そんな彼を見たことは無かった・・・




Cat and Dog








無事に試験も終わり、監督もたまには休みが欲しいだろうということで今日は休み

自分には野球以外に大した趣味もなく、辰を誘って外に出掛けた







二人で町を当ても無く歩いていた

本当は人ごみが嫌いなのだが、気分転換には町が一番なのだ

気がまぎれるから

本屋の近くに来た時、辰が「ちょっと用があるから待っててください」と入っていったので、外でぶらぶらと待つことにした

自分はあまり本に興味はない



(というか、とりあえず、絵本の前に立つのはハズいし・・・)





「あんまり慌てすぎて転ぶなよ?」





その時、見知った声を聞いたような気がして、反射的にその声がした方へ振り返った

すると、そこには奴がいた

茶色い癖がかった髪に、茶色い意志の強そうな瞳が印象的な『猿野天国』が

携帯で誰かと話しているようだった

どうやら、待ち合わせでもしていて、相手が遅刻を謝っているらしい

思わず、奴に気づかれないよう死角に隠れた

別に悪いことをしたわけでもないのだから、隠れる必要もないのだが、なぜか、体がそう動いたのだ







猿野はいつもと違った印象がして少し戸惑った



(眼鏡、のせい、か・・・?)



シルバーフレームの眼鏡はとても奴に似合っていた

何度か、ふざけている時にかけているのは見たことあるが、普段かけているのは初めてだ

けれど、やはりそれだけではないような気がした

なんというか、雰囲気自体、違うのだ

落ち着いた、大人びた雰囲気を纏っている

猿野から目が離せなかった

それは周囲も同じらしく、奴をぼーっと見つめていた





「おはよ」





待ち合わせの相手がやっと来たのだろう

猿野の相手に向けたその微笑にハッとした

それは、いつものような、人をバカにしたような微笑みでもなく、悪巧みをしている時のような微笑みでもなかった

優しい微笑みで

きっと普段の彼は作られた人格なんだろうと思った

いや、わかったというべきか・・・





「つまり、ずっと騙してたって訳か・・・」





そう思うと、酷くムカついた

その笑顔が向けられている相手にも

別に、奴が自分や周りを騙していようと、どうでもいいはずなのに

誰に笑いかけいようが関係ないのに

だが、どうしてだかわからなかった・・・

そんなもやもやとした気持ちのまま、奴の待ち合わせ相手が気になって目をやった



(どうせ、奴の鬼ダチだとかいう沢松だろうがな・・・)





「・・・ごめんなさい。天国、怒ってる・・・?」

「いや?ちょっと、この視線はウザイけどな。別に怒ってないぜ?」

「・・・よかったかも」

「俺が檜に怒るわけないだろ?」

「・・・・・///」





思わず、目を見張った



(冗談だろ・・・?)



待ち合わせの相手は沢松ではなく、『猫湖檜』だった

マネージャーの一人で、内気そうなのもあってか、ろくに口を利いたこともない奴だ

もちろん、自分の女嫌いのせいもあるが・・・

ともかく、一度も猿野も彼女もお互いに仲がいい素振りを見せたことがなかっただけに驚きが大きかった

確かに選手とマネージャーであり、よくマネージャー達の仕事を手伝っている奴の事だから、仲が悪いという事はないだろう

けれど、どうみてもこれはその程度の仲ではない

それに、奴がマネージャーの鳥居が好きだと言うことは有名で、野球を始めたきっかけもそいつだと聞いている

猫湖に乗り換えたにしても、昨日まではいつもと変わらずアプローチしていたはずだ

それで奴と喧嘩したのだから

いくらなんでもそれは身代わりが早すぎる



(違うな・・・。奴はそういう性格じゃないだろう・・・)



もう一度彼女に目をやった

時折見られる彼女とは違い、終始、彼女からははにかんだような微笑みが絶えない

口数も普段と比べれれば多いような気がした

気がするだけ、だが



(そういう訳か・・・)



全てがわかったような気がした

きっと、あの二人はお互い、本来の姿を知っていて、その上での仲なんだろう

全てを拒絶した中での、貴重な、一握りの大切なモノなのだ

好きな人、そんなものではなくて、大切な人という存在

だからこそ、壊さないように・・・







視線を感じて思考回路を元に戻した

いつものようなウザい視線ではなく、どちらかというと冷たいもので気になったのだ

視線の持ち主を探すとそれは猫湖だった

俺がここにいることに気づいたのだ

そして、俺が『隠しごと』に気づいたことを悟ったのだろう

横の猿野はそのことに気づいていないようだった



(気づけよ、バカ猿・・・)



そのことに落胆している自分がいて驚いた

そんな俺の気持ちに気づいたのだろうか、そんな俺を見て彼女は笑った





「・・・檜?どうかしたのか?」

「ううん。なんでもないかも・・・」

「なら、いいけど・・・。変な奴」





笑いながら檜の頭を撫でた猿野のその行動にムッとした

拳に思わず力が入る

そんな説明のつかない気持ちに戸惑いを覚えた



(この気持ちはなんだ・・・?)



それに、頭からは奴のことが離れなくてドキドキと鼓動が早くなる

この現象を説明できる言葉なんて、一つしかない



(マジ、かよ・・・。ウソだろ・・・?)



奴が好き、だなんて

でも、自覚したと同時に納得した

自分らしくなく、奴の言葉にいちいち反応して喧嘩していた訳を



(まるで、好きな奴を虐める小学生のガキみたいだ・・・)



自分にそんな行動に恥ずかしくなった







駅に向かう二人を羨ましく見つめた

とりあえずはこの関係を崩さなくてはならない

本来の奴を知っている彼女の方が一歩リードしているのだから

今、気づいたばかりの俺には不利

ましてや、敵は強力な上、不特定多数の邪魔者もいる

でも、一番の問題は自称、奴の保護者の沢松と猫湖

とりあえずは今日はこのまま見逃すことにする

まずは明日から・・・





「ハードな日の始まりだな・・・」




過酷な運命が俺を待っている・・・






***あとがき。***
こんにちわ。猫猿で猫と犬のバトル話がなぜかこんな話になってしまいましたι(違)
題の意味は「犬猿の仲」の英語バージョンだったりします。だから、天国と犬に喧嘩ではなく、猫と犬の水面下の戦い をえがきたかったのに、ただの犬の恋の自覚話になったよ(泣)
なんとなく、「doting to her」の続きだったり。天国と檜はこれから動物園なのですよ。わからね〜(笑)
にしても、犬、話さないから書きにくかったわ。当分書くことはないだろうなぁ・・・。さようなら(笑)




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