「望ちゃん、何を隠してるの?」








秘めごと











「・・・・・えっと」

「望ちゃん、嘘はつかないほうが身のためだよ?」



にっこりと笑う普賢の姿に太公望はため息を一つ吐いた
嘘を突き通す自信は、彼にだけはまったくと言っていいほどない
なによりも、この笑顔が怖かった
長い付き合いで、彼の恐ろしさは身に沁みてわかっている



「ほ、ほら。今、桜が満開で綺麗じゃろう?花見でもしようかなー、と思ってだな…」
「…そう。僕を仲間はずれにして?…望ちゃんの浮気者!!」
「ち、違うぞ?!誰も誘ってなどおらぬ!!一人でするつもりだったからな!」



自分の台詞にオロオロと慌てる太公望を見て普賢はくすりと笑った



「わかってるよ。望ちゃんが僕を誘わないわけないもんね。ちょっとからかいたくなっただけv」
「普賢!!」
「ごめんね?望ちゃん」



ちょっぴり拗ねたように顔をそらす彼に微笑みをますます深くした
まるで少年時代に戻ったような気分だ



「ところで、何処へ花見に行くつもりだったの?」
「…ついてくるか?」
「え?…いいの?」



驚いた
望ちゃんが、彼が一人で、僕にも内緒にして行こうとしていた場所だから
きっと、彼にはとても大切な場所
そして、それは大切なコトだと思ってたから
僕まで連れて行ってくれるとは少しも思っていなかったのだ



「きっと、その方が喜んでくれると思うからな…」



誰…?
そうとは聞けなかった
あまりにも望ちゃんはどこか遠くを見つめるような表情をしていたから
ううん
それだけではない、優しい、それでいて愛しいような表情だった
胸が、ズキリと痛んだ













「綺麗じゃろう?」



太公望は誇らしげに笑った
それは平原に立つ一本の桜の大木だった
花真っ盛りで、うっすらとした桜色が美しい



「なぜ、こんな場所に…?」
「わしが植林したんじゃよ。その時はまだこんな小さな苗木だったんじゃがな…」



両手で大きさを表して、我が子の成長振りを語るように楽しそうに話す
自分の身長よりも小さかった桜は今はその面影も残ることなくすくすくと成長している



「ほら、普賢。座らぬか」
「あ、うん…」



木の幹にもたれるように座った
下から見上げた桜は見事で、まるで花の傘で、たった一本だというのにそんな感じを微塵にも感じさせなかった



「ほれ。普賢の分じゃ」
「ありがと、…って、コレお酒?」
「あたりまえじゃ。昔から花見にはお酒が付き物じゃろう?今宵は無礼講じゃ!!」
「飲みすぎちゃ駄目だよ?」
「分かっておるわ」



そうは言うものの、すばやく飲み干し、新しく注いでいる
そんな彼のペースの速さに顔をしかめるものも、止めることはしなかった
無理に明るく振舞っているような気がして…
ふとした瞬間に望ちゃんは桜を見て悲しそうに微笑んでいるから
お酒で少しでもそんな感傷を吹き飛ばして欲しかった












既に日は沈み、花見は夜桜に
日の下とは違って、一層妖艶さを醸し出した



「…綺麗、だね」
「…うむ」



望ちゃんは立ち上がって、幹に抱きついた
優しく、抱きしめるように
また、胸がズキリと痛んだ



「お主は、どうして桜が美しく咲くのか知っておるか?」
「どうして…?」
「この木の下に埋められた死体の血を吸って、赤く美しく咲くのじゃ…」
「……」
「だから、この桜はこんなにも綺麗なのだろうかのう…」
「もしかして…」



その先は言うことが出来なかった
悲しくって、せつなくて…



「初めて下界に降りた時に植えたのじゃよ。墓碑の代わりに…」



あぁ、ここは、望ちゃんの大切な人の場所
ううん、大切な人達の亡くなった場所なんだね…



「…どうして連れてきてくれたの?」
「こんなにも綺麗に咲いたのに、わし一人では勿体無いじゃろう?」
「…ありがとうね、望ちゃん。こんな、大切な場所に連れてきてくれて」



望ちゃんがちょっと照れたように微笑んだ
それは月の光に照らされて美しく見えた
ズキリと痛んでいた胸の鼓動が、今度はドクドクと早くなる



「望ちゃん大好きvv」
「うわぁ!普賢!!なにをするんじゃ、いきなり!!」
「えー、望ちゃんを一生大切しますって望ちゃんのお父さんやお母さんに態度で示してるところだよv」
「やめんかい!!あ、もしや、お主、酔っ払っておるじゃろう?!」
「酔っ払ってないよ〜」


腕の中で抜け出そうと、ジタバタ暴れる太公望を普賢は嬉しそうに抱きしめた








雲ひとつない夜空には満月が一つ
桜と、二人を照らしていた
一陣の風が吹く
それは桜を微かに揺らし、花びらを舞い散らせた
まるで、そんな二人を笑いながら見守っているようだった…














fin










*********この作品は、みんとサマへ捧げます。いつもありがとう。そして、ごめんなさいでした…*********



****あとがき。****
モノカキさんに30のお題より、NO.2です!「秘めごと」ですねー。
今回は封神演義から普太です。久しぶりに書きましたよ〜。えっと、1年ぶりかしら?(汗)楽しかったですvそして、なにより書きやすい!!
あ、そうそう、はじめてまともに普太に見えます(笑)いつも、ぶっちゃけ逆にしか見えませんでしたので(死)
てか、この話は突っ込み禁止です。なぜにあんなとこに桜があるのか…(笑)絶対にないですね。はい。草原に一本の桜があったら怖いよ、マジ(笑)
ま、MY設定ってことでお許しをv

03.04.02  月華の庭  みなみ朱木




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