君繋






天国は、人生とは予想外の出来事ばかりおこるもんだな、とぼんやり考えていた
十二支で野球をしていることしかり、
まさか、こうやって、無涯さんを目の前にして喫茶店でのんびり休日を過ごしている事しかり


「どうした?」
「いえ、なんでもないですよ」
「そうか。ならいい」


もうその事に感心が無くなったかのように、顔を無涯は雑誌に向けた
余りにも静かに黙っていたものだから心配になったのだろう
しかし、自分の境界に入りすぎようとはしない
淡々として、何事にも感心がないようで、しかし、気遣いをする人

この人のこういうトコロが心地よいのだ

ふっと天国は笑った
ついこの前までは、まさか、こんな心地よさを他人に感じるとは思っていなかった
こうやって、誰かと馴れ合うなんてとんでもないと


無涯がパタリと雑誌を閉じた音に反応して意識をそちらに向ける
彼の目線もこちらに向けられていた


「読み終えたんですか?」
「いや、まだだが」
「じゃぁ?」
「その、…勿体無いと思ってな」
「早く読み終えてしまうのがですが?」
「…天国。お前、分かってて言っていないか?」
「わかっちゃいました?」


にっこりと上目図解的に彼を見上げながら微笑み返すと、無涯は諦めたように溜息をついた
その様子をみて、再度笑った
今度はその様子が可笑しくて

あぁ、こんなに自然に笑えるんだ、俺でも
そう思う自分がどこかに居て

過去の自分が嘘みたいだ
そう思ってしまう


「俺も、勿体無いと思ってました。せっかく、無涯さんと遊びに来たのに会話がないなんて。お互いの休みが重なるなんて滅多にないのに」
「同じ、だな」
「ですね」


微かに無涯は微笑んだ
分かりにくいけれど、確かに
普段が無表情というよりは、怒った表情をしている彼だからこそ、その微笑が嬉しくて
それを独り占めできたことが嬉しくて
きっと、彼のこんな表情をみれたヤツなんてそんなにいないに違いない
その微笑一つで
ココロが温まる気がして

出会えてよかった、
そう、心から思う

貴方との繋がりが本当に嬉しい

まったくの予想外


「でも、ちょっと勿体無いけど、早く帰りましょうよ。みんなが待ってます」
「…そうだな」
「今日は夏樹に勉強教えてあげる約束してるんですよね。あぁ、後、神無ちゃんには料理教えて欲しいって。俺の料理を気に入ってくれたみたいです」
「・・・」
「どうしました?」


嬉しそうに話す天国とは反対に急に黙り込んだ無涯の顔を訝しげに覗きこんだ
その行動に無涯は気まずそう反応した


「その、随分と仲良くなったもんだなと思ってな」
「子供達と?そうですね、ハッキリ言って、子供は好きじゃなかったんですけど、それに、歳の割りにはみんな、しっかりしていて、明るくて。こんな俺でも仲良くしてくれまするのが嬉しいです」
「天国、余り自分を卑下するな。俺はそういうのは嫌いだ」
「…しってます。そういうトコ、好きですから。でもね、無涯さん。やっぱり、昔の俺は、生きているの事さえ億劫な人間でしたから。
全てに投げやりで」
「…天国」
「もう、いいませんよ。無涯さんと出会いましたから」


笑う
願いを込めて
ずっと、貴方と繋がっていたい
そう想いを込めて


そっと、無涯の手が天国の手を繋ぐ
そして歩き出す


「帰るぞ」
「はい」
「…あいつらばかり構うなよ」


照れ屋な貴方の精一杯の行動
予想外の行動に自然と自分の頬も軽く朱色に染まったような気がした
また生まれる新たな自分


「無涯さん次第です」
「…善処しよう」


難しい、と眉を顰めた彼に笑って
繋いだ手が夕日に当たって長い影を作った


貴方に逢えたから新しい自分を知るのです







***あとがき。***
モノカキさんに30のお題「予想外の出来事」より屑猿です。えー、WEB拍手掲載用に書いたので短くてすみませんιしかし、拍手にしては長いよねιアハー
一応、ぼんやりですが、屑猿はどのお話も同じ設定です。しかし、それにしてはこの天国さんは可愛すぎますが(笑)いつもは女王様的なのになぁ、屑さんに対しては(爆)
家族ぐるみのほのぼのは大好きですvそのうち、書きたい。いや、書くぞ!!




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