君という存在は…









dear













深い蒼を湛えた空
白く光る月は今は薄い雲にかかり姿は朧にしか見えない
どちらかと言えば任務に適した夜であった

肉を絶つ鈍い音
醜い最後の悲鳴

全てが消えると蒼輝、ナルトは忍刀を一振りし、刃に付いた血を振り払った
その刃は瞬く間に美しい妖しい銀色の輝きを取り戻す
刃こぼれ一つなく、その鋭い切れ味と妖しいほどまでの美しさに、名刀、いな妖刀である事を窺わせた
蒼輝といえば、自身の身はその刀とは反対に血飛沫を一滴たりとも浴びてはいない
事後処理の手間も、であるが、なによりこの身を彼等の穢れた血で汚す事が嫌いなのだ



「任務完了」



足元に横たわる敵の屍
それが完全に生きていない事を確認するとそう呟き、蒼輝は艶然と微笑んだ
しかし、



「死体の処理がまだ終わってねーぞ」
「…黒月」



後ろからする声に振り向けば、こちらは微かに血を浴びた黒月、シカマルの姿
どうやら黒月の方も片付いたようだ
顔を隠すように覆うお面を後ろへと回しながら近づいてくる
めんどくさい、といった表情を隠しもしていない



「なんだお前か、みたいな表情すんなよ。今、俺の存在忘れてなかったか?」
「気のせいだろ?」
「…ま、そういう事にしといてやる」



呆れた、みたいな表情をした黒月に蒼輝はお面の下で微かに笑う
こういう反応をみせる彼がなんだか好ましいと思うのだ
自分の素を知ってもなお、こんな親しい態度や、色んな事を遠慮なく言ってくるやつなど、親代わりの一部の大人を覗いたらこいつしかいない
それが新鮮で
好意を持たれる事など少ないから戸惑う事もあるのだけれど純粋に嬉しかった
だから、色々とからかいたくもなるのだが…
それは本人は知らぬが仏というものだ、心に秘めておく
きっと「理不尽だ!」と言うに違いないし、それじゃ面白くないので



「後は、死体の処理と報告書か…。よし、黒月、報告書は任せた!!」
「はぁ!?ちょっ、待て!おいっ!!」



黒月の静止の言葉を軽く無視し、蒼輝は手馴れたように素早く印を結ぶ
結び終えた途端、青白い炎が辺り一帯を包んだと思うかと、直ぐにその炎は消えた
辺りに多く倒れていた屍はまったく見えない



「今度こそ完了だな」
「…お前はな」



任務が終わった事でせいせいしたとばかりにお面を取り、張り詰めた気を開放させたナルトの表情は明るい
しかし、まだ報告書というやっかいで面倒なモノを残されているシカマルの表情は暗かった
それだけではない…



「あーあ、ったく、血の臭いがひでぇ。また隠れて洗濯かよ、…めんどくせー」
「お前が血を浴びなきゃ済む事だろ?」
「…お前は簡単に言ってくれるがな、そう簡単に出来ることじゃねーんだよ」



横を向いてぶつぶつ文句を呟くシカマルの肩をポンと笑顔で叩く
もちろん笑顔
それも、とびっきりのだ



「じゃぁ、修行だな?それも、徹底的に」
「…オテヤワラカニ…」
「さぁ?」



冷や汗を流しながらひくっと笑うシカマルに今度は目を細めニッと意地悪く微笑んで
小さくひでぇ、と呟いたのが聞こえた
よっぽど昔の特訓がトラウマになってるのだろうか
まぁ、これぐらいの意地悪は愛ゆえだし我慢してもらおう
ビシバシ鍛えて立派な右腕になって貰う為に


すっかり静かさを取り戻した夜に、二人は行く
一人は楽しげに
もう一人は心持ち肩を落としながら








あぁ、親愛なる君よ…














fin









***あとがき。***
こんにちは、シカナルです。WEB拍手公開用だったため、普段よりかなり短いSSSですねι
なんとなくナルトにシカマルを苛めもらいたくて仕方がなかったのでこんな話に(笑)でも、愛ゆえです、愛ゆえの苛めですヨ!!そこが重要ポイントですから!!!私もナルトもシカが好きすぎてちょっと苛めちゃうvみたいな(滅)
「キンモクセイ」以前のお話でした☆
少しでも皆様のお心に留まりましたら幸い…

05.2.22「月華の庭」みなみ朱木





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