それはきっと一生忘れることのできない歌声

私だけの特別な歌…











Special Song
















目覚ましが鳴り響くと檜はベッドから飛び起きた
少しも眠くなんかなくて、寧ろ目は冴えてるぐらい
窓まで駆け寄り、カーテンを開け、窓を開けた
空は真っ青
まさに晴天という言葉がピッタリな日で、梅雨であるこの時期には珍しいぐらいのよい天気に嬉しくなった


もちろん、この天候も気持ちよくって嬉しい
けれど、なによりも、今日は久しぶりに部活が休みだということが嬉しかった
天国がどうやら監督に頼んで(脅して?)無理矢理休みにさせたらしい
野球は結構楽しいとか言って練習には熱心に参加していたのに、どうしたんだろうと思って聞いてみると、
彼曰く、「たまの日曜ぐらい休みでもいいだろ?久しぶりに遊ぼうぜ?」とか言って
でも、そんな言葉に違和感を感じて不思議に思った
やるからには完璧に!なんていう天国の言葉だとは思えなかったのだ
もちろん、天国と遊べるのは嬉しいのだけど
違和感は拭いきれなかった


…真相は意外なものだった
不思議そうにしている私に気づいた沢松君が後でこっそりと「檜ちゃんの誕生日、近いんだろ?」って愉快そうに教えてくれた
だから、休日をまる一日休みにしてもらったんじゃないのか?とも
天国が私の誕生日を一緒に祝ってくれようとしてる事が嬉しかった
正確には明日なんだけど、学校じゃ関係を隠してるから一緒にいられないし、帰ってからだと次の日のこととかもあるから、あまり遅くまで一緒にいられないからの行動で
彼のそんなトコがやっぱり大好きだなって、そう思った


買ってもらったばかりのお気に入りの服に着替えて、鏡の前で念入りにチェックする
付き合ってるわけじゃないけど、それでも、天国は自分の事を大切な存在だと言ってくれる
だから、少しでも隣にいれるように、遜色のない姿でいたくって
何度もチェックしたらもうすぐ約束の時間になっちゃって、慌てて猫神さまを抱えて、天国の住むマンションへと向かった







チャイムを鳴らし、扉が開くまでの時間、いつもドキドキする
ガチャリと音を立てて開く扉に身を硬くした


「檜?よく来たな。入って」


でも、天国にあった瞬間、緊張が解けた
向けられた笑顔が優しくって
暖かくって


「…おじゃまします…かも…」


ココ最近の忙しさの為に久しぶりに入った彼の家を見渡した
相変わらず綺麗に整頓されていて
というか、余計な物が一切ないシンプルな家
相変わらず、外の世界での彼とのギャップがありすぎて面白い


「んと、リビングででも待ってて。もうちょっとでできるから。あ、飲み物入れるな」
「わかったかも…」


今の天国の格好はエプロンに眼鏡を掛けた姿
きっと、なにか作っているのだろう
…やっぱり、眼鏡をしている時の姿はカッコイイいかも…、なんて思いつつ、モノトーンを基調としたリビングのソファーに腰を下ろす
いつも、私と猫神さまが座る場所
私用にって、天国が買ってくれたピンク色のクッションが置いてあって
其処だけがカラフル
なんだか特別が感じられて嬉しくって、思わず笑った


「どうかしたのか?」


そんな私の様子に不思議そうにしながら天国は入ってきた
なんでもない、そう言うと、そっかと追求せずにお茶を注いだ
恥ずかしい事を思っていただけに、追求されなくってよかったと胸を撫で下ろす


「今日はダージリンな。いい葉っぱ手に入ったんだ」


そう言って、手馴れた手つきで入れた紅茶から仄かに漂うダージリンの香りに頬が緩んだ
最高のセカンドフラッシュらしい
彼の入れた紅茶はとても美味しいのだ
今まで、そこまで違いなんて感じていなかったけど、彼の入れた紅茶を飲んだ時、その認識を改めたぐらい


「…美味しい」
「だろ?」


あんまり嬉しそうに微笑むから、つられて微笑んで
向けられた優しいその笑顔は、きっと、私と沢松君しか見れないもので
優越感をちょっと感じてみたり
きっと、今、この光景をあのやっかいな人達に見られたらどれだけショックをうけるだろう、なんて考えた
もちろん、そんなバレることなんて恐ろしいというか面倒で考えたくもないけれど


チーン


オーブンが鳴る音と甘い香りがキッチンの方から漂ってきて


「お、焼けたな♪」


立ち上がって、一度姿を消した彼がしばらくして、抱えていきたのは大きなケーキで
思わず、目を見張った


「…すごい、かも…」
「だろ?この前、美味しい店見つけてさ、焼いてみた」
「…見つけて、焼いてみた?」
「あぁ。食べてみて、なんとなくで作ってみたら出来た。あ、試作はばっちりしたから味は保障するぜ?」


もう、言葉が出なかった
前々から凄い人だとは分かっていたけど、まさか、ここまでとは…

プロが作ったものと見間違えるほど綺麗で、美味しそうなオペラにため息が出た
チョコレートが輝いて見える
なんだか、女の子として、ここまで好きな人が料理が上手いと負けたような気がしてちょっと悔しい

ロウソクを立てるのがもったいなかったけど、誕生日はやっぱコレだろ?っていうことで、歳の数だけ立てて
カーテンを閉め、火をつけ、部屋の灯りを消して
ロウソクの仄かな明かりだけが部屋を照らす


「綺麗、かも…」


おきまりの歌を一緒に歌って、ふーって息を吹きかけて消した


「檜、一日はやいけど、誕生日おめでとう」


こうやって二人で祝ってもらえるのも嬉しいけど、なにより、彼からのこの言葉が嬉しかった







お腹一杯ケーキを食べて、…ちなみに、ひじょーに美味しかった、リビングで二人でまったりと過ごした
天国の横にちょこんと座って、そうしたら、天国がいつもみたいに私に軽くもたれてきた
なんだか、可愛い
普段の学校での天国とも、夜に出歩く時の天国とも違って
私には心を開いてくれているんだな、そう思える
嬉しい


「檜の方がお姉さんなんだよな。信じられねぇ。こんなに小さいのに」
「…失礼かも」


前言撤回
やっぱり、ちょっと可愛くないかも
…綺麗で、かっこよくはあるけど


「ごめん、って。だってさ、檜は可愛いから」
「…天国は口が上手すぎるかも…」


その言葉に少々機嫌を直すものも、妹みたいに思われてそうな気がして
ちょっと悲しくなった






お互いに、多くは語らずに、楽しかったこと、面白かったこと、悲しかったことを淡々と話し合った
それに時々、合いの手をはさんで
のんびりと二人で時間を過ごして
天国が私の髪を撫でたりして
どうやら、天国は私の髪を触るのが好きらしい
梳いたり、編んだり
時々、これまた芸術的な作品になったりして
そっと、壊れ物を扱うかのように軽く触れていく彼の手が気持ちよくって
そんな時間が続くと思わずうとうとしてしまう
思わずこっくりと寝てしまいそうで、必死に眠るまいとする私に天国は微笑んだ

聞こえてくるのは、時折吹く風がカーテンを揺らす音
そして、どこか遠くから聞こえてくる子供達のはしゃぐ声

こんな時間が永遠に続けばよいのに、そう心から思った







でも、そんな時間は長くは続かなくって、夜になってしまったから帰ることになった
天国と、今日は用事があるとかで出かけていた沢松君との二人から沢山の誕生日プレゼントをまた貰って
一緒に、夜の道を並んで、家まで送り届けてもらった


一緒にいる時間が楽しいだけに、別れた後が寂しかった







時計の針はまもなく24時を指し示す
猫神さまと、二人で仲良くベッドに寝転がりながら時計の針を見つめた
本当は、いつもなら部活があって朝が早いから、もっと早くに寝るんだけど
でも、今日は特別で
毎年の恒例行事

24時を指した


「おめでとう、かも…」


一緒に歳を取ったのを見守って、寝ようとした
その時、部屋にメロディが流れた
これは携帯の着信の音で
天国の曲
慌てて、電話を取った


「遅くに、悪ぃ。寝てた…?」
「…起きてたかも」
「良かった…」


なんだろう、そう思っていたら、彼が突然、歌いだした
囁くような、それでいて切なくなるほど透き通った甘い歌声
確か、一昔前に流行したバースディソングだ
それが、今、私のだめだけに歌われいる
胸の奥にまでこの歌が染み渡るようだった


「おめでとう、檜」
「…ありがとう」


やっぱり、本当の誕生日も祝いたかったから。一番にな、ってそんな風にいう彼に、涙が止め処もなく溢れた
止めを刺されたって感じがする

プレゼントとか、ケーキとか、お祝いの言葉とか
どれも本当に嬉しかったけれど
なによりも、この気持ちが嬉しくって

電話越しに泣く私の様子に、天国は喜んでもらえて嬉しいような、それでいて、どこか困ったような感じだった

大好き
そんな言葉しか私には浮かばなかった
今は、まだ、大切な人
それだけかもしれないけれど
貴方の隣に永遠に立っていられるような、そんな存在になりたい







特別な歌

一年に一度だけの

君だけの

君のためへの

忘れることのできない歌を贈ろう

Special Song

この歌声よ君に届け…













****あとがき。****
はい。檜ちゃんの誕生日小説ですvえ、大分前に済んだって?あはん♪(殴)あう。ご、ごめんなさ〜い〜。だってテストで死んでたんだよー。愛だけはあるんだけど、手が、頭が、才能が追いつかないんだよ、それにさ(泣)
檜ちゃんの一人称、意外と大変でした。最初の相手がいない辺りにどれほどこの小説を一から書き直そうと思ったか…。マジで読み直すだけで「あ、この辺りまで変」って一発でわかります。時代の差も感じます(笑)
まぁ、それはおいといて(オイ)。つか、、私、歌ネタ多すぎだ(笑)毎回にたよーな表現つかってるなぁとやっと気づきました。でも、好きなんですねー。まだ、頭の中に歌ネタが一つあります(笑)いつか書きます!

今度はまた、一部で好評だった黒い?猫さんを書きたいデス(笑)では、檜ちゃん、遅くなったけど、オメデトウv



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