廃れたに等しい情報の墓場の山 その中に彼はいる 最新の情報が漂う海 その中に彼女はいる charming 「あなたがここに来るなんてどういう裏があって?9課に入る決心でもついたのかしら?」 「冷たいなぁ。貴方に逢いにですよ。…まぁ、貴方とずっと一緒にいられるなら9課に入るというのもいいかもしれませんね」 にっこりと笑うアオイに毒を抜かれたように素子は一度空を仰ぎ、ふぅと溜息をひとつ。 これでは話し合いにならない。 ずっと平行線のままだ。 「どういう心境の変化かしら?それとも、心理戦でも学んだから実践でもしたい、とか…?」 「心境?ただ、貴方に逢いたいという気持ちがボクを動かせただけだですよ」 「あなたを笑い男として突き動かしたように?」 「えぇ。でも、貴方相手ならば心理戦も楽しそうだ。もちろん、恋愛のという枕詞が付きますが。その為なら時間を惜しまず学びますよ?」 素子は理由を聞いた事を早くも後悔してディスクの上に置いてあったコーヒーを一口含んだ。 ほろ苦い味がしばし心に安らぎをもたらす。 「わたしは…あなたみたいな人間は嫌だって言ったはずよ」 「それは残念。でも、ボクは好きですよ、素子さんの事が」 「名前…いえ、あなたには簡単な事だったわね」 「えぇ、あらゆる情報も手に入れる事はボクにとって容易い」 「なら、ずっと紙媒体にでも埋もれていたらどう?あの時、そう願ったように」 冷たい返答だ、というようにアオイは肩をすくめる。 しかし、あの時願ったのはまさに本心だったし、否定はできない。 今も、自分にとって本に埋もれた情報の方が、墓場とも言えるべき場所が好きな事には違いない。 ただ… 「それでも、貴方の傍にいられるという魅力的な提案には心が揺るぎましたよ」 「大した戯言ね」 きっぱりと言い放つ素子をらしいなぁとアオイは笑った。 孤高に咲き誇る華のように凛した気高き美しさがアオイには好ましく映のだ。 外見なんて簡単に変えられる現在、見た目の美醜など関係ない。 中身の美しさが大切なのだ。 世界に呆れ見放した今、興味など無いが、彼女の存在だけが彼を辛うじて情報の海へと留めるのだ。 「なによ?」 「いえ」 「…やっぱり、貴方の事は嫌いだわ」 「似てるから、でしょう?」 知ってます、と苦笑しながら、そっとアオイは素子の横へと近寄った。 ビクリと警戒したのが分かったが構わない。 「…でも、だからこそ、俺には貴方の事がよく分かるし、逢いたくなるんです」 「…」 「近しいからこそ、愛しいと、より知りたいと思う感情があるんですよ…」 そっと、髪を梳く様に撫で、耳を掠めるように唇が微かに触れた。 「これぐらい、許してください…」 抵抗など容易いはずなのに、なぜか素子は動く事ができなかった。 「少佐…、どうした?」 「バトー…?」 「なんだ、寝てたのか?」 アオイと自分以外誰も居なかったはずが、急にかけられたバトーの声に、辺りを確認するように見回してようやく全てを素子は悟った。 「あぁ、もう、本当に…!…この私さえも騙すだなんて。しかも…」 「どうした?…珍しい。顔、赤いぞ。酒でも飲んだのか?」 キッと一睨みしてバトーを黙らすと怒りも露に扉へと向かう。 「どこ行くんだ?」 「あの案件で新たに分かったことできた。おそらく情報に間違いはないが、一応確認だ」 「あの?あれはお前でも難しいとか言っていなかったか?」 「…等価交換だそうよ」 「は?」 質問はこれ以上受け付けないとばかりに素子は再度歩きだした。 「私はそんなに安くないわよ、あんな情報料で納得しないで欲しいわ…。だから、今度は謝罪を兼ねて手渡しに来なさいよ?」 どうせ、貴方はあの情報の墓場の中でこれを聞いているのでしょう?と見透かすように素子は笑う。 もう笑い男ではないアオイが困ったように、しかしどこか嬉しそうに笑ったのが分かったような気がした。 fin *****あとがき。***** こんにちは。モノカキさんに30のお題「レトロ」より攻殻機動隊S.A.Cでアオイ×素子ですv10万打企画作品です。 需要はなくともかまわない。もはや自己満足の世界。好きなんだ、攻殻が!!愛してるんだ!! で、アオイくんに9課に入ってほしかった私の、せめてものささやかな願望を叶えてみました(笑) いつも、敵?見方?キャラと姉さんは似て非なる存在で、それだけで妄想はむくむくと膨らんでいきますv でも、レトロが郷愁だと後で知った私はなぜクゼ素じゃないのかと悔やんでます〜(涙) では、この話が少しでも気にいってもらえたなら幸いです。 今後も仲良くしていただけるようお願いしますv 05.06.15「月華の庭」みなみ朱木 |
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