その、与えられる愛情に眩暈を感じた…

幸せと戸惑いの












dizziness
















家庭環境は、一言で言えば最悪

暴力しか取り柄が無いような父親

そして、ヒステリックな母親

見目だけはいい父親は浮気性で、いつも家にいない

そんな父親が帰らないのを自分のせいだと母親からも暴力を受けた

家に帰るのが怖くって沢松の家に入り浸っていた

おじさん、おばさんは優しくって、俺まで自分の子供のように扱ってくれた

そこはひと時の幸せの時間だった

家にいれば脅えるばかりの日々

親なんで見切りをつけて早々に出て行った今もその過去は俺を縛り続けた

悪夢が思い出した頃に訪れる

まるで、

『お前なんかが幸せになんてなれるわけないだろ?』

そう、あの両親が言っているかのように












ハァハァハァ…

悪夢に飛び起きた

体を冷や汗がつたう




「天国、大丈夫か…?」




天国は沢松と授業をサボり、屋上でのんびり昼寝をしていた

いつものように沢松の膝にもたれながら

ここが一番落ち着いて寝れる場所なのだ

幼い頃に脅えてなかなか寝付けない俺を、あやすように寝かせたのが習慣になってる

悪夢が訪れないように願いながら、そっと目を閉じる

だが、そこでみた夢はあの悪夢で

沢松は突然起き上がり、顔色が悪い自分を心配そうに見る





「大丈夫…。なんでもない。」





心配なんてかけたくなくって微笑み返した

なぁ、俺は今、上手に笑えてるか?

いつのように上手く偽れてる?





「ばか。なんでもないわけないだろ?そんな辛そうな顔して、俺にまで無理に笑うなよ」

「ゴメン…」

「気にするな。俺とお前の仲だろ…?」





コツンと沢松は拳で軽く天国の頭を叩いた

その行動がひどく嬉しい





「あの夢を見た…」

「天国…」

「親父が俺を殴り、俺は血だらけで、母親はそれをみて笑ってた…」

「天国…。もういい…」





沢松が優しく包み込むように俺を抱きしめた

暖かい





「やっぱり、俺、幸せになれないのかな…?」

「大丈夫だ。俺がいる。お前の側には、俺がいてやる。絶対に、絶対に、お前の幸せは俺が守ってやるから…」

「うん…。ありがと、健ちゃん…」






ゆっくりと俺の心に伝わるように沢松は囁いた

一滴の涙が俺の頬を伝う

乾いていた俺の心が、愛情で潤うのがわかった

沢松は俺に愛を与えてくれる

無償の愛

でも、俺は沢松に与えられるものなど何も持ってはいない

こんな駄目な俺をいつも見捨てずに優しくて

仮面を被って、どうしても駄目になった時は、生きてるって確かめたくって手首を切る俺を

そんな俺を、いつも自分のことの様に嘆いて、悲しんで、見守って、愛しんでくれる

その温もりが残酷なほどに暖かい

時々、泣きたくなるほどに



お前がいるから俺は生きていけて

お前の側だから俺は笑っていられるんだ

もう、きっと、お前なしでは俺は生きていけないんだろう





「優しくするなよ…。俺には何もお前にしてやれることはないんだ」

「俺が、お前にしてやりたいからしてるんだよ。」

「…お前は俺に優しすぎる!自分のことももっと考えろ!!」

「考えてるぜ?だから、お前には甘いんだろうが。お前の幸せは俺の幸せだからな」

「…馬鹿野郎が」





惜しみない愛情をくれる沢松に再度泣きそうになる

俺だって同じだ

沢松に幸せでいて欲しい





「俺が、俺が重荷になったらいつでも見捨てていいからな…?」

「そんな日、一生こねーよ」

「なら…





なら、

どこまでもつらいこの先、もし、俺が壊れたら殺して…?

偽ることに疲れた自分を

誰でもなく、お前の手で終わりたいと願う





「いくらお前のお願いでも、それは聞けねぇよ。聞きたくない」

「沢松…」

「天国、俺に何もしてやれないっていったな?なら、俺のために生きろよ。どんなに辛くても、人生を止めたくなっても、例え、壊れても…。側に、ずっと側にいてやるから…。お前の側にいれること、それが俺の幸せだ」

「…うん」





その願いにくらくらと眩暈がした

それは人生を早く終わってしまいたかった俺にとっては辛いことではあるけれど

嬉しい





「生きるよ…」









ずっと、側にいさせて

悪夢を一生見ないように

乾いた心に愛情と言う名の雨を降らせ

温もりという名の暖かい光を降り注ぎ

幸せという名の花を咲かせて

そして、いつかは眩暈がするほどの多くの花を咲き乱らせてください





ずっと俺が、お前の隣で無理なく笑っていられるように…












****あとがき。*****
大好きな鬼束ちひろ様の「眩暈」をイメージ。
闇猿ですね。ほんのり(?)なぜに2周年祝いの小説が暗いんだよι病猿小説を諦めたのに!!
救いがあるせつないはなしは大好きです。初段階のリスカーを前面に押し出した文より天国が救われていて嬉しいです。
そして、沢松氏。自分で書いておいてなんなんですけど、カッコイイよ!!素敵だ!!!天国には劣りますが(笑)
こんな素敵なさわまちゅーに乾杯です☆(笑)

では、こんな暗い文ですが(ほんとになι)皆様に気に入っていただければ幸いです

みなみ朱木。03.3.8「月華の庭」







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送