それなりに懸命に生きて、選んできた道を運命なんて言葉一つで片付けられるのは嫌いだが、
唯一つ、お前に出会えた事をそう呼ぶのならば
信じてみてもいいかもしれない…

















最近のナルトの口癖は「物好き」とか「変な奴」であろう
なぜかといえば、会うたびに呆れた顔をして俺、シカマルに言うからである
本人曰く、「シカマルみたいなモノズキ見たことないってば」だそうだ
なぜか、ドベ口調で言われたのは、彼にとって呆れの極みであったからだろうか?

気づけよ、と自分は強く願う

お前に対してだけだと言っても彼はそれを素直に受け取るはずもないだろうから、口にすることなく、一人願う

この、自分がだ
めんどくせーことが大嫌いな自分が、わざわざ昼の任務と平行して夜の任務、暗部に入ろうと思うはずがないというのに
自覚していた才能を発揮させる事もなくのんびりと暮らしていた俺が手放した自由
そうしてまで望んだのは、手に入れたかったのはお前の、ナルトの隣だというのに

他の事には鋭いナルトだけに、自分への好意にはとんと疎い事がせつなかった
呆れるなんて事はない
むしろ、そのようになった背景がわかってせつないのだ




ビシッ



「っ…!」


突然の眉間への攻撃に、避ける事ができず額を押さえ呻る
これは…かなり痛い
こんな事をできるのは、するのは一人しか思い当たらなくて、その人物に怒りを込めた表情で見上げれば、予想通りの人物
しかも、少し、いや、かなり愉快そうな表情のナルトがそこにいた


「ナルト、いきなり何すんだ!」


目尻に痛みによる涙を軽くため、軽く非難すれば、さらに笑みを深くする
めったに見れないその表情に、今度は怒りも削がれる
笑顔がみれたならいいか、と思ってしまうあたり、確かにちょっと奇特な奴とい感じ
重症だな、と呟く
まぁ、今更の事だが


「で、何の用だ?」
「しゅぎょーの時間ですv」


無駄に満面の笑み、しかし本性を知っている自分にはどう見ても邪悪にしかみえないソレを湛えながらのその言葉にゲッという表情をすれば、その反応に満足そうに笑う
奴のおもちゃにされているようで複雑な気分だ
むっとしたが、こういう態度を取ってくれるような存在にようやくなれたような実感がして、結局、どんな種類の笑顔でも、好きだなぁと思ってしまって、そんな気分は一瞬で霧散した

なんだか笑顔一つでそんな風になってしまう自分はかなりの重症
かなりの馬鹿

でも、
それでも
それを分かっていても

こんな生活を気に入っている自分がいるのだ


「さて…どこからでもいい、かかってきな」


すっと細められた瞳
青い瞳は蒼色へと変化する
太陽の色というよりは繊細な金の月の色をした髪は光を浴びて輝いて
蒼輝という名は誰がつけたのだろうか?
とても彼に似合っていた
…ちなみに、あの熊が、とか言われるとちょっと癪に触るので敢えてこの問題は聞かない事にしている

そんなある意味くだらない思考を止め、こちらもすっと意識を切り替える
彼の為ならば手段を選ばぬ冷酷な存在へと、自分の知識の、才能の、全てを持って
そんな自分の様子を先ほどまでの無邪気な笑顔とは違い、純粋に戦う事が楽しそうな笑顔で蒼輝は見つめる
その冷えびえとした美しい表情に背筋がぞくりとする
ただ立っているだけだというのに、なんていう存在感か

いつまでも目を奪われそうな自分を叱咤し、素早く手裏剣を数本同時に投げる
無論、本気でだ

カカカカカカッッ!!

木々にクナイが刺さる音が響く
簡単に避けられたのだ
しかし、そんな事は初めから予測していたので動揺する事なく、この瞬間を利用してスッと間合いを詰め、忍刀を素早く抜き取り、振り下ろすが、それさえも蒼輝に受け止められた
しかも、クナイで、である
その状態でしばしの間拮抗が続くと、僅かではあるが自分の腕力が勝ち押す形となったが、相手の力量を考えればこれ以上の拮抗は負けを意味する
一度間合いを変え、再度何度か切り込むが、それさえも容易に受け止められ、最後には弾き飛ばされた
…何度も言うが、相手はクナイ一本である
極限にまで集中を高めた息を詰めるような状態での長時間の戦闘に流石にシカマルの息があがる


「ん、もうお仕舞いか?」


蒼輝がにっこりと笑いながらいう事を分かっていたので、「いや?」と返しながらそっと太陽の位置を確認してにっと笑った


「――影首縛りの術ッ!!」


秘伝の術は見事発動し、物理的な力を持った影が手のように変形し蒼輝へと襲いかかる
ぎょっとしたその表情に、これで勝ったと思ったが…


「残念♪」


先ほどまでの表情は偽りだというかのように、逆に楽しげに笑う蒼輝に、なぜか逆に見事縛られ、窒息死させられそうになったのだった
その朦朧としかける意識の中、なぜ我が家の秘伝を使えるのか、という疑問と、同時にあの親父めぇ!!という瞬時に弾けだされた解答への罵倒だった










「あ゛ー!くそっ!!」


ようやく影から開放され自由の身になると、シカマルは普段の冷静な彼を想像出来ぬような程悔しげに叫んだ
そんな滅多に見れぬシカマルの様子を観察しながらナルトは愉快そうにニヤっと笑った


「甘いぞ、シカマル。相手が写輪眼みたいなもん持ってたら難しいぜ?あと、その技を知ってるとか、な」
「…滅多にいねーし」
「何か?」
「…いや」
「じゃ、今日も例の罰ゲームな!」
「…マジかよ…。…面倒くせー」


シカマルは思わず頭を抱えて唸った
ちなみに、この場合の罰ゲームとはそんじょそこ等のものではない
三代目の所へと忍びこみ、禁術を記し巻物を一本取ってくるというもので、かつ、それは暗号で記してあるのでそれを解読し、術の取得という素晴らしいオマケまでついたものだった
トラップ満載のその部屋まで辿り付くのも大変というか、命がけなのに、そこまで成し遂げなければならないというのはかなり過酷なものだった
…しかも、今の所10戦10敗中
この頃は疲労困憊気味で、アカデミーでは面倒くさいからという理由でなく普通に睡眠不足で熟睡だ
いくら、禁術の中でもレベル(警戒も、それ自体を取得するのも)低いとはいえ、このままでは確実に…死ぬ


「ははは…」
「このぐらいこなさなきゃお前を暗部にしてやれないぜ?」
「分かってる」
「無理なら諦めていいんだぜ?」


それは、自分を労わるようで、実は暗に自分に暗部など目指すな、自分を追わなくてもいいのだという言葉
彼のこの特訓は巧妙に自分を鍛えているものであって、また、自分を諦めさせるためのものでもあるように感じるのだ


「絶対にこなしてみせるさ」


辞めねぇよ、とそう、断言するかのように強く言えば、ちょっと困ったような、しかしどこか嬉しそうな感情が複雑に入り混じったような表情で
どういう表情を浮かべればいいのか分からないといった感じだ
初めて見るその表情に少し切ない気持ちになりながらもシカマルはその気持ちを吹き飛ばすかのように笑みを湛える

恐れることなんてないのに
これは自分が望んだ道で、自分で望んで手に入れようとしている力だ

そんな想いを込めて


「…早く、強くなれよ」
「素質は十分あるんだ、直ぐに追いつくさ」
「…ほんっと、シカマルって、大した自信家だよな」
「でないと、お前の傍らには立てねーよ、それでこそ、一生かけてもな」


だろ?と目線で問えば、そう、かもな、とゆっくりと納得させるかのように頷くと、先ほどの困った感情は払拭された表情でキレイに笑った
その笑顔はきらきらと輝く、1点の曇りなき宝石のように美しい
たとえ、どれほど彼の手が、彼自身が血を浴びようとも、彼自身の本質が、気高い意志が穢れ変質してしまわないかぎり、自分は永遠に惹かれ続けるだろう
どのような辛い過去を持とうとも、どれほど彼が人々から憎まれようとも、彼は本質はずっと変わらなく人を惹きつける
自分もその一人か、と心の中で苦笑する
でも、このままで終わる事を許さない、自分のプライド
絶対に追いついて、離れてやらない

まだ遠くない昔、夕暮れ時のアケデミーで、ふっとした瞬間
一瞬、たった一瞬だけだが、どこか遠くを望む目をして、ゆらめく陽炎のように儚く彼は笑った
きっと、自分でも気づかないぐらい無意識に、ほんの一瞬だけ
目が離せなくて、なぜか心が締め付けられるように痛くて…

ほどなくして、全てを悟り、知った時、決めたのだ
あんな表情をする彼をもう、見たくはなくて
ずっと傍にいたいと願って
守られるような奴じゃないと知っているから、ならば、助けられるような、頼られるような存在になろうと誓った

ナルトの白魚のような手を取り、その指に唇をそっと愛しげに落とす
まるで、神聖なる儀式のよう


「…ほんと、シカマルって物好きだ」
「自分でもそう思うぜ」
「気づくの遅ぇし」


呆れたように言うナルトに、だな、と真面目に返せば、なんだか無性に可笑しくなって、ぷぷっと、そして腹を抱えて笑い出す


「…じゃあ、ご期待に沿えて、もっと扱かせてもらおうってば?」
「げっ…」
「付いて来るんだろ?」


全てを見通すような、蒼い瞳で
自分を見据えて
強い視線を逸らす事なんて

出来ない


「…あぁ」


それが、例え、待っているのが演じ騙しあい、血に塗られた日々でも厭わない


「じゃ、とりあえず目先の事を消化するか。…めんどくせーが」
「頑張れってばよー」
「…もっと、真剣に応援しやがれ」











君さえいえれば、それはキセキのような日々












fin







*****あとがき。*****
こんにちは。モノカキさんに30のお題「きせき」よりシカナルで、「猫のかんざし」の禮さまへの相互祝いリクとなっています。
ちなみに、宝石の意味の「貴石」です。きせきという言葉自体も題材にしていますが。
…シカナルです。…×より限りなく+に近いですが、私にとってシカナルなんです!!
すみません、こんなもので(泣)つか、どれだけ待たせれば…ιぐはっ!(吐血)
…甘い話っていうリクが少しも反映されていないようですが、お許しを…!(泣)

では、この話が少しでも気にいってもらえたなら幸いです。
今後も仲良くしていただけるようお願いしますv

05.07.07「月華の庭」みなみ朱木





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