その青い、青い花びらにキスをした…










Blue Heaven














12月24日、晴れ

誕生日にしてクリスマスイヴであるこの日の始まりとしては悪くない天気

だが、変わらずある部活の為に葵の朝は早い

と言っても、今は冬休みの為、学校がある時よりも遅く始まるので助かる





ピンポーン





葵は玄関のチャイムの音に首を傾げた

両親は忙しい身で、今も海外に出張中である

だから、こんな朝早くに尋ねてくる人の当てはないのだ

(誰…?)






玄関のドアを開けると、目の前には花を持った女の人がいた



「司馬、葵さん、ですか…?」



彼女の付けているエプロンには【花屋そら】の文字

(なぜ花屋が…?)

そう思いながらも肯定すると、「お花のお届けものです」そう言って、葵に花を渡して去っていった






手渡された花をよく観察してみた



「青い…薔薇…?」



それは、青というよりも水色に近い淡い色をした、美しい薔薇の鉢植えだった

その美しい色に思わず魅入り、薔薇に向かって微笑んだ

前々から青色は落ち着いた色で好きだったけれど、猿野が、自分のイメージカラーを青だよな、俺も青好きなんだぜ?って言われた日からさらに好きな色になった

なんだか、自分が好きって言われているようで

だから、そんな好きな色がこんな綺麗な薔薇で見れたのが嬉しかった…






眺めていると、鉢の周りを覆っているラッピングにカードが添えられていたことに気が付いた

開けるとそこには、手書きと思われる文字で「Happy birthday!」とあった

つまりは、誰かが誕生日プレゼントとして送ってくれたのだろう

だが、カードにも、どこにも宛名は書かれてはいなかった

(お礼を…言いたかったのに…)

結局、他にも名前が書いていないか探したが、誰からの贈り物かは分からないままだった…









「司馬君、お誕生日おめでとう!」



学校に着くとすぐに比乃が駆け寄ってきてお祝いの言葉とプレゼントをくれた

ありがとう、と微笑むと、どういたしまして☆と元気よく答えた

その比乃の行動に、自分の周りにみんなが集まりだして、お祝いの言葉をかけてくれた

みんなの気持ちがとても嬉しい



「司馬、今日が誕生日なんだ?おめでとうなv」



猿野も近づいてきてお祝いの言葉をくれた

その言葉に、嬉しかった反面、少し落ち込んだ

あの青い薔薇は、彼からの贈り物だといいなと思っていたから

それは、小さな望みだったか、早くも崩れ去ってしまった

自分の誕生日を知らなければ、あの贈り物をすることはできないのだから…







なんとか無事に部活を終えれたものも、ショックと疑問が頭の中を駆け巡り、ふらふらで何をしたかさえも覚えていない



「司馬、どうかしたのか?なんか、今日のお前、変だぞ?」



心配そうに猿野が俺を見上げてきた

その彼の優しさに嬉しくなる

でも、彼に心配をかけたくなくって首を横に振り否定する



「そうか?ならいいけど…。なにか、悩み事があるなら聞くからな?」



それでもなお、心配そうな表情の猿野に肯定の微笑みかえすと、安心したように笑ってくれた

やはり、彼には笑顔が一番似合う







黙っていようと思っていたものも、実は彼が博識なことを思い出し、聞くことにした

それを知ったのは偶然

どうして?と聞くと、みんなの驚く顔を見るのが好きなんだ、と彼は笑っていた

そんな笑顔にとても惹かれた

いつものような彼では見ることはできないような美しい微笑みに

おそらく、彼に近い者以外、誰も知らないであろう真実を俺は得れたのだ…



「薔薇…」

「えっ?」

「薔薇って、どう、育てればいいのかな…?」

「薔薇?薔薇って、あの花の薔薇か?育てたいのか?」

「…今日、プレゼントで、貰ったんだ…」

「へぇ。どんな薔薇なんだ?」

「…青い、薔薇、だよ…。すごく、綺麗な青、なんだ…。青って言っても、水色に近いんだけどね…」

「青色の薔薇?凄いな…」



何が凄いのか分からなくて首を傾げた俺を見て、猿野は説明をしてくれた



「薔薇ってのは、青い色素を作る遺伝子がないんだ。だから、一般に出回っている青薔薇ってのは紫色なんだよ。だから、それは珍しい薔薇なんだ。それ、大切に育てろよ?」



猿野がじっと念を入れるように見つめてくるものだから、必死に縦に首を振った

にしても、あの薔薇がそんな珍しいものだったということに驚いた

確かに、今までに見たことはない色ではあったが…

(本当に、誰が、くれたんだろ…?)

結局、この疑問は残ったままだった…







帰るとすぐにネットで検索をかけた

今までに植物を育てたことなんて、小学生の時に朝顔の観察日記をつけた時ぐらい

彼に「大切に育てろ」と言われて頷いた手前、簡単に育て損なうわけにはいかない

それに、上手くいけば、彼との会話できるきっかけが増えるのだ

もちろん、そんな不順な動機だけではなく、この美しい薔薇に魅入ってしまった自分としても、大切に育てていきたいと思っている

検索して分かったことは、薔薇はなかなか育てるのは難しいということ

早速も、先ほどの決意が揺らぎかける

(でも、育ててみなくちゃわからないし…!)

そう、自分に気合をいれる







ふと思い当たって、【青薔薇】で検索をかけてみた

育て方を調べていて知ったのだが、薔薇にも色々と名前が付いているらしいのだ

(どんな名前なんだろう…?綺麗な、名前だといいな…)

そんなことを考え、ドキドキながら探す



「え…?」



出てきた名前を見て、思わず目を見張った

なぜなら、その薔薇の名前は…


【Blue Heaven】


つまりは、天国の青



「あま…く、に…?」



それは、読み方は違うが、確かに猿野の名を表すものと同じで…

珍しい薔薇だと言っていたのだ

別の名前ではないだろう

(名前がなかったのは、薔薇自体が、名前を示していたから…?)

そんな結論に行き当たる

でも、自分の誕生日を知らなかったのでは?と思ったが、それを、猿野自身に確認していないし、薔薇を送ってない、と彼の口から聞いた訳ではない

驚いて見せたのは、少々捻くれた彼になら十分ありえる素振りである

何よりも、彼は花にも詳しかった

彼に直接逢って、確かめてみたくて、コートをつかみながら彼の携帯に電話をかけた

2、3コールで直ぐにでた



「猿野…?今、どこ…?」

「んー。公園。お前の家の直ぐ傍の」



意外な近さに驚く

自分の家から3分程度しか離れていない

彼の家はもっと遠い

散歩、なんていう偶然な感じでくることはないだろう

(俺の、ため…?)

つい、自分のいいように解釈してしまう

(本当にそうだったらいいのに…)

そんなことを思いながらも、彼への元へと急いで走って向かった









「さる…、の…?」

「よう、司馬」



全速力で走ったために乱れた呼吸を整えながら、公園のブランコの柵に腰掛けている猿野の方を見やった

吐く息は真っ白で、寒そうである

足元には既に空であろう、缶コーヒーが一つ

そして、手元にも一つ

ここに長時間いただろうことを物語っていた




「青い、薔薇は、猿野が…?」

「あぁ。意外と気づくの遅かったな」



勇気を持って聞くも、あっさりと彼は認めた

意外と遅かった、なんていう彼に苦笑いする



「猿野は、俺のこと、過大評価、しすぎなんだよ…」

「いや?だって、お前は気づいただろ?」



そう言って楽しそうに笑う

(あぁ、本物の彼の笑顔だ…)



「知らないと、思ってた…」

「誕生日か?…沢松の奴が教えてくれたんだよ…」



ちょっと苦々しそうな表情をした

沢松君との間でなにかあったらしい

いつもは、猿野と仲がいい彼を嫉妬していたりしてたのだが、今日は心から感謝する

(自惚れてもいいの…?)

決して見せようとはしない本性を見せてくれ、誕生日に素晴らしい贈り物をくれた彼に



「どうして、あの、薔薇を…?」

「分からないか…?」

「それは、…それは、俺の、好きなように、とっても、いいの…?」



俺の言葉に、猿野は微笑んだ

あの、人を魅せてやまない微笑で

(承諾と、とるよ…?)



「猿野のこと、好き、なんだ…」

「俺も、司馬のこと、好きだよ」



その言葉が聞けたのが嬉しくって、思わず、彼を抱きしめた

冷えた、猿野の体を暖めるように

彼の感触を確かめるように…









「司馬!く、苦しいだろ!!」



あまりの嬉しさに力が籠もり過ぎたのか、腕の下の彼から苦情が来る

パッと手を離したが、表情は少し怒り気味で



「…ごめん、ね?」



申し訳なさそうに誤ると、顔を緩ませた



「司馬って、奥手に見えるのに、意外と行動は大胆だよな〜」



彼のその発言に顔が赤くなっていくのを感じた



「さ、猿野が、可愛いから、つい…」

「お、男に可愛いはないだろ!ったく…」



猿野の顔も照れているようで赤くなる

あの、魅せる笑顔とは違った魅力を感じる

(本当に、可愛い…)

自分の想いが通じたなんて、未だに実感が湧かない



「…触れても、いい…?」

「…さっき、そっちから急に抱きついてきたのに、いまさら許可か?」



肯定の相槌をうつ俺に対して、不思議そうな表情をする

(だって、もっと、触れたい…。実感したいんだ…)



「いいぜ?」



許可を貰えたことに嬉しくなる

これで心置きなく猿野に触れることができる



「…好き、だよ」



猿野の唇にキスをした

その柔らかい感触に触れて初めて、彼を手に入れた満足感を感じた








「ほんと、司馬があんな行動をとる奴だとは思ってもみなかった…」



その後、何度も猿野にキスをした俺の行動にそう感想を言った



「だって、猿野が、…あんまりにも、魅力的だったから、ね…」



それに、許可はちゃんととったでしょ?と微笑む俺に、猿野はため息を吐いた



「司馬って、俺よりも捻くれてる…」

「そんなこと、ない、よ…?猿野に、対してだけ積極的な、だけ」

「そーゆーことを普通に言えるってとこが、もう、既に違うんだよ」

「そんな、俺は、嫌い…?」



楽しそうに、じっと、答えを求め見つめる俺に猿野は肩を落とした

(自惚れても、いいんでしょ…?)



「バカ。嫌いだったら、誕生日にわざわざ贈り物なんてしねーよ。それに、この俺がそんな奴に触らせるわけないだろうが」



いつもよりも素直な彼に微笑みが浮かぶ

そして、猿野の瞼に、もう一度唇を落とした…










青い、青い薔薇

Blue Heaven

"天国の青"という名を持つ、この薔薇の花びらに

俺は彼を想いながら、キスをした…











*****あとがき。*****
ごめんなさいι白馬さんを書いていたはずが、知らぬうちにシマウマに!
Σ(=△=;)何故だ?!BGMがエロかったせい…?
でも、これでも、暴走を止めたほうなんですよ〜(泣) もう少しでお持ち帰りになるとこを書くとこだったんですから!(爆)
責めるどころか、寧ろほめてくれ!!(笑)

ブルーヘブン。実在する綺麗な青い薔薇です。名前もイロイロと想像できて素敵ですがv(笑) ほんと、一度買ってみたい花です。
Blue→青→青い→葵 Heaven→天国 一緒にすると葵*天国→司馬猿?!(笑) なんていいネタになる薔薇なんでしょVv(悦)

この小説は、お友達のユウへ。白馬さんが好きなのにすまん。
そして、やっぱり猿さんはインテリジェンス☆
これが私だと思って諦めてくれ。返品不可っすv




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