開け放たれた窓から覗く空はどこまでも青かった







青い空










白いベッドにそっと腰掛ける


「いてぇ」


治そうと思えば直ぐに、それも簡単に治せてしまうのだが、そんな訳にもいかず、ダルそうにナルトは四肢を投げ出した
彼の抜けるような白い肌には、先日受けた痛々しい傷の数々を隠すように包帯が巻かれていた


「気分悪ぃ」


いろいろな制約にしらばれている自分

強さを隠さなければならない
それは人々の脅威になるから
彼等に思い入れなどないが、頻繁に襲われるのは正直面倒だし
なにより、一握りではあるけれど、傷ついて欲しくないと、少しでもそう思う人がいるから

その中での怪我
仕方ないけれど、それは苛立つ原因で
無論、それだけではないけれど…



何が面白いのだか、頻繁に見舞いに来る輩、特に銀髪の奴を相手にするのも流石に鬱陶しくなってきた
一定の条件を満たしている人間しか訪れられないように術をかける
当分は静かな暮らしが保障されるだろう


トン


しかし、その思惑とは別に、窓辺から軽やかな音が聞こえる
思い当たる人物は一人しかいない
ゆっくりと窓辺の方へと顔を向けた


「テマリ…」


予想通り、そこにはテマリの姿
抜けるような青い空を背景に、ふっと微笑んでいた
ナルトはその光景に一瞬、眩しそうに目を細めたが、すぐ顔を前へと戻し、視界から排除した
テマリはその様子には構わず、ナルトの身体の様子を上から下まで観察すると、直ぐに眉を顰め、厳しい表情になった


「…随分、痛々しい姿だな」


しかし、反応は返ってこない


「ずいぶんな対応だな」


テマリは仕方がない奴だと言わんばかりにちょいっと肩を竦めると、少し高さのあるその場所からふわりとベッドの傍に飛び降りた
その洗練された飛び降り方から、テマリの実力の高さが見える
それも、知られているそれよりも上の、だ
実は、ナルトとのこの親しい様子でもわかるように、お互いの真の姿を知っている仲であったりする
それも、随分前からの
つまり、類にも漏れず、テマリも暗部なのだ
無論、仕えている人物は違うのだが、それを黙らせてまで付き合っている


「こうしてワザワザ監視の目を潜って来たというのに」
「…別に、テマリには大した障害じゃないってば」
「それでも、面倒には違いないだろう?どれだけ監視が付いてると思っている。それを押してまで、ナルトの見舞いに来たという事実を喜んでもらいたいものだが?」


テマリは音も無くさらにそっと近寄ると覗きこむが、ナルトはぷいっと横を向いたままだ
理由は分からないが、どうやら何かに怒っている、というか拗ねているようだ
ナルトのここまでの頑なな態度も珍しい
歳相応の彼を見た気がして、テマリは気付かれないように、こっそり笑った


「帰るぞ」
「ダメ」


帰ろうとするテマリをすっと伸びた手が捕まえる

なんて素直じゃないのだろう、彼は
そんな所も愛しく感じる


「何を拗ねてるんだ?」
「別に拗ねてなんてないいてば」
「いや、拗ねてるぞ」
「・・・・」


中々答えようとしないナルトの横、ベッドにテマリはそっと腰を下ろした
視線の横にはナルトの頭に巻かれた包帯が
その包帯へとそっと傷が痛まない程度に優しく手を這わせた


「そんな表情をするなってば」
「私が、私がいけばよかったな…。すまない」
「治そうと思えば直ぐに治る怪我だってば」
「でも…!いや、…もう、いい…」


ナルトの強さを知らないわけではない
しかし、彼が戦えない事情は知っていたのに
あの時はそれが最良の判断だったと思うが、白い病室に押し込まれ、包帯にまみれたその痛々しい姿には心が痛む


「なんで…テマリがシカマルなんだってば?」
「? そりゃ周知に知られている関係と能力を考察した結果、あぁいう組み合わせが最良だと思ってだが…」
「別にテマリがシカマルじゃなくったって、カンクロウでもいいだろう?」
「しかし、能力を考えるとな…」


何か駄目だったか?とテマリは首を傾げて少し思考する


「―テマリはシカマルに構い過ぎだってば」
「そんなつもりはないが?」
「そんな事ない!絶対に気に入ってるし!!色々と気にしてるってばよ!!!」
「それはお前が!!あっ…」


しまったと言わんばかりに口を手で塞ぐテマリに、先ほどまでの不機嫌を払拭したような満面の笑みを浮かべながらナルトはテマリの顔を覗きこむ


「俺が?」
「…ずるいぞ」
「どう言われようと気にしないってば。で、俺が??」
「うっ…」


普段は見せないような笑顔を惜しみなく曝け出しながら問い詰められれば、いくらテマリでも白旗を上げるしかない


「…お前が、シカマルを気にしてるからだ。最近、あいつの事ばかりを話すじゃないか。だから、どんな奴か気にしてただけだ。そんな時に今回の件があったから…」
「そっか」
「なんだ、その笑みは」
「安心の笑み?」


ニカッと笑うナルトに今度はテマリがびっくりしたように目を見開く


「安心?」
「テマリってば、他の事には鋭いのに、自分の事になるととんと鈍いってば…」


ふぅとあからさまに溜息を付くナルトにテマリは訝しげに眉を顰める


「どういう意味だ、それは…」
「こういう意味」
「?」


隙を突いてテマリの頬を掠めるようにナルトの唇が触れる


「テマリが俺以外の男を好きになるのは許せないって事だってばよ」
「え…?」


クールなテマリの顔が真っ赤に染まる


「あ、あの、そ、その、だな…?」
「うん?」


しかし、そこに邪魔するように激しくドアを叩く音が響き渡る
『ナルトー?開けてよぉ』との片目の銀髪の男(名前を言うもの嫌だ)の声
どうやら、術が発動して入れない為のようだ
ちっ、と舌を打つ


「ま、また、来るっ!」


その隙に、テマリはその言葉を一つを残し、慌てて逃げるように窓から飛び出て行ってしまった
どうやら、続きの展開はまた今度のようだ
窓辺に立って外を眺めるが、既に、彼女の姿は青い空に吸い込まれたように消えてしまった
しかし、また来るとの言葉は、望み高い事に違いない
自然と笑みが広がる

クールな表情
ちょっぴり照れた顔
拗ねた顔
真っ赤になって慌てた顔

そして、笑顔…

テマリの全てが可愛くて
愛しくて

出会った時、自分の周囲の状況を馬鹿馬鹿しい失笑した彼女
自分に向けられた暖かい感情
初めて知る、感じる感情

全てが新鮮で、愛しいかった



雨が晴れた後の、あの青空のように…













「さて、あいつでも絞めるか…」


今度は凶悪な笑みを浮かべて扉へと向かった
無論、邪魔を2度とされない為に













***あとがき。***
こんにちは、今回はテマナルです。え?(笑)管理人はテマが大好きです。笑顔にやられましたvしかし、世の中に氾濫するテマ関係は殆ど鹿がらみ…。私はナルト至上主義なんだぁ!!とちょっと抵抗してみました(笑)しかも、スレテマで(爆)どうでしょうか??反応怖いなぁι
本当はもっと男前なテマでしたが、ちょっと乙女になりました(笑)大分、ナルテマっぽくなったなぁ!しかし、最初はなるちょが乙女だから!と言い訳してみたり(笑)
拗ねてるなるちょ(スレ使用)はひじょーに可愛いと思います!!

少しでも皆様のお心に留まりましたら幸い…

04.11.18「月華の庭」みなみ朱木




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