なぁ、誰よりも最初にその言葉を聞きたいんだ
お前からの言葉を…








first










今日は俺の誕生日
一年で一度だけの特別な日
この日だけは、早起きの為に重たい瞼さえも、いつもとは違ってぱっちりだ
急いで着替えて、朝食を掻き込んで慌てて家を出る
時間はまだ余裕があるけれど、嬉しい時間はたっぷり欲しいから



「お、やっぱこの日だけは早いな」
「うるせーよ!」



玄関の扉を開けると、沢松の姿があった
さすが鬼ダチ
行動パターンを把握してるらしい
だが、ニヤニヤと笑いかける沢松は不愉快の何物でもなくて、おでこにデコピンをくれてやった
痛いと額を押さえながらも、奴の表情は笑っている
反省してないな、こいつ…



「そうだ、言い忘れてた」



2度目の攻撃を加えてやろうとすると、慌てて話を振ってきた
まぁ、折角の誕生日だ
この猿野様の寛容な心をもって許してやろう
うん



「た「あーーー!!!」」
「なんだよ、急に。なんか忘れ物でもしたのか?」
「あー、あのな、沢松、その言葉は後で聞くわ」
「…もしかして。プッ。乙女だなぁ、お前」
「うるせー!いいだろうが、別に」



確かに、自分でもこの行動には恥ずかしくなる
きっと俺の顔は真っ赤だろう
トマトもビックリだ



「ま、いいけどな。なんか、変だと思ったらやっぱりか…」
「何がだ?」
「まぁ、それは置いておいてだ。実はな、プレゼントなんだけど、写真って金かかるんだよな〜」
「…つまりはだ、ない、といいたいんだな?家畜よ」
「誰が家畜だ!…まぁ、なくはないぜ…?」
「は?どういう意味だ??」
「まぁ、お楽しみってことで」



非常に愉快そうにニヤニヤと笑う沢松に裏を感じる
が、まぁ、深く考えるのは止めだ、止め
なんとかなるだろう
俺の人生いつもそんなもんだ

そんな事を考えながら、ふと、空を見上げれば一面の青空
この澄んだ青がまるで、アイツみたいで
心が穏やかな気分になって
「好きなだなー」
なんて、つい、ひとり言がでちまった
隣の沢松は、またか、みたいな呆れた表情をしている
まぁ、自分が沢松の立場だったらそうだろうな、と思う



「お前もなー、まさか、あぁいうのと付き合うとは…」
「いいだろうが、俺が誰を好きになったって!」



アイツに出会って
それだけでこんなにも幸せで
穏やかな気持ちになれた
毎日が楽しくてしかたがなくて



「ばーか、いまさら止めやしねーよ。珍しく幸せそうだもんなー、お前。…早く会いにいけよ」
「え?」
「早めに学校に来て、一人で部室で待ってるように言っておいた。早く行けよ。待ってるぜ?」
「…おう!ありがとな」



背中を押されて、あいつの元へ走り出した










勢いよく部室の扉を開けた
そこには大好きな彼の姿があって



「司馬!!待った??」
「…猿、野?」



司馬の顔は驚いた表情で、どうして俺が来たのか分かってないようで
沢松のやつがどう言ってここに司馬を呼び出したのか気になった



「沢松から何にも聞いてないのか?」



困惑した表情でこくりと頷いた
ため息を一つ溢す
ったく、一言ぐらい言ってないなら言ってないって教えてくれりゃーいいのに
そんなことを思ってたらポケットから「ド○えもん」の着メロで
あいつからのメールを示していた
開くと『プレゼントだ』って
あいつらしい方法に笑みが毀れる
すると再度、音楽が鳴り響いた
不思議に思いつつも開けると『追伸。誕生日ぐらい教えといてやれ。あ、俺からは何も言ってないから、自分で伝えろよ?』とあって



「あっ…」
「…?」



そこで初めて自分の失敗に気づいた
血の気が一気に引くような感じがして、思わずしゃがみこむ
俺、司馬に今日が誕生日だって言ってねぇ…
致命的で初歩的なミス

なでなで…



「司馬…?あぁ、俺が落ち込んでるようだからって?ありがとな」



にこりと微笑むその笑顔に癒される
大好き
そんな気持ちでいっぱいで



「司馬のこと、大好きだ」
「…俺も、猿野のこと、大好きだよ」



照れくさそうに笑う司馬に、自分も同じように笑った


「…あのな、司馬がプレゼントなんだって、沢松が」
「???」



俺の言葉の意味が分からず、オロオロとしてる姿が可愛くって、思わず微笑んだ
野球してる時もかっこよくって好きだけど、こんな姿も可愛くって大好きだ



「だから、オメデトって言って?」
「…えっ」
「一番最初は、絶対に司馬からだって決めてたんだ」



でも、司馬からは何にも反応がなくって
不安で



「司馬…?」
「…もしかして、誕生日だった、の?」
「…う、うん」



ちょっと怒りを感じ取れるような低い声音に驚愕した
怒ったのかな…?
こんな司馬は初めてで、今度は自分がオロオロする番だった



「どうして、教えてくれなかったの?」
「わ、忘れてたんだ。司馬、お、怒ってるのか…?」



頷く彼の様子に泣きそうになる
誰よりも、好きだから…
嫌われたくない


「違う、よ…。自分自身に」
「…えっ?」
「猿野のこと、好きなのに、知らなかった自分に腹がたって…」
「でも、俺が言うの忘れてたんだし!司馬は全然悪くないぜ?!」
「…うん。でも、ごめんね。沢松君がいなきゃ、他人から知らされるところだった。だから、猿野の口から聞けて、嬉しい…」
「司馬…」



そんな風に言ってもらえるなんて思っていなくて
胸がジーンとする
嬉しくって思わず抱きついた
そんな俺に司馬は動揺して
でも、恐る恐る、でも、ぎゅっと抱きしめてくれた



「プレゼント、用意しなくっちゃ、だね…」
「え、いいよ!いらない!!」
「でも…」
「お祝いの言葉だけでいいんだ。俺は、それが一番嬉しい。司馬から、誰よりも大好きな司馬から、最初に聞きたいんだ。幸せだって、そう感じるから…」



司馬の腕の力が強まったのを感じた
その温もりがたまらなく愛しい



「…HAPPY BIRTHDAY AMAKUNI」
「ありがとう…」



耳元で囁かれた今年最初の誕生日のお祝いの言葉
今までの中で一番最高のお祝いの言葉だ



「俺の時も、一番最初に、言ってね…?」
「おう!司馬も、次は本当の最初だぜ?沢松に言われそうになったんだから」
「う、うん。が、頑張る!でも…」
「でも…?」
「次じゃなくて、ずっと、だよ…?」
「…約束だぜ?」





君へのお祝いの言葉を

誰よりも早く君に届けよう

この気持ちを添えて

それは、なによりも素敵なプレゼント…













***あとがき。***
天国、誕生日おめでとーーvvvはう。なんとか間に合いましたι馬猿+沢の天国の誕生日お祝いな内容ですv
え、沢の出番が多いって?あははーι沢とのからみを書いてる時点でCPが決まっていなかったので(死)にしても、珍しく、というか、初めて天国が普通です。いや、ちょっと乙女入ってますけど(笑)沢とのからみもふつーの鬼ダチみたいな感じだったし。いつもなら、もっと沢猿要素強いもんね。ちょっと、普通猿が書けた自分に感動してます!やればできるじゃん!!馬さんも、可愛い感じで、殆ど話させないぞ!と意気込んでたら、やっぱり話さないと話が進まないことが発覚(泣)開き直ってやりましたヨ!!
あぁ、天国には、誰よりも幸せに笑っていて欲しいデス。その割には、結構、不幸な生い立ちにしたがるけどね(笑)おめでとね、天国v








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