幸せのカタチ
「あ」
「あ」
夕暮れ時のこの時間に二人、ナルトとシカマルは帰り道に偶然出会った
お互いの手には重そうなスーパーの袋
「お前も買い物の帰りか?」
「そう!俺ってばうっかり新作のラーメンを買うのを忘れてたってば!」
「…野菜も食べろよ?」
そんな事を言いながらも袋の中には野菜かちらほら見えていて
彼自身もお使いなのは間違い無い
…アスマの
「分かってるってば!シカマルは…お使いだってば?シカマルが面倒な事するなんて珍しいてっばよ」
「めんどくせーけど、母親が怖いんだ…」
シカマルが思わず遠い目をしてしまったのは仕方が無いだろう
それほど、彼女は我が家では最凶の人物なのだ
こんにゃくやら揚げやら夕食で使うだろう材料の買い出しに行かなければ、自分の夕食は無いに違いない
いや、もしかしたら白いご飯のみぐらいなら出てくるだろうが…
しかし、それは勘弁してもらいたい
にしても、とシカマルは一人思う
ここは町中で、人目があるからナルトがこうやってドベの振りをしているのは仕方が無いと分かりつつも、なんだか苛々する
知っているのに
友人でもないと言われているようで
違うと知っているのにも関わらず、なんだか胸がもやもやする
「何、いつもより眉間に皺寄せてんだってば?」
「寄せてねーよ。馬鹿」
「うわっ、酷いってば!!」
そう言いながらも、自分の気持ちを悟ったのか、ナルトの目は困った奴だと語っていて
それが、ますますやるせない気分になる
なぜ自由に生活できないのだろう
「じゃぁ、帰るってば」
「あぁ」
もう日はさらに傾いて暗くなっていて、町の外灯もいつの間にか灯が灯っている
早く帰らねばならない
二人がすれ違うその時
「人それぞれに幸せのカタチってのは違うんだよ」
え、と驚いて振り向いた頃には既にナルトの姿はない
遠〜い所でゆっくりと歩いているところが見える
向かう先は予想通りアイツの家の方向なのは忘れた事にしよう
不愉快になるだけだ
にしても、いつもはバレるといけないからとかなんとか言いながら、こういう時は使ったりするのか、とひっそりと呆れた
まぁ、彼の事だから、バレないようにしてるとは思うのだが…
「人それぞれ、か…」
きっとそれは、彼は今満足なのだという事で
それならば自分が口を出す事では無い
それでも、
「俺の場合、お前なんだからな…」
もう姿の見えぬ彼に、届く事の無い言葉を発した
これは自分の中に留めておくべき言葉
微笑む彼の傍に並び立つ自分
自分が望む未来
彼は知らなくていい
夢は自分で叶えるもので、それを叶える為に自分は何でもするだろう
「さて、帰るか…」
太陽がすっかり落ちた道をゆっくり歩きだす
遠くない未来への誓いを胸に…
fin
***あとがき。***
こんにちは、シカナルです。WEB拍手公開用だったため、普段よりかなり短いですιSSSですね。ごめんなさい。
幸せのカタチは人それぞれに違うもので、きっとナルトには今の状況で満足なんじゃないだろうかな。きっと、それがシカマルにとって気に喰わないカタチでもね。そう思って書いてみました。
少しでも皆様のお心に留まりましたら幸い…
04.12.19「月華の庭」みなみ朱木
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