髪が黄色のソレと同じはずはないのだけれど、彼の生き方がソレに似ていると思っているいのにとって、異なるもので同じようなものだった
青緑の芝生に紛れても尚、自己を主張する野花は強く、そして美しい



「ナルトと一緒で図太い根性あるのね、きっと」
「それ、褒めてんの?貶してんの?」
「もちろん褒めてるわよ?」
「…褒められてる気がしないんだけど?」
「それは、ナルトの根性がひんまがってるせいじゃないの?素直じゃないから人の言葉が素直に受け止められないのよ」
「……」



にっこりと笑いながらの余りにもなそのいのの言葉に、先ほどまですっかり忘れていた溜息が零れ落ちる
…ダメだ、やっぱり最近、メッキリいのに対して弱くなったようだ
このままじゃいけない!…フッ。久しぶりに修行するか、シカマルと…と心に誓いながら、
しかし、溜息一つで幸せが逃げてくって誰が言ったんだっけ…と思わず遠い目をしながらそんな事を考えて、意識は軽い現実逃避の旅へと旅立つ

…なんて事が許されるわけなく(笑)



「…久しぶりに二人っきりで、私がナルトの傍にいるのに、意識はどこか遠くなんて許されると思う?」
「…許されない…かな、ってば?」



そんな二人の様子を微笑ましく笑うかのように、森の木々が風を受けてザワザワと揺れた






数分後、休暇のはずのナルトが家にいない事を悟って、素早く二人の居場所を探し当てたシカマルに、二人っきりの時間を邪魔されたといのが怒って
お前が先に邪魔したんだろ?お互い様だ、とシカマルが嘲笑う
そして、いつものようにナルトを挟んでの取り合って、ナルトが切れて
結局最後はうやむやになって笑いあう

もう、手放せないと思う、優しい時間

三人同時にばったりと仲良く倒れこんで、やっと休憩だと言わんばかりに昼寝に勤しむことになる



「…白い綿毛になって、自由に空を飛んで、自分の居場所を探し、広げていく、そんなところも似るといいのに」


そう、いのから聞こえるか聞こえないか小さく呟かれた言葉は他の二人にも届いたのだけれど
今はまだ、これ以上いらないのだと、聞こえなかった振りをしてナルトは目を瞑った







そうして、春の長閑な昼下がりは過ぎていく






fin






*****あとがき。*****
こんにちは。お久しぶりな、いのナルですvいのナルいのファンの方、随分とお待たせしました!!(汗)おかしいなぁ、結構書いてる気がしてたのに、結構久しぶりらしいデスι
今回は、なんとなく「桜と雨と君の」(シカマル)の後日談です。どうやらイノは、シカマルだけに美味しいまねは許さん!という気持ちでいっぱいのようでした。
せっかくの、いのナルなのに、最後はシカナルいの設定なもので、三人ですιしかも、なんだか、いつも以上にお笑い要素高いです(笑)まさか、自分の書いた物語の文章に「(笑)」を使うとは思わなかったなぁ!いのがなんとなく最強です(笑)こわっ!
途中、ナルトがものすごくいのに冷たいのでどうしようかと思いましたが、なんとなく甘い雰囲気にもなり、ホッとしましたが、…あれ?でも、シカマルとの方が甘い…?…ιな展開ですね。ハハハιおかしいなぁ、この話も彼の存在強いし!
ちなみに、タンポポ発言についての詳しい経緯は「dandelion」をどうぞ。

では、このお話が少しでも皆様に気にいってもらえたなら幸い…。拍手ででもコメントいただけると嬉しいです。

06.05.03「月華の庭」みなみ朱木





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