それは永遠なる約束…










make a vow














過酷な朝練も終わり、部員が部室へと着替えに向かう中、天国は監督の羊谷の元へ駆け寄った

それに気づいた数名の好奇の視線を感じるが、それを気にもせずに天国は話しかけた



「監督〜。俺、今日の放課後の部活出ませんから。ヨロシク」



出れません、ではなく、出ないと言い切った天国に羊谷は苦笑した

いつになく強気な態度である

本来ならば理由を聞くものだが、面倒だし、なにより天国の目が『聞くな』と物語っていた

いつもの様な、陽気で馬鹿な彼とはまったく違った迫力で、口調や顔は笑ってはいるが、目は笑っていない

寒気が羊谷を襲った

これは、駄目だといったらどうなるかわかったもんじゃないだろう



「わかった」



だから、二つ返事で了解した

野球部の部員どもはそろって彼に好意を寄せていて、何故いないのかと騒ぐだろうということは分かっていたが、その程度のリスクは仕方ないだろう

この言葉に逆らえないのだから

でも、その事を考えるとため息が出た



「このお礼はしますよ…」



そんな監督の姿に、天国は楽しそうに笑って、羊谷にのみ聞こえるように小さな声で囁いて去っていった

タバコが羊谷の手から落ちた

一瞬呆然とし、正気に戻ると腹のそこから笑いが込み上げてきた



「こりゃー、奴らが落ちるのも無理ないわな」



(ただ、奴の本性を知ってか知らずか…。ま、きっと後者だろうが…)


去っていく天国の後姿を見つめた…








「兄ちゃん!」

「うわぁ!!」



部室に入るとすぐに受けた、横からの突然の衝撃に、もう少しで地面と接触しそうになる



「こらっ!危ないから飛びつくなって言ってるだろうが!!」

「えへへ〜。だって、兄ちゃんの腰って抱きつきたくなっちゃうんだもん♪」



天国の非難をもろともせず、あまつさえ、そのようなことを口走る兎丸に冷たい突き刺さるような視線が集中する



「ガキが何言ってやがる!離れんかい!!」

「・・・(猿野がそう言ってるだろ?いいかげん離れなよ、この黒兎)」

「ちょっと、司馬くん!!(自分が出来なくって羨ましいからって、人の邪魔をしないでくれない?この黒馬如きが図々しいんだよ!)」



司馬が天国の腰に張り付いている兎丸を無言(?)で牽制しながら引き剥がした

兎丸も抵抗するも、力と体格であっさりと負けてしまう



「おぉ、司馬!ありがとなv」



そんな沈黙なる争いを知ってか知らずか、天国は満面の笑みで司馬に微笑んだ

司馬は嬉しそうに首を横に振って答え、兎丸は悔しそうに司馬を睨んだ



「監督になんの用事があったんっすか?今日の放課後の部活出ないって本当っすか??もしかして…」

「あー、聞いてたのか。本当だぜ」



不穏な空気を一掃しようと、子津の天国の質問の内容に寝耳に水だと騒ぎだした



「えー!兄ちゃん、出ないの〜?つまんないよ〜!!」




兎丸のその言葉に一同、うんうんと頷く

特に先輩達が出たほうがいいよ、と必死に説得してみるが、なかな了承しようとしなかった

かえって、回数を重ねるごとに天国の表情が険しくなる



「…俺は、俺は、本当は今日は休みたかったんですよ?それなのに、朝だけでも出ろって言うから渋々来たんです。それなのに、どうして放課後まで出なきゃいけないんですか?」



やけに丁寧な口調で冷たく鋭い彼の視線に圧倒されて何も言えなくなる

こんか彼を見るのは初めてで、戸惑うだけだ



クックック


突然、扉の方向から笑い声がしたので見やると、天国の鬼ダチの沢松がいた



「天国。皆さん、怯えてるぜ?そのぐらいにしておけ」

「…遅い!」

「悪りぃ。ちょっと梅さんに捕まっちまってな。あの人鋭いんだよなぁ〜」

「まぁ、確かに…。あの人は鋭いわな」



沢松の登場で、天国は先ほどまでの冷たい雰囲気を一散させた

一同ホッとする

それなら仕方がないか、と渋々頷いた天国に沢松はだろ?と言ってコートを手渡した

受け取った天国は着替える



「チェリオ君?なぜ帰る準備を…?」

「あー、俺と天国、今日は学校は休むんです。今日は一日予定を空けるって決めてるんで」



牛尾の質問に対して、答えようとした天国を沢松が抑えて自分が答えた



「君もなのかい?」

「えぇ。そういう約束なんで」

「約束?」



尚も問いかけようとする牛尾に天国が苛立った



「沢松!早く帰ろうぜ。せっかくの二人で過ごす時間が減るだろ!!」

「わかってる。先行ってろ」

「…早く追いついてこいよ?」



渋々、部室を先に出て行った天国を見送りながら、彼がいつもなら言わないような大胆な発言に苦笑した

ほんと、俺の命のことも考えて欲しい

まぁ、それはそれで、見せ付けているようで嬉しいし、そんなところも好きなんだよな、なんて考えてしまうあたり俺も重症だろう



「ど、どういうことなのだ?!」



天国のこの爆弾発言に一同は焦ったメンバーが問い詰める

今にも噛みつかんばかりの勢いの彼らに苦笑いした

相変わらず、天国は愛されてるな〜

ま、それは置いておいて、今の問題はこの害虫達だ

今はまさに牽制のチャンス

少々、天国に振り回される彼らを気の毒に思ったが、大切な彼を渡さないためにも釘をさしておかなければならない



「俺たちは、お互いの誕生日は絶対に二人で過ごすって決めてるんですよ。ずっと、この先も、永遠にです」

「じゃぁ、猿野が自分の誕生日に学校を休んだのも…」

「そうです。俺と過ごすためですよ」



分かっていても、事実を聞かされるとショックのようだ

動揺しているのが見て取れる

もう、あと一息

これで駆除は完了する



「何故也?」

「俺はあいつが。あいつは俺が一番大切な人だからです」



決定的な俺の言葉で固まった屍どもを見下ろした

これで当分は平和だろう

にっこりと微笑む



「じゃぁ、俺、帰りますんで。アイツ、貰ってきますね」



そう言って、気分爽快な感じで部室を飛び出した





屍累々の部室のことなんて、もう頭にはなく、既に先に出て行った天国のことを考えた

天国、怒ってるな…

走って追いつかなければ、また何の文句を言われるか分かったもんじゃない



「遅い!」

「天国?!」



だが、天国は予想に反してドアのすぐ外で待機していた

不満そうに口では愚痴を溢しながらも、顔は楽しそうで、可笑しいものを見た後のような感じだ

きっと、先に行くふりをして盗み聞きしていたのだろう



「お前、手加減ないな〜。ありゃぁ、当分立ちなおらねーぞ、みんな」

「当たり前だろ?お前のことだしな。それに、本当のことしか言ってないだろ?」

「まーな」



お互いに顔を見合わし、ニヤリと笑いあい、存分に笑った後は、天国手製のご馳走の待つ、彼の家へと向かった









毎年の恒例行事

一緒にご飯を食べて、ゆったりとした時間をテレビや本を見ながら、他愛もない話をしながら過ごす

ただ、それだけのことだけれども、、これは二人にとっては大切なことだった

まだ出会って間もない頃に、お互いに永遠に守ると誓いあったのだ

どんなに将来、離れていても、この日だけは、自分と天国の誕生日だけは一緒に過ごそうって

それは、最初は親に見捨てられ、孤独に囚われていた天国を救うための約束だった



『天国の誕生日は一日ずっと、一緒に過ごそうよ?』

『…本当?』



それを聞いて、嬉しそうに微笑む天国を見れたのが沢松にとって、何よりも嬉しかった

だから、何があっても、必ず守るって

天国にも、自分にも誓った

そして彼も、自分も、と俺と、彼自身に誓ったのだ



「健ちゃん、誕生日おめでとう」

「ありがとな」



微笑みあって、そして、誓いのキスをした

永遠にこの誓いを守ること

ずっと歳をとってもこうして隣で笑いあっていようって…




「愛してるよ、天国…」











*****あとがき。*****
あう。沢松氏、誕生日おめでとーvv
て、これ、祝ってますかね?最初、ほとんど総受けジャン!と突っ込みいれながら書いてましたιしかも、時間ないため、さわまちゅーのオイシイ部分、大幅カット。って、オイ!!
でも、いい目にあってるからいいでしょ?と自分に必死にフォローしてみたり(死)
でも、少しでも副題「ハンサム様、羨ましいぜ立場変わってくれよ、こんちくしょー!」に近づいたとは…(笑)
あぁ、もっと長くて、素敵エピソードがあったのに〜ιιも、もしかしたら別で書くかもです…。

やっぱり、沢猿コンビは好きです。はう。いいですね。この関係が。
さわまちゅー!ずっと、天国の側にいてやってくれ!!



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