一瞬を永久に留めしモノよ







monochrome











キミは笑う
きらきら輝くような笑顔
眩しさに目を細めながら、オレはすかさず右の人差し指のボタンを押した


パシャリ


シャッターの降りる音
フラッシュのひかり


途端に機嫌が悪くなるキミ
どうやら機嫌に触ったよう
そういや、キミは写真を撮られるコトが嫌いだったなぁ、
なんて頭の片隅で思いながらも、すかさずオレは再度ボタンを押す


パシャッ


キミのどんな表情も逃したくない
そんな思いが自分を動かして
きっと、後でキミを宥めることに帆走するって分かるんだけど

でも、
どれだけの表情の種類があるのだろうと思うぐらい、キミの表情は豊かで
生に満ち溢れたそれは、乏しい人間としては尊敬してしまう
…時にはあまりの感情の起伏の激しさに呆れてしまうこともあるけれど

だから、オレは写真を撮らずにはいられない



「撮られるの、嫌いなんだけど」

「そ、オレは撮るのが好きだね」




そ知らぬ顔でカメラを構えて
何度もシャッターを切って
耳へと届くのは心地よい機械音

人物を撮ることが好きだ

本人でさえ知らない
ヒトがヒトとして輝く瞬間
それを収める

自分にはない、キラキラとした眩しいもの
その一瞬を逃さぬよう見極めて、シャッターをきったときに感じる高揚感
まるで、自分もそのヒトの織り成す物語を覗いているようで…



「大体、今時、わざわざモノクロの写真なんてとるなんて変わってる」

「人間、シンプルな方が伝わる事があるだろ?」

「そんなもの?」

「そんなもの。美しい景色に色は欲しいけど、ヒトの一瞬の表情を捉えるには必要ないし」

「ふ〜ん。なかなか哲学的」



どこか感心したように頷いてる
いや、別に大した事じゃないし
…今までなんと思ってたのだろうか

どうせキミの事だから変な理由でも考えてたのだろう

なんだか呆れてしまってオレはひっそりと笑った



「白と黒の世界か…。実際そうだったら味気ないよね」

「…そうだな」

「なに考えてる…?」



考えるように返事をした自分を覗きこむように続きを求めた
些細な無言の間や表情で全てを悟るキミ
時にはよりによってなんで今聞くかなぁということだってあって



「それはお互い様!」

「まぁ、な」



ほら、今だって心の声を読み取ってる
以心伝心てこういう事いうんだな、としみじみと思う

早く言えとせかされて
苦笑いを一つ

ほんと、キミの我侭には適わない





お前のいない世界、それを考えた

だって、それは、きっと人が考えるモノクロ写真のようなものじゃないかなって

それは

味気ない世界で

寂しくて

一人じゃ耐えられない

そんな気がする



「…恥ずかしい事、平気で言うよね」

「だから言いたくなかったんですけど?…誰かさんが気づいて、言え言え煩いから」



ちょっと拗ねて言えば、ごめんと必死に謝ってきて、仕方がないなぁと許して
コレがオレ達のよくあるコミュニケーションの仕方
軽いお遊びの気持ちで怒って謝って許して
そんな一連のお決まりの行動が気持ちを不思議と穏やかにして





…きっと

きっと自分もそうだと思うけど

そう考えるだけで怖いけど

考えたくないけど

でも

それでも自分はその世界で生きていくと思う

だって、モノクロにはモノクロの良さがあるんでしょ?

思い出を抱きしめながら

懐かしさを感じながら

今日のような会話を思い出したりして

そうして生きていくよ…



「そういう考えもあるか…」

「うん、あるね」



キミは少し笑って
オレもつられたように笑った

それから気持ちを切り替えるように自分から奪い取ったカメラを構えて、こっちらを向いて唐突にシャッターを押す


パシャッ


「うん。カメラ越しにみる風景もいいね」

「だろ?」

「だからといって、撮られるのは嫌いだけど」



そう言って、もうカメラには興味が無くなったようで返してきて
今日、一番の笑顔でキミは笑う



「余計なものはないからよくわかる、だから」



つまりは、写真の中の自分の表情を忘れないように、という事で



「やっぱ、写真は撮る方がオレも好きだな…。恥ずかしさで死ねる気がする」












きっと、写真の中のオレはキミを想う笑顔を浮かべているから…











fin










*****あとがき。*****
今日和。モノカキさんに30のお題「モノクロ」より創作ですv10万打企画第6弾!
ストレス解消に書いたこの作品は えっと、一応創作ですが、好きなキャラとでも置き換えてください。きっと楽しめます。その為にキミとオレで統一してるので。ノーマルからBLまで皆様のお望みのとおりです!(笑)
一応、本人はキミを天国といのちゃん。オレを沢松とナルトをミックスした感じで書いてます(笑)
写真ネタなのは、朱木さんが高校時代、写真部だった名残です。風景にはアレですが、人を生き生きとした表情を撮るのに白黒は適してると思うのです。オレの気持ちで自分は撮っていた気がします。写真部の面々は撮るのは好きだけど撮られるのは嫌いという面白い人達でした。って自分もですが(笑)
ちょっと想像には口調の語尾を変換しなければなりませんが、その辺りは妄想力(笑)でカバーしてくださいませ☆

では、このお話が少しでも皆様に気にいってもらえたなら幸い…

05.08.20「月華の庭」みなみ朱木





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