眩しい程に青い空と白い雲

その空の下、彼は笑った

出会った頃の面影もない笑顔で

彼にもはや束縛などない













空を飛ぶ鳥
















金色の髪に青い瞳を持つ少年は長く伸ばされた黒髪を天辺で結んでいた少年の隣で楽しそうに笑った

彼は、黒髪の少年にとって人生の幸運を使い切ったと思うほど、出会えて嬉しいと思う存在だった


出会ってすぐに感じた違和感

本人も気づかないだろう、ほんの些細な一瞬の表情



笑顔に隠された悲しみ、怒りさえも通り越した無感情

投げやりとも思えるような明るさ



目が奪われた



そして

気づいてしまった

彼の、金色の子供の抱える孤独に

彼に隠された秘密故の悲劇を



涙が止まらなかった

泣く事なんてもう、どれほどぶりの事か?

ただ、ただ

彼の孤独に涙した

悲しくて

そして悔しくて

怒りが込上げた



自分がそんな感情を抱いたって何かが変わるわけではないけれど

それでも、抱いてしまうのだ

自分にできるのはそれぐらいの些細なものだけれど、

君を傷つけない存在になりたいと思う













感じた違和感がもたらした出会い

消されるはずの記憶はまだここにあって

大切な記憶…

自分という存在を認めてくれた

傍にいさせてくれる事を並ぶ事を許してくれたという証で

無常の喜び

消されても仕方が無いと思ってた

それだけの、重大な秘密で

それでも、この記憶を渡したくなどなくて少し抵抗してしまった

それは、無謀だと思える行為

成功したのは奇跡に近い






なんて自分らしくないのだろうか

面倒くせぇとこに関わるなんて

でも、それ程に自分にとって大切な事で

だって、これは、君に近づけた証拠なんだ

失いたく無い





自らの殻に閉じこもる金色の少年

気持ちを押し殺していた時期は終わり、心は既に凍っていた

彼に心から笑って欲しくて







「あぁ、空が綺麗だってば」

「冬だからな」

「ったく、シカマルってば情緒がないってば」

「五月蝿い」

「む、俺より弱い癖に態度がでかいぞ!!」

「それを言うなよ!今にお前の隣に立ていても遜色ないようになってやるよ!!」






聞こえるのはさも可笑しそうな金色の少年の笑い声

今ではあの時なかった笑顔がここにはあって

思わず眉を顰めた顔も緩む



仰いだ空は抜けるような青空で

でも、自分にはどこか見慣れた空で



しかし、金色の少年の目には何倍にもこの自然が美しく見えるのだ…



何も感心を持たなかった彼はもうここにはいない







「ほら、行くぞ!」

「…めんどさいってば」

「お前、どんどん俺に似てくるな…」

「そう?」







腕を掴んでぐいぐいと引っ張って行く

自分の口癖を言う金色の少年

まるで立ち場が反対で

でも、それが一層、彼が自分に心を許してくれる事が分かるようで嬉しい




掴んだ腕に心の中でそっと舌打ちをする

自分と変わらない歳なのに、その肌は抜けるように白く、腕は細かった

その身体を見るたびに胸が痛くなる

思えば彼があの里でろくな食料を手に入れれるわけないのだ


その結果がこれで…


食べてるか?と聞けばちょっと困ったように、しかしどことなく嬉しそうに食べさせられていると答えた

自分と同じ事を考えている奴、と考えてすぐに思い当たる

ちょっぴり悔しいのは何故か




彼のせいではないのに、彼を怨む里の人々

なんて見当違いな怨みだろう

本当に、どうしようもない里で

それでも、

彼の周りには彼に間違い無く純粋な愛情が溢れていて

それだけが唯一の救い

彼が今、こうして笑えているのもきっと、そのお陰に違いない







一羽の鳥が目の前を羽ばたいて横切って行く
その姿を眩しそうに見つめる金色の少年




まるで…








「気持ちよさそうだってば」

「…だな」

「何も束縛されないってのは、どんな気持ちだろう…」







金色の少年がぽつりと漏らした言葉

表の顔の口癖なんて忘れたその言葉は黒髪の少年の心をさらに締め付ける







「里を、出たいのか…?」







そっと、恐る恐る金色の少年を見やる

しかし、そこには予想とは違い、穏やかな笑顔を湛える彼がいて







「どこにも行かないさ

俺はさ…シカマルや自分の大切な人が好きなこの里が好きなんだ

そりゃ、正直、馬鹿馬鹿しくなることはあるけどさ

それでも、

ここからこうやって眺める景色は好きだし、

みんなといる事を心から楽しいと思う

束縛だって、昔のような厳しいものじゃない

この腹の中のやつさえ大人しくさせてれば俺は結構自由なんだよ…」

「ナルト…」

「…じじぃはもういないけどさ、俺はあの人が愛したこの里を守りたいんだ

俺の事を、運命を一番嘆いて、そして、愛してくれたのはあの人だった

だからさ、綱手ばーさんを助けたいんだよ

じじぃの意志を継いだのはあの人だから…

誰でも無い

自分のだけの意志で、俺はそれを選んだんだ

この里の警備なんて、嫌気がして抜けようと思えば俺には抜けれるさ

大した障害になんてならねーよ

でも、きっと、

それがじじぃの望む事のような気がすんだよ…」







遠く空を望む

3代目を懐かしむようにそっと目を細めた







「そっか…」

「あぁ」

「じゃぁ、お前が無事に火影になったら補佐したやるよ」

「楽しみにしてるってばよ?」







ふっと微笑した

その笑みはとても綺麗で、思わず見惚れてしまった

微かに耳が赤くなったのは仕方が無いだろう

それほどの魅力で…

いつもの冷然と微笑む姿も美しいが、心から笑う彼はさらに魅了するものがあって




あぁ、よかった




そう、心から思うのだ

彼にはこの笑みが戻った事がなによりも嬉しい







「…何笑ってんだ?気持ち悪いってば。もう、仕事の時間だ。行くってばよ」

「あぁ」







不審そうに見てきた金色の少年を黒髪の少年は綺麗に無視して走り始める

それを追うように彼も速度を上げ並び、疾走する

その二人の姿はあまりの速さにすっと消えていった


待ち行くは数多の敵

里を脅かすモノ


彼等を囚えるものは何も無い

自らの望んだ道に進む為に戦うのだ

金色の子供はこの里を守る為

黒髪の子供はその隣りに遜色なく並び立つために…








金色の鳥は自由という青空を飛ぶ



自らの孤独という殻を破り

初めて接する暖かい世界への戸惑いを抜け

そして巣立っていった小鳥

今はその幼き姿の面影は無い










ふと、遥か向こうの空を見上げれば、気持ちよさそうに先ほどの鳥が空を飛んでいた



















******あとがき。******
こんにちは。ほんとーにお久しぶりのスレナル成長物語ですι時間軸は丁度原作軸ですな。分かりづらいですが(苦笑)
スレシカナルだ、いぇい☆やはり、シカマルには補佐になってほしーですね、火影ななるちょの。
てか、すっかり回を重ねる度になるちょがまるくなってますよね(笑)もはや、可愛いの領域にはいってきたと…!!(笑)
タイトルは鳥に落ち着きました。小鳥だったし、ニワトリよりは…!!後一回の予定。未来のお話です。気を長くしてお楽しみにしてください。
しかし、このシリーズは一度間が空くと書きにくいなぁ…。

では、このお話が少しでも皆様に気にいってもらえたなら幸いデス…
04.12.08「月華の庭」みなみ朱木









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