その甘い甘いお菓子は誰の為のもの…?








so sweet













「どれにしようかな…」




その声に部員全員が浮き足立った
原因は猿野天国
野球部員の好意を一身に受けるその人である

彼の手にはチョコレート菓子の作り方の本
そして、明日はバレンタインデー
これは期待せずにはいられなかった

このメンバーの中には毎年女の子に追いかけまわされるという最悪な日であるが、今回は別だ
好きな人から貰えるかもしれないという期待はそんなことを忘れさせると言う威力を持っている




「兄ちゃ〜んv僕はあっまいのがいいなv」

「とりあえず、ビターだ…」

「ヘタレ犬の癖に兄ちゃんから貰おうなんてちょっと図々しいんじゃないの?」

「…ぶっころ」




自分のものだと信じてやまない兎と犬が喧嘩をし始める
だが、そんな二人に見向きもせずに天国の目は本に向けられたまま




「・・・」




司馬にいたっては、揉め合っている二人を尻目に、ちゃっかりと無言で自分の好みをものを指差し訴えていたりする
なかなかの世渡り上手だ…




「あー!司馬君。何一人、抜け駆けしてるのさ!」




司馬のこの行動を目ざとく見つけた兎丸は二人の間を引き裂くように割りいる
犬飼もこれに倣った
耳元で言い合う(一部は無言で喧嘩を売っているが…)三人に天国は顔を上げた




「あー、お前らウザイ。どっか行けv」




ようやく関心を向けてくれたと思ったら、にっこりと笑顔でウザイと言われてショックを受ける
そんな思い雰囲気を感じて、他称、気遣いの人、子津が天国に近寄り話しかけた




「これ、なんか美味しそうっすよね…」

「あー、これかぁ。うん。いいよなぁ…。これにしようかな…。ありがとな、流石、子津っちゅー!」

「いえ。意見言っただけですし…。猿野君が作るっすか?作れるなんて凄いっすね〜」

「そうか?結構簡単だぜ?本通りに作るだけだしな」

「十分凄いっすよ!」

「…なんか、照れるな。よし、特別に子津っちゅーには味見させてやるなv」

「わぁ。嬉しいっすv」




その言葉と共に子津を悪寒が襲った
嫉妬に満ちた視線のせいだろう
コレが固まるまでに至らなかったのは、本命が子津ではない
ただ、それだけのお蔭である
味見、そう天国が言ったからだ




「それは誰にあげるっちゃ?」




最大の疑問を猪里が投げかけた
みんなの視線は天国に集中し、ごくりと息を飲む




「そんなの、大切な人に決まってるじゃないですか…///」




聞かないでくださいよ!と照れながら言う天国にダメージを食らう
天国にここまで思われる人物は誰なのか…
誰しもの心に、「自分ではなかったらそいつを虐めてやる!」という気持ちが浮かんだ





「チェリオ君。僕はいつでもOKだからね!」

「…は?」




僕以外には在りえないだろう?と自信満々に天国にいいよる牛尾に冷たい視線が突き刺さるも、流石はキャプ
ものともしない
だが、帰ってきたのは冷たい返事だった




「なんで、俺がキャプにチョコをあげなきゃならないんです?沢山の女子から貰うでしょうが。飢えてるわけじゃあるまいし…」




凍りつく牛尾をみんなは嘲笑した
ライバルがまた一人減ったのだ
気分が晴れ晴れしいことこの上ない
だが、問題は残ったままだ
いったい、誰が彼のチョコレートと受け取るのだろうか…?




「天国ー。帰るぞー」

「あ、悪い。今着替えるから待ってろ」




丁度その時、彼の鬼ダチである沢松が訪ねてきた




「まだ考えてたのか?どれでもいいだろうが…」

「なんだと?そんなこと言ってるとチョコやらねーからな!」

「おい、毎年楽しみにしてるんだから、それは勘弁だって。俺が悪かった、な?」

「…本当にそう思ってるなら、許す」

「思ってる、思ってる!!」



そう言ってやっと着替え始めた天国に沢松は苦笑した
が、ほっとしたのもつかの間




「猿野。沢松を借りるのだ!」

「え?な、なにするんですか?!」




鹿目がもの凄い勢いで沢松を連れ去って行き、みんなもそれに同行して去っていった




「あま〜く〜に〜!!」




遠くから沢松の助けを求める叫び声が聞こえたが、結局助け出されることはなかった
空っぽの部室に一人残された天国の口元には笑みが浮かんでいた…








みんなが消えて少し立った後、天国は連れて行かれた沢松を待ちながら先ほどの本を見やった
その顔にはシルバーフレームの眼鏡
どうやら本当に悩んでいるらしい
彼が眼鏡をかけるのは集中したい時なのだ

トントン

誰かが部室のドアをたたく音がした
手元に広げられたお菓子作りの本から目線をそちらに向けると、入ってきたのは猫湖檜だった
慌てて本を隠す




「天国…?」




その行動と珍しく眼鏡をかけている天国を不審そうに見やった
なんでもない、と笑顔で誤魔化す




「檜、どうしたんだ?キャプに連絡か…?」

「違う…かも…」

「じゃぁ、なんだ…?」




恥ずかしそうにぎゅと猫神さまを抱きしめる檜の姿に天国は目を細めた
檜のこういうところが可愛らしいのだ




「今日の仕事は終わったのか…?」

「終わった…かも…」

「なら、一緒に帰らないか?」

「沢松君は…?」

「あー。あいつは当分帰ってきそうにないからな…。それに、檜とはなかなか帰れないだろ?」

「…嬉しいかも///」




恥ずかしそうに、嬉しそうに、微笑む檜に天国はますます笑顔を深めた








他愛もない話をしながら、夕暮れの道を二人で歩く
天国は普段見せないような穏やかな表情で、猫湖も、いつになく嬉しそうに微笑んでいる
お互い、こんな表情を見せるのはこの二人を除いて沢松ぐらいである
猫湖も、天国の絶大なる信頼を寄せる沢松を信頼しているのだ




「あのね…。明日も、一緒に帰って欲しいかも…」

「いいぜ。沢松は無理だろうけど、いいか?」




うん、と了承を貰えて嬉しそうに微笑む檜に思わず頭を撫でた
ふわふわっとした感触がたまらなくいい




「撫ですぎかも///」

「このふわふわな感じが好きなんだよなーv」




いっそう顔を赤くする檜に天国は楽しそうに笑った










14日
バンレタインデー当日
野球部の動物の名前の付く男どもは、自分を追い掛け回す女子から逃げ回っていた
この騒ぎのため、部活は中止となり、みんなは我先にと率先して天国と帰ろうとしたがったが、天国ににっこりと、もう約束があると断られショックを受ける
このバレンタインデーは追い掛け回され、疲れただけである
さらに沢松への殺意が募る
とりあえず、この怒りは収まらない




「沢松君。ちょっといいかな…?」

「え、あ、ちょっと…!!」




キャプを筆頭に囲まれ、笑顔で肩をつかまれた沢松はどこかへ引きずられていった
唯一、味見としてチョコを貰った子津もその犠牲に入る…
沢松は引きつった表情で訴えるも、そんな沢松に天国は手を振って別れを告げたのだった




「助けやがれー!!」




彼の叫び声は空しく響き渡ったのだった











「待たせたな。行こうか」




沢松を見送った後に、ひっそりと見つからないように檜との待ち合わせ場所に行った
あまり、自分達の関係を周りに知られるのは得策ではない
大切な相手にはなるべく被害を受けて欲しくないのだ
なら、沢松はいいのか?という疑問になるのだが、「男だから。」そんな理由で片付けられた
とりあえずは、彼女を守る方が優先、そう判断した
その為にいろいろと小細工をしたのだ




「あの、ね。これ…」

「俺にか…?」

「美味しくないかも…」




渡されたのは綺麗にラッピングされたチョコレート
やはり大切な人から貰えるのは嬉しい
自信なさそうな檜の目の前で食べてみせる




「美味しいぜ?」

「本当…?」

「あぁ」




檜は自分の言葉に安堵の笑みを浮かべた
今度は自分の番




「Happy St. Valentine's Day!!」




手渡したのは、甘い甘い、トリュフ
昨日の晩に作ったものだ
檜は嬉しそうに受け取ってくれた
作ったかいがあるというものだ
同じように口に運ぶ




「ずるいかも…」

「え?不味かったか?」

「…天国のが美味しいかも」




ちょっと拗ねたかのように見上げる檜に苦笑した
こんなところも非常に可愛い




「俺は、檜からのチョコの方が美味しかったぜ?ほら…」




一気に照れる彼女に、彼女のチョコを口に運んだ




「…甘いかも」





甘い甘いチョコレート
それは




「私の想いの甘さかも…」




大切な人へのチョコレートなのです












******あとがき。**********
…今日和。すみません。バレンタインデーに間に合いませんでした…(泣)データー消えて書き直してたんですよ。はう。シクシク…(;_;)

今回は…猿総受けの猫猿つーか猿猫?気持ち的には猫猿なんですけどね…ι
チョコを取り合う皆様と実は美味しい沢松氏と可愛がられてる猫さん。まぁ、自分への課題はクリアできたと…。
でも、さわまちゅが哀れ…。本当はもっとカッコイイ感じな登場だったのにね。書き直したらこんな酷い目にしかあってない(笑)ま、そんな彼も好きですがv
なぜ、いつもさりげなーい眼鏡猿なんでしょう?もっと頭のよさを強調しなくては!!今回はただの策士って感じなだけじゃん。つか、その時も眼鏡してないしι本読んでた時だけだ…(死)

天国の手作りチョコがほしー!!あ、檜ちゃんのもほしーvv



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