えた指先











冷え切った貴方の手に自分の手を重ねる
まるで氷みたいに凍える指先を暖めあうようにぎゅっと握り合って…
初めはお互いにちょっと驚愕するぐらいに冷たかった手は今はほんのり暖かい
いつもならダメだっていうのに今日はなんにも言わない彼
寒いのってやっぱりいいわね、と心の中でにんまりと笑顔
顔に出さないように気を付けながら
でも、自然と笑顔なのは許して欲しい
だって、こんなにも長い時間、あなたと手を繋いだ事なんてなかったんだから



「寒いわね」
「あぁ」



私とは反対にむっつりとした不満顔
よっぽど寒いのが嫌いなのね
そういう自分も、流石に頬を刺す様な寒さには辟易とするが、こんな事があるなら耐えられる


熱い吐息は冷えきった空気に反応し、白く曇っては霧散していく
それがなんだか楽しくて、はぁーと吐いてはその消え行く様をいのは見送った
その様子をナルトは元気だなぁといった様子で見守っている
お互いに殆ど言葉を発し無いけれど
それでも気まずいことなんてない


なんて穏やかな時間なんだろう



「あ、そうだ!」



ある物の存在を思い出し、ごそごそとポケットを探る
幸いな事に探り当てたそれはまだ自身の熱を失っていない
空いている手でそれをナルトの頬に押し付けた



「わっ、何、いの」
「カイロv忘れてたけど、持ってきてたのよ。あげるわ、ナルトに」
「いいのか?」
「うん」
「…ありがとだってば」



もしかして、照れ隠しかしら?
口調が急にドベのナルトだなんて
あげたカイロの温かさを嬉しそうに頬に当てたりして楽しむ姿は年相応に見えて微笑ましい
いつもはカッコイイってのが強いんだけれど、今日は可愛いわね
そんな風に感じた
そもそも、男性に可愛いなんて失礼なのかもしれないけど、この男は実質、憎いくらいに可愛いのだから仕方が無い

反則だ

女の自分よりも雪のように白い肌に細い腕、足、腰
ふんわりとした桃色の唇に、瞳は澄んだ空の色で
金色の髪はまるで黄金色の麦の稲穂のように眩しく光る
パーツ別に見てもこれだけの極上品で
そこで鋭く冷酷に微笑む姿は綺麗だけれど、親しい人間にだけ時折垣間見せる笑顔は可愛いのだ
あの瞳が優しく笑みを映せば花が咲いたようだった
今はドベだなんだと言って気づかないけれど、もう2、3年もしたら誰もが放っておかないに違いない
曇った目で見てるから気づかないだけなのだ
自分達だけが被害者だと思い込んでる
なんて見る目のない人達なんだろう
…馬鹿だわ…



「…ほんとに」
「へ、何か言ったか??」
「…特に大した事は言ってないわよ」



マフラーにぐるぐる巻きにされても尚、寒さに震えているナルトの姿に微笑みを一つ



「ただ、そんなに寒がりで暗部の任務は大丈夫なのかしらと思っただけよ」
「…すぐに殺して帰ればいいし。燃やせば暖かいし。狐火って結構暖かいんだぜ?」
「そ、そう…。九尾の力って色々と役立って便利ね…」



だろう?と少し自慢げに笑うナルトに対していのは呆れたように笑った
まさか、あの九尾の力を防寒に使うとは…
意外性NO.1は素でもなのかしら?
そんな疑問が湧いてきた
【蒼輝】、木の葉で最強を誇り恐れられている暗部の真実の姿はまったくもって複雑だ
敵を前にし滅ぼす時の冷酷無悲な、冷たくも美しい姿であったり
こうして、天然で思いがけない事をして、そこが可愛かったりして
まるで姿を頻繁に変える月のようだ
この姿をみんなに知って欲しいと思うけれど、でも、彼の事を知っているのは、今は少なくていいと思う
そんな事を思うのは我侭だとは思うけれど、ほんの少しの間だけでも彼を独占したいと思うのは乙女心で…
なんて身勝手なんだろう



「…どれもこれも、ナルトが悪いんだわっ!」
「は?…俺?」
「そう!ナルトが悪い!!謝って!!!」
「…俺、何かしたっけ?なんで謝らなきゃ…」
「なんか言った?!」
「…ごめんなさい」
「よし!」
「…り、理不尽だ」



その言葉にキッと一睨み
その自分の様子に、いえ、何にも言ってないデス…とナルトは瞳を逸した
なんだかちょっとすっきりとした気分だ
確かに理不尽だなと思うけれど許して欲しいわ
私をこんな気持ちにさせるのは、ナルトが原因なんだもの



「早く帰って、暖かいものでも飲もうよ」
「そうするってば…。寒くて凍え死ぬ…」
「…限界みたいね。ナルトの頬、とっても冷たいもの」



そっと繋いだ手を外し、両手で触れた頬は手よりもひんやり冷たい
きっと自分も彼ほどではないにしろ、冷たいに違いない
この二人っきりの時間が終わってしまうのは残念だけれど、風邪を引いてしまっては元も子もないのだ



「いの」
「なに?」



突然、がばりと抱きつかれる
今までにない行動にビックリだ
さらさらとした髪が首に触りくすぐったい



「え?な、何?!」
「寒い…。いのは暖かそう…てか、暖かい…」
「…あ、そうなの」



自分の妄想…いや、想像力が恨めしい
ようやくナルトが自分を放したかと思うと、手を再び握られる
今度はナルトから
気づいてるかしら?
初めてだって
ナルトから手を繋ごうとするなんて
ふふ、っと微笑する
さっきの気持ちなんて嘘みたいに吹き飛んで



「…お汁粉食べたい」
「作ってあげるわよ♪」
「…もうちょっと料理の腕上げたらね」
「ひどーい!お汁粉なんて私にだって簡単に作れるわよ!!」
「そう言って前に作ったモノは食べ物じゃなかったし。アスマより腕上げたら食べる…」
「うっ…!」



どうやら以前の料理を根に持ってるらしい
ちょっと意識を失いかけたくらいなによ!!
あの熊の腕以上ですって?
そんなのすぐには無理に決まってるじゃない!!
どっかの誰かさんの為に相当練習を前からしてるっていう話なのよ!?



「眉間に皺寄ってるぞ」
「元々からこんな感じよ!」
「シカマルみてー。えいっ!」



ビシと刺されたのは眉間
後頭部が衝撃で後ろに微かに下がる



「折角美人なんだから、台無しにしねーの」
「え」



目の前には笑顔の彼
驚いている自分を、ほら、皺がなくなった!と可笑しそうに見ている



「ほら、帰るぞ。寒い」
「そればっかりじゃない」
「だって、寒いし」



仕方が無いわね、と微笑み一つ
繋いだ手はそのままに腕にしがみ付く



「なに?」
「だって、寒いんでしょ?こっちの方が暖かいもん♪」
「もん、って…。ま、いいか」
「そ、いいのv」



流されるままに寄り添いながら、帰り道を行く
早く沈んでいく太陽が道に落とす長い影は一つ
それは、いのにとって幸福の証


凍えた指先はどこか消えてしまって
残ったのは暖かい手
そして、ココロ
いつまでもこうやって、手をつないでいられるような気がした

冬が過ぎ去っていってしまっても…














***あとがき。***
こんにちは、今回はいのナルです。相変わらず&な感じでごめんなさいι精一杯なんだよっ!!うう(泣)一応サイトにあるナルト作品は繋がりがあるので、この時点では付き合っていない設定なんだから仕方ないだろ!!と精一杯いい訳しながら書いてます(笑)
そろそろ、ちゅーとか書きたいよね。無理矢理いのに…!!って、ほら、いのナルですから!(爆笑)
今回のこの作品。「winter and smaile」にどことなく共通点が多すぎですねιえー、そのすぐ後の話か、一年後の冬だとでも思ってください!!(おい)冬はいちゃついても暑苦しく無いのでサイコーだ!
にしても、アスマさんの料理の腕はプロ並か…。ひよこの為に頑張る熊が最高です!うらやましい…。てか、いのー頑張れ〜!!(笑)

少しでも皆様のお心に留まりましたら幸い…

05.1.13「月華の庭」みなみ朱木





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