あの青い空を仰ぎみて   ―Sample―





T: 空虚な瞳  より一部抜粋




「何するんですか! ちょっと、今、本気入ってませんでした?!」
「それはオレの台詞だ、馬鹿」

 殺気がなかったからこの程度で済ましたが、下手すればその首を迷うことなく刎ねていただろう。条件反射で反撃してしまうナルトにしては手加減した方だ。彼の今までの自分に向ける好意と殺意の有無で多分問題ないと判断した故に。一歩間違えれば間違いなくこの世とおさらばしていた。悪運がある。
 酷いです、と未だにぷりぷりと素直に表情に出す天斬(あまぎり)に、本当にお前は暗部なのかと疑いたくなるのだが、流石に年に一人採用するかしないかの狭き関門である暗部、今年採用の唯一の新人にしては腕が立つのは確かだった。要は任務に問題がなければよく、そこは真面目に取り組めているからここに居られるのだ。


「あー。しかし、やっと片付きましたね。予想以上にしぶとかったなぁ! 隊長ってば手伝ってくれないんですもん、酷いですよー」
「阿呆か。オレが手伝ったらお前の成長にならないだろうが。あの程度で梃子摺るなんて修行し直して来い。そもそもオレはお前の教育係が不在の間の臨時の代わりで呼ばれただけだからな。要はお前の見張りだ、見張り」
「確かにそうですけどっ…! でも、見張りって、もうちょっと言葉を選んでくださいよ。オレの繊細な心が傷つきますっ! でも、あぁ、折角あの《蒼輝》と一緒に二人組を組めたというのに活躍が碌に見れなかったなんて……!」
「――うるさい」
「ううっ、本当、冷たいです、隊長! そんな所も様になっていてカッコいいですけど。…だって、仕方がないじゃないですか。いつも隊長は基本《黒月》副隊長とばかりで二人組を組んでいて、滅多にこんな機会ないんですよ? その活躍を間近で生で見られるなんて、本当に稀なんですから! オレ、暗部目指したのって隊長に憧れてなんですから、ちょっと興奮して煩いぐらい見逃してくださいよ!」


 これは何度諌めようと無駄だなと判断したナルトは反応を返すことを早々に放棄した。経験上、何度突き放しても寄ってくるのを辞めないのは解っている。一番いい選択は無視だ。思わず出そうな溜息だけは疲れが増しそうでぐっとかみ殺した。
 暗部に入り数年。火影の代も代わり、人員が足らないという事情もあってか、いつしかナルトは部隊長となっていた。それまでは部隊というよりは特別に別枠で動くことができるという身軽な立場で、任務が大がかりで他の者の手が必要、というような時以外の接点なんて持とうとしなかったのに、部下を持つようになって人との関わりあいが急に増えた。
 自分の手に抱えられるだけの少しの大切なモノだけでいいと思っていた。とても大切で大事なものを、これまで何度も奪われ喪ってきた記憶がナルトを酷く臆病にさせていた。
 だからこそ、極一部の、本当の本当に大切だと思えるもの以外には冷たく接していた。――《蒼輝》、己の暗部名、蒼闇に浮かび冴え冴えとした光を放つ凍てた月のように。
  けれど、ナルトを持ってしても偏屈で変わり者揃いだと思わせる部下達はそんな《蒼輝》に臆することなく接してくるのだ。そんな彼らがナルトは′凾「≠ナはない。嫌悪も畏怖もなく、好意ばかりの視線を全て無視しきれるほど冷徹になれなかった。
 そんな所が時折、敵にも指摘されるナルトの甘さなのだろう。血も涙もない非情な忍になろうと思っても究極には成りきれないのだ。自分でもそんな甘さに苦笑してしまうが、今更、本質を変えるのは難しかった。
 けれども、それでもやはり受け入れるほどの覚悟があるわけでもない。それほどナルトの守れる手は大きくないのだ。木ノ葉最強の忍と称されても、一人では限界があることをよく理解していた。


「諦めないな」

  思わず口をついた言葉に反応した天斬はきょとんとした表情を一瞬浮かべたが、直ぐにその意味を理解したのか、それは笑みへと変化した。





…と、こんな感じのお話です。1章の中部分を抜粋して掲載させていただきました。
全体的にシリアス目なお話です。おそらくここが一番明るいです。

暗部に新人として入ってきた天斬(あまきり)とその上司のナルトに苛々するシカマル、というコンセプトのお話です。
これだけだと明るい話のように感じますが、シリアスです。そしてなぜか戦闘大目でお送りいたします。
がっつりスレナルですので、流血、暴力、死の表現がありますのでご注意ください。

尚、シカナルは友達以上恋人未満設定。(あと一歩!)
蒼輝、黒月ですが、シカナルいの設定ではないです。
「月狂いの夜の果てに」のような色花シリーズの(いの無関係ver)だと思いください。途中までの基本設定はいつもどおりです。


オリジナル設定、特殊設定が苦手な方はお気をつけください。




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