彼女の立派とも思える行動は思いがけず彼女にとって命取りな行動だったのだ









ささやかな復讐












(…ったく、このばーさん、殺してやろうか…)
ナルトは殺気を一瞬ではあるが斜め前に立つ老女に向けて放つ。
普段ならば綺麗に覆い隠してしまえるような事も、この件だけは我慢ならなかった。

あくまで、一瞬で
あくまで、老女で

凶悪で冷淡な恐るべき殺気が老女を襲う。


「ひぃぃっ!うぉぁ〜!!!」


ご老体の突然の叫び声が室内に響き、周りの視線は一瞬にして彼女の元へと集まり、戦闘態勢を取る。
如何せん、砂隠れの里は今非常に不安定であり、一網打尽な襲撃には最適なチャンスだった。
しかし、しばらく様子を見ても誰の不穏な気配も実際の行動も感じない。
再度老女へと皆は顔を向けたが、その当の本人はガタガタとしゃがみこみ、身を抱き締めながら振るえていた。
これがその辺りにいるような老人ならば、ついに気が触れたかとか、呆けたか?で済むのだが、いかんせん、いくら歳を多く重ねているとはいえ、里の偉い人間であり、無視する事は出来ない。
嫌だ嫌だ、と思いつつ周りは心配の目を向けていた。


「ど、どうしたんだってばよ!?持病の癪だってば!??」


ナルトは酷く慌てた振りをしてあたふたと老女へと近寄る。
ここでのポイントは実際に微かに青ざめた演技。
世が世ならば一流の俳優になれただろう、見事としか言いようがないものだ。
なにせ、その心の内は「そのぐらいで済んだ事を感謝しろ」である。


「ナ、ナルト…?」


誰が何をしたかを悟ったのは多くの人の中でたった1人。
その一人とは、運悪くというか普段から視線はナルト一直線、誰もが認める変○ストーカー男のカカシであった。


「なんだってば?あ!わかったってばよ!!カカシ先生ってば、ばーちゃんの看病と面倒を一気にしたいんだってば?流石、人の面倒をそこまで見れるなんて、俺ってば尊敬するってばよ!」


内心はこれまた「あぁん?カカシごときが俺に何か言いたい事でもあるのか?はっ!(鼻で笑う)…殺るぞ」であり、微笑である。
ナルトもその笑顔の凶悪さを隠そうとしなかったし、カカシも長年の経験でこの笑顔のさしている事を機敏にさっした。
心なしか顔は青ざめ、冷や汗をかいている。


「そ、そういって貰えると先生も嬉しいなぁ…なんて…アハ、アハハハ…」


なんとか(と言っても棒読みではあるが)笑顔(引きつっていたが)で返すのが精一杯で疲れきり、周りがさすがですなぁなどと言って話を勝手に進め勝手に決められていくのをぼぉと見ているしかなかった。
そして誰もが各々の用事の為に去っていく中で、ナルトの脅威に襲われた老女と男は一方は未だ嘗てないほどの恐怖に、一方は近いうちに病院送りになるだろう、確信的未来に脅えた二人だけが取り残されたのだった。






サクラは置いていく薬の調合をしたいからといって去っていったので今ナルトは監視と二人っきりであった。
それは他の里の忍びを一人放置しておくには危険だからであるが、あまり意味をなしていない。
ま、知られてないからだけどな、とくすりと心の中で笑った。
気づかない愚か者への嘲笑でもあり、嬉しさの笑みでもある。


「…あのな、ナルト」
「なに?」


自分の名を呼ぶ声の人物に、ナルトは先ほどとはうってかわって綺麗に笑った。
それは普段の底抜けに明るい笑顔といったものとはまったく違うもので、彼の本質を垣間見せるものだった。
無論、多少の機嫌の悪さは残っているが、二人に奴当たりした事で多少の憂さは晴らせたし、何より、相手の影響が大きかった。


「お前だろ、さっきの悲鳴の原因。酷く脅えてたぞ。やりすぎだ」
「…さぁ?テマリの気のせいじゃない??」


呆けって急に来るのかぁ、怖いよな。とにっこりと微笑めば、ひくりとテマリが笑う。


「なんでまた?ナルト、あの人が来てからずっと機嫌悪かっただろう?」
「…わかんない?」
「?どういう意味だ??」


心底意味がわからないといった様子のテマリにナルトはこれ見よがしにふぅと溜息を吐く。


「…なんかちょっと空しいというか、ムカツクというか」
「えっ?」


まだわかりませんといった焦った様子が年相応で、まぁ、こういうとこも好きなんだから仕方ないけどさぁと、もはや諦めの心地で。
でも、言わずにいられない。


「テマリのバーカ」
「なっ…!」


怒るテマリにすっと詰めよって、耳元にそっと口付を送る。
瞬間、真っ赤になるテマリに甘い微笑みを一つ。
そして、
自覚させたいから何度でも言葉を紡ぐのだ。
自分でもなんて意地らしいんだと思ってしまうほどで、けれど、それほど彼女が大事なのだから仕方が無い。


「テマリとせっかく堂々と旅出来る機会だったのに潰されて機嫌いいわけねーだろ?」


さらに赤く顔を染めるテマリにくすっと笑って、なんとかは馬に蹴られて死ぬつー言葉もあるぐらいだし、あれぐらい可愛いものだと付け加えた。


「なに、テマリは一緒に行かなくて残念じゃなかったのか?」
「…そんなこと!!」


思わず、という感じに言ってしまった言葉ににっこりと笑うとあたふたと動揺してる。
冷酷とか言われているわりには、自分の事には鈍くてすぐこういった事に同様するところが愛らしい。


「あの、その…我愛羅が心配だし、な」
「だよな。自ら助けに行きたいのが姉ってもんだよな?」
「そう、そうなんだよ!」


敢えて否定せずに頷けば助かったといわんばかりに何度も首を縦に振り肯定するテマリに「ま、本心は垣間見れたから今回はコレでいいけどね」と言わんばかりににっこりと笑った。
あのささやかである復讐も役に立つものだ。
まだ怒ってはいるけれど。



「頼む、な…」
「あぁ、我愛羅の事は任せろ。テマリを悲しませるような結果にはさせねーよ」


期待してる、と少し寂しそうに笑うテマリの頬をそっと慰めるように触れたかと思うと直ぐに名残惜しげに離した。
サクラの準備が整ったのだろう、こちらへと向かってくる気配を感じたのだ。
なんとも、いつもいいところで邪魔が入るのか…?
ワザとではないかと疑いたくなる。
まったく、なんて嫌な偶然だ。


「じゃ、行って来るよ」
「あぁ。…いってらっしゃい」


テマリがそっと小さく手を振る。
だから…、

再度愛しげに耳元で囁くのだ

照れた顔で笑う君を想像しながら











「…最初のただいまをテマリに言いにくるよ」






fin






*****あとがき。*****
こんにちは。今回の作品はテマナルですvいやはや、もはや私にもコレがテマナルではなくナルテマだってこと分かっていますが敢えてテマナルです(笑)
最近やけにテマナルが増えているような気がするのは供給が少ないので自家生産のせいでしょうか?いや、きっとこのマイナーCPに反応頂けて嬉しいからってのが正解です(笑)
今回のテーマは、テマ好きナルト好きとしての原作への悔しさをぶつけたものです。お分かりですよね?そう、2部でテマとナルトが一緒に旅(いうか任務)だvと思っていたらばーさんにその株を奪われたというショッキンングな事件(笑)への私的ストレス解消です。くっ!!ようやくまともな接点が!と思ったら!!(泣)
ちなみに、老女と書かれているのは私が雑誌立ち読み派だからであり、覚えていないっていう理由です(滅)役職とかも忘れてて困ったよ!いろいろ変なとこあっても心の目で!!
鈍感テマをこよなく愛してます。あぁ、かわいい。もしかしたらナルトCPの中で一番ナルトが相手を甘やかしているのは気のせいではないだろう…(笑)この作品はそれを喜べるテマナル好き様へと捧げますv

では、この話が少しでも気にいってもらえたなら幸い。拍手ででも感想いただけると嬉しいです。

05.05.12「月華の庭」みなみ朱木





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