悲惨な戦いを得て一時休戦となり、やがて平和条約が結ばれ、戦いがようやく終わった
僕達はこの戦いから何を得たのだろうか?
大切なものを失った悲しみと、憎しみの連鎖を生んだ
ただ、
それだけだ…
僕達の中にはまだ、わだかまりは残っている
しかし、
きっと、もう戦争は起きないだろう


そう心から願っている…










reunion














「キラ…?こんな所にいましたの?皆さん、お探しですよ」


ラクスの声が背後から聞こえ、僕は後ろを振り返った
あの戦いの後、ダメージが大きかったのか僕は昏々と眠り続け、目覚めたのはつい先ほど
大勢の人達に泣きつかれ、ようやく訪れる人波が落ち着いた頃、病室をそっと抜け出したのだ


「ラクス…。ちょっとね、宇宙をみてたんだ」


視線を元に戻し、ガラス越しに宇宙を見つめる
漆黒の世界に輝く星達は美しく輝いていて、あんな悲しい出来事が起きたなんて思えなかった
ガラスが微かに側に近寄るラクスの姿を映しだす
今は凛々しかった戦闘服を脱ぎ、初めて出会った時のようなドレスを着こなしている
歌姫と呼ばれた彼女を彷彿とさせた
だが、ここ最近の体験が、悲しみを、苦しみに立ち向かったことがラクスを更に美しく変えた
彼女は僕の隣に立って、同じように宇宙を見つめた


「綺麗ですわね…」
「…うん。あんな事があったのに、どうして、この宇宙(ソラ)は美しく見えるんだろうね…」
「…あんな事があったから、かもしれませんわね」


思いがけない言葉にラクスの方へ向くと彼女は微笑した


「確かに、この宇宙は、あのような惨劇が起きた場所かもしれません。でも、そんな場所を美しいと感じるのは、きっと、ここで出会った大切な人々との思い出がそうさせてるのかもしれませんね」
「思い出…?」
「えぇ。キラはこの戦いで得たのは辛い思い出ばかりではなかったでしょう?」
「あぁ…」
「そして、そんな思い出をくれた大切な人達が眠る場所だからこそ、美しいのではないでしょうか…?」


さまざまな人を思い出した
トール、ムウさんを筆頭として、最後に、フレイ…
決して、辛い思い出だけではなかった

優しくしてくれた
笑いかけてくれた

暖かい思い出 暖かい過去
思い出とか、過去とかと割り切るにはまだ、俺には時間が足りないけれど
それでも、大切な、守りたかった人達だったということにはかわりわない

そんな彼女達の眠る場所

僕と直接関係のない人達にもきっと大切に思う人達がいて
大切な思い出を持っていて
だからこそ、この宇宙が悲しい程に美しくて、この世界が愛しいのかもしれない


「そう、かもしれないね…」


こんな時代に生まれたことを怨んだ事もある、悲しんだ事も…
でも、もし、この人生をやり直せるとしても、それでも僕は、彼らに出会えない事より、またこの道を歩んだだろう

何度、傷ついても
何度、涙を流しても

出会いたいと願う


「…ラクス、ありがとう」


微笑んだ
それは、少し泣きそうな表情だったかもしれないけれど
彼女のこの言葉がなければ、僕はずっと悲しみを背負ったままだったかもしれない
いつも、彼女には弱い姿を見せてばかりだ
でも、そんな俺に優しく彼女は微笑んだ
その瞳は暖かさに満ちていて、まるで聖母のようだ
美しくて、慈悲深く、それでいて気高い、凛とした人
だからこそ彼女は人々から愛されるのだろう


ラクスの口から歌が毀れた
鎮魂歌、死者へ捧げる歌だ
その澄んだ美しい、心へ響くような歌声に耳を傾けた

彼女は強い人だ
きっと、僕なんかより数倍強いだろう
力でなく、心がだ
誰よりも強く平和を望み、常に微笑んでみんなの背中を押していた
恐怖も、悲しみも全てを押さえ込んで微笑んで
本当は守られて生きていく人なのに、なんて強い人なんだろうと思った
僕が彼女の涙を見たのは、たった、1度だけ
いつも、皆の先頭に立つものとして彼女は泣かなかった
いや、泣けなかったのだろう
父親が死んだ時、僕の腕の中で泣いた
彼女の初めての



やがて歌い終わったラクスは僕を見つめた
ふわりと花が綻ぶかのように笑う彼女に胸がドキリとする


「私が、この宇宙を以前より美しいと思うのは、きっと、キラと出会ったからですわ。
悲しみよりも、キラに出会えた喜びが強いんですの」


ラクスが僕の方へ向かってふわりと跳躍する
軽い無重力状態のこの場所は簡単に彼女の身体を僕の元まで運んだ
差し伸べる手をそっと受け取り、彼女の身体を抱きとめる
彼女特有に好い匂いがした


「…おかえり、なさい」


泣きそうで、それでも頑張って微笑もうとする姿が愛しく思えた
細やかに震える彼女の身体は細く、小さくて
そんな姿に微笑んで、彼女の温もりを確かめるようにぎゅっと抱きしめた


「うん、ただいま、ラクス」
「キラ…、キラ…」


胸の中で子供のように泣きじゃくるラクスの姿に、ようやく、彼女の、ラクスの元へ帰ってきたような気がした
別れた時はもう、帰ってこられないかもしれないという思いが強くって、どうしても彼女の想いに答えることができなかった
父親を失ったばかりの彼女に2度もそのような思いをさせたくなかった
そして、俺自身もフレイの事をふっ切れてなかったから
まだフレイが好きだったという訳ではない
ただ、一度でも愛した人、守ると誓った人と曖昧な別れのまま終わる事なんて俺にはできなかった

でも、今はただ、彼女の存在だけを見つめる事ができる





「ラクス、泣かないで…?」


そっと、彼女の頬を伝って落ちる涙を指で拭った
彼女の泣き顔は貴重で、それはそれで可愛らしいものだけれど、笑った顔の方がもっと好きで


「君の笑った表情がみたいんだ、だから…」


笑って?
瞼に唇をそっと落とした


「貴方の傍にいても、いいですか…?」


彼女の表情を覗き込むと、不安そうな表情で


「ラクスの傍にいてもいい?」


耳元にそっと囁いた
彼女が微かに笑ったのを感じる
だから僕も笑った

ただ、ただ、彼女の存在が愛しい…
きっと、僕の感じるこの世界の美しさは、彼女が形成している















後ろばかりを向いていられない僕らだから
しっかりと前を向いて進んでいかなければならない
まだ、傷は癒えきってはいないけれど
でも、


幸せになろう




もう、決してこの世界が悲しみで満ちないように

















****あとがき。****
モノカキさんに30のお題、NO.29「おかえり」ですv…えっと、SEEDのキララクですねv最終回後の話となっております★
あまりにも最終回がキララク人間の私には悲しいものでして、仕方ないので創作してしまいました(笑)最終回ヒロインとのラブシーンがないなんて許せないっ!公式カプなのに!!(>△<)てな感じで。
とりあえず、シリアス〜な感じから、急にイチャツキシーン…(笑)まぁ、夢叶えたかったんで許してくださいv(殴)
ちなみに、どうしてこのお題にしたかというと、キラが生きてたってことをラクスちゃんが知らずに終わったからです。おいおい、「生きて帰ってくださいね」みたいなシーン作っておいてそれはないだろ?てことで、ささやかな抵抗v(笑)「おかえりなさい」はなくとも、再会で泣きつくシーンぐらい見たいじゃないですか!!(怒)
あぁ、とりあえず、二人には幸せになって欲しいです。あの大きな悲しみを乗り越えて…

03.11.07  月華の庭  みなみ朱木









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