花狩り人   ―Sample―




  ――奈良シカマルはうずまきナルトが嫌いだ。それは、自分だけでなく、周囲も認める純然たる一つの事実である。
 といっても、いくらナルトの事が嫌いだからと言って、短絡的に暴力や陰気な虐めに走る、という愚かな行為を行うわけではない。寧ろ、そんな子供じみた所業など鼻で哂いたくなるタイプである。だから、この嫌いというのはただの感情的なものであって、一切行動に移してはなかった。
 いや、一切というのはさすがに言い過ぎだろう。強いて言うなれば、その姿を見つけると思わず不快そうに睨んでしまうとか、その反対に存在を無視するとか、そういう程度の態度をもって、シカマルは周囲にナルトの事が嫌いなのだと知らしめていたのだった。
 今日も今日とてシカマルの視線の先で、教師の横で叱られながらも授業を受けるナルトの姿を、頬杖ついたまま睨みつけるようにして見ていた。  つい、漏れ出てしまった舌打ちの音に、隣の席に腰を下ろしていた幼馴染のいのが呆れたように溜息を零す。どういう意味で鳴らされたものだからか理解してだろう。


「しかし、本当に態度悪いわね、あんた」
「うるせぇよ」
「うるさいってなによ。私にまで喧嘩売る気? あんたがその気なら受けて立つわよ?」
「――イラつかせるあいつが悪ぃんだよ」
「…だからといって、そういう態度はないと思うけど? 第一、なによその言い分。まるで質の悪い雑魚の悪役みたいな台詞そのものだって気づいてる? …まったく、あんたらしくもない。元からあった眉間の皺がより深くなるわよ」
「うるせぇよ」


 いのの呆れたように諌める声にシカマルはぶっきらぼうに、先ほど変わらないような返答を返した。人間、図星を指されると腹が立つものである。それは恐らく、気まずさを隠そうとする心理からなのだろう。
 自分の態度が決して褒められたものではないことぐらい、シカマルはよく分かっている。…それでも。


「…嫌いなものは嫌いなんだから仕方ねぇだろうが」
「なら、見なきゃいいだけじゃないの」


 もっともな意見だ。見ていてイラつくなら、いっそのこと見なければいい。それは単純にして明快、最高の対策方法だ。
 けれど、シカマルはいののその言葉に返答することはしなかった。…出来なかったのだ。いつだってシカマルの意識は、彼に向けられていたのだから。
 気になるのだ。今、ナルトが何をしているのか。今、何を思っているのか、その一挙手一投足の全てが気になって仕方なかった。何を意識しなくとも、自分の視線が常に彼を追っているという状況に、シカマルは随分前から気づいていた。 ――でも、言えるはずねぇ。その理由なんて…。
 流石に長年この状態が続いているのだ。仮にもドベと言われても忍は忍。頻繁に自分を見るシカマルの視線に気づいているはずだ。もし、自力で気づけていなかったとしても、彼と懇意にしている者たちが気を付けろとでも忠告でもしているだろう。
 実際に、その者たちからシカマルは何度か過去にいい加減にしろという注意を受けているのだから、それは強ち間違った推測でもないだろう。
 それに、シカマルはナルトが実際はドベと呼ばれるような人間ではないと思っている。いや、知っていると言った方が正解なのだろう。もちろん、それは過去の事なので今は違っているという可能性もあるが、長年の観察がそうではないとシカマルに思わせるのだ。
 ともかく、幸いにも、ナルトがシカマルの行動理由を覚えていないのか、理解した上での行動かは分からないが、ナルトが沈黙してくれているおかげで、未だにシカマルがナルトを嫌う理由は周囲にとって謎のままなのだが、いつ知れ渡るかと思うと、シカマルにとってはずっと冷や冷やし通しで、心休まる時がなかった。
 つまり、シカマルがナルトの事が気になって仕方がないのは、気づけば目が追ってしまうのは、『嫌い』という理由だけでなく、監視の意味もあるのだ。
 ――それ以外の理由なんてない。そう、断じてないのだ。




…と、こんな感じのお話です。冒頭を掲載させていただきました。
全体的にしっとり、くすくすっなお話です。
シカマルがナルトが嫌いという、王道路線な設定になります。
全てシカマル視点のお話で、長きに渡る恋のお話なので、まぁ、シカマルのシカマルによるシカマルの為な話です。
もう誰得って感じですが、まぁ、シカナル本なのでシカ得です(笑)
サンプルでは偉そうな感じですが、ヘタレというか、マダオ(まるでダメなオトコ)です。



オリジナル設定、特殊設定が苦手な方はお気をつけください。




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