遊園地










「は?…なんでそんな約束したんだよ」


沢松のこめかみがピクリと動いたのが分かった
不機嫌な様子がよく顔に出ている


「仕方ないだろ?話の流れ的にそうなっちまったんだよ。普段の俺が断れねーの知ってるだろ?」


天国は不快そうに眉をひそめた
黙って凪とのデート?に行こうかと思ったが、後でバレた場合、盛大に不機嫌になるだろうと思ったから報告だけは、と思って来たのが間違いだったのだろうか
結局、沢松が不機嫌になるのは一緒なのだから
どうも沢松は俺が自分や檜以外の人間と出掛けるとなると不機嫌になる
愛されてるね、と言ったらそれまでだが、もう少し肝要に見てもらわなければ困る

…そう、仕方がないのだ
普段の俺の全てを包み隠して生きているから
だから、その本人であり、別人でもある俺が、好きだと言っている相手を邪険に扱うことなんて出来なくって
その結果、一緒に遊びに行く、という事になってしまったのだ

…彼女には悪いとは思っている
何が悲しくて、当て馬みたいな立場にされなければならないのか

彼女をその立場に選んだのは何故だろうか?
それは自分でもよく分からなかった
あの、全てを包み込むかのような優しさ?
もしバレた場合でも、厄介な事にならないだろうと思って?
分からない
人を信用しなくなった自分が、無償の愛なんて言葉を容易く信用することなんて出来ない
それでも、彼女が出来るだけ、この事実を知らずに関係が終わればいいと願う
傷つく事がないといいと思う
なんて行動に矛盾した願い

彼女が好きなのか?
そう聞かれたら「否」という答えが直ぐでるけれども、それでも心境は複雑だ


「わかった。楽しんで来いよ」


仕方がなさそうに言うも、物分りのよい反応に嫌な予感が過ぎる


「…付いて来るなよ」
「は?」


沢松はワケが分からないといった反応を見せた
あまりにもそれが自然で、余計に不自然に見える
…絶対に何かするな、こいつは
確信にも似た予感を感じる
釘だけは刺しておかなければならない


「…余計な事だけはすんなよ」
「この俺を信用しろよ」


できるかッ!
爽やかな笑顔とその台詞に思わずつっこみそうになるが、なんとか耐えた
自分に拍手を贈りたいぐらいだ


「とにかく、そういう事だから、大人しくしててくれよ?別に、前にはよくあったことじゃねーか」


褒められたことではないが、誰かと遊びに行く事なんて、前には頻繁にあったことだ


「元々俺は嬉しくなかったんだよ。素直になったんだよ、俺は!」
「自分も似たようなことしてたのにか?」
「うっ・・・」


図星を突かれて言葉を詰まらせる沢松が面白くって、思わず笑った


「じゃ、そういう事で」


ひとしきり笑った後、天国は引き止められる前にそそくさを出て行った










「ちっ。この俺を易々と出し抜けると思うなよ?」


ニヤリと笑いながら、机の上に置いてあった携帯に手をかける
小慣れたように、短縮ボタンを押す
数コールがしかまだ鳴っていないのに、酷くもどかしく感じる


「…何の用…かも」
「あ、檜ちゃん?俺だけど」
「沢松君…。天国に何かあったかも…?」


疑うことなく、天国の名前を出すところに俺たちの共有点が丸見えで、そこが面白くって微かに笑った


「まぁ、正解ってとこかな。正確には、これからある」
「…なんだか嫌な感じがするかも…」
「さすが、檜ちゃん!」
「で、何が…?」


カクカク シカジカ
とりあえず、一気に詳細を伝える
檜ちゃんも俺と同じく、ショックを受けてるというか、嫌がってるのを感じた
まぁ、檜ちゃんの場合、俺よりもその気持ちは強いかもしれない
何より、同姓の友達が相手なのだから


「…今度連れてってくれるって約束したのに、酷いかも…」
「だな。俺もそれに同意見だ」
「というか、それ以前に心配かも…」
「まぁ、天国が変なことすることはないと思うぜ?」


今は辞めたからな、という言葉は心の中でこっそり呟くのみで留めておく
心配はさせたくない


「…わかってるかも」
「さて、いったい何をするつもりか…」
「…さっそく、何が起こるか行くが占ってみるかも…」
「さすが!話が早いわ、檜ちゃんは」
「沢松君こそ…」
「ん。任しておけよ!さっそく、皆さんに連絡まわすから」


まぁ、その際、多少の脚色はさせてもらうが…


「楽しみかも…」
「楽しみだな…」
「…ふふ」
「…ふふふふ」


お互いに、電話口で笑いあう
途端に空が曇って、太陽が隠れてしまったのは気のせいではないだろう…
さすが天国の仲間だとしか言いようがなかった




「用心しよう…」



天国はこの急激に変化を遂げた天候に、行く先の剣呑を敏感に察知し、気を引き締めたのだった






*****あとがき。*****
コンニチワ。モノカキさんに30のお題より「遊園地」でミスフルです!初めて(?)のカプ無し(?)話です!!
いや、本当は「遊園地」の御題は猫猿または(沢+猫)猿にしようと思ってたのですが、なかなか書く時間とネタが思いつかず放置されてましたιそこへ、WJの原作が!なんと、凪さんと遊園地いってるじゃないですかっ!!しかも、沢が邪魔する気満々だし(笑)猫さんもいるし!!こ、これは二人が邪魔しに来たんだとしか想像妄想できなくって♪ラブです、沢と猫と天の組み合わせに幸せを感じます〜vvv
時間がない故に、妨害部分がない事前妄想話となってしまいましたが、それまたご愛嬌ということで。そう、これが原作へと続くんですよ!!(笑)でも、この後日はまた書きたいなーと思ってもみたり。反響によっては書きますねv
にしても、久しぶりに笑える?話を書いて、気分が楽しくなりました。普段、しっとりしすぎー!!
ではでは。少しでも楽しんでもらえたら幸い。

04.03.03 みなみ朱木「月華の庭」








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