月に嘆いたのはかつての自分
あの人に涙を流すのは今の自分







Cry for the
moon.














涙がツーと頬を伝い、最後にはポタリと音を立てて地面を微かに滲ませた
なぜ、涙が出たのかはわからない
あの日から決して涙を流したことなど無かったのに

…ただ、自然と涙がでたのだ

月はいつものように淡い光を放ち、悠然と微笑んでいるかのような優しさに満ちている
そして、自分の胸を締め付ける

あぁ、あの人が笑っているのだ

何故かそう思えて、ほっとした笑みを知らず知らずのうちに浮かべていた
孤独だと思った時なんてアレ以来一度も無い
いつも空には月が浮かんでいる事を知っているから
天気がいくら悪くたって、その雲の向こうに月は存在するということも

あんなに辛い生活を送っていたのに今ではまったく違っていて
周りは急に自分をもてはやした
しかし、自分が求めた幸せなんてソコにない
幼くも傷ついた心にそんな不確かな温かさなんていらなかった

欲しかったのはあの懐かしい温もり
欲しいのはあの人の温もり
まだ弱い心はそんな偽りの温もりさえも求めるけれど、でもやはり、それでなければいらないと強く想う

だから、あの人に縁のある彼に守られる事を選んだのだ
一番、あの人を安心させる方法だから
いつも、多忙なあの人が、それでも自分を心配してくれている事を知っているから
でも、そこは緩やかな、穏やかな時の流れを感じるけれど、それでも心は満ち足りなくて・・・

あぁ、どうしてなのだろう
どうして、今になって涙が溢れるのだろうか

微笑みを思い出す
あの優しい白い腕を
瞳を
慈悲に溢れたその眼差しが少し困ったように揺れていた

自分にとっての救いで
生きる意味でもあって

もう何一つこの世に未練などなかった
でも、悲しませたくないから・・・
自分が強く在れば笑ってくれると信じてた
しかし、どうなのだろう?
あの人は、今
ワラッテ クレテ イル?

あの人が嘆いていて
それが分かっても何もできない自分
なんて無力なことか
それが歯がゆくて
悔しくて
自分じゃ救えない事がわかった時、絶望さえ感じた
でも、…

それでも
あの人の幸せを望み
微笑むのが見たいと願い
彼女に祈った

本当ならそれはとてもオカシイのだけれど、
でも、今はそれが正しかったのだと思ってる


だって、あなたは今、微笑んでるのだから・・・




「貴女は今、幸せですか?」




返って来なくても分かっている答えに微笑むと腕に抱えていた琴をポロンと弾いた
この歌は今宵も貴女の為にある










fin















*****あとがき。*****
今日和。モノカキさんに30のお題「Cry for the moon.」で10万打企画第9弾。当サイトの創作「月華の庭」より書きました。 えっと、もしかしたらアレレ?と思う方もいるかも。前にサイトの日記で書いたSSSに多少、修正加筆したものです。そもそも、同じ題材で同じ題名をお題をやり始める前に書いていたので新作が書けなかったのですιしかし、それでは新に30のお題を制覇した事にならないだろうと思い、少し変則的ですがこういう事になりました(ぺこり)
内容はよくわからないと思いますが、全部の月華を見れば(幻想だけでなく)きっとよく意味がわかると思います。今はちょっと自己満足の状態?(おい)
え、なら早く続きかけ?…うわーん、ごめんなさーい!(逃走)

では、このお話が少しでも皆様に気にいってもらえたなら幸い…

05.09.11「月華の庭」みなみ朱木





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