夜空には三日月
雲もなく、星が美しい綺麗な夜空だ
シカマルとナルトは任務が終わったばかりの体を清めるために川まで来ていた
腰を並んで岩に下ろす
静寂に満ちたこの場所は川のせせらぎと森のざわめく音しか聞こえなかった





「なぁ、聞いていいか?どうして、偽っているんだ…?」

「…あの人が悲しがるからな」

「…イルカ先生か?」

「あぁ。あの人は大切な人だからな…。悲しませたくないんだ…」

「どうして、そこまで…?」





ナルトは目を閉じた





「初めて俺に、下げずまれてきた俺に優しくしてくれた人だから。本当に心が綺麗な人だから、こんな俺を見せたくないんだよ…」

「ナルト…」

「紹介された時、はじめまして、そう言いながら先生が俺の頭に置いた手は暖かくて。それ以上に、あの人の眼差しは、今まで感じたことがないほどに優しかった…」





その時を嬉しそうに懐かしむナルトにシカマルはその時のナルトを想像した
あの頃は今よりも里の人々の態度は酷かった
子供にとって、それは脅威以外の何者でもなくて
そんな時のイルカ先生の行為は、ナルトにとって、救いのようだったものなんだろう…





「でも、本当の俺は、もう、血に染まって真っ赤だから…」





先ほど殺した敵の血を浴びた姿を一瞥し、
悲しそうに微笑んだ
その笑顔があまりにも儚くて、心が苦しい





「あの人の前だけでも、綺麗な俺でいたいんだ…。そして、一緒に笑っていたい」

「お前が、この、腐った里を見捨てない理由はそれか…?」

「たった1つでも、大切なものがある。それは俺にとって重要な理由なんだよ…。こんな最低な里でも、それは俺が守る理由に匹敵するんだ。それに、今はお前もいるし、死なせたくない仲間もいる。なぁ、お前はこんな俺はバカだと笑うか…?」





視線がぶつかる
不安そうな眼差し
いつもの、といっても、本来の無表情、無愛想な彼らしくない





「…めんどくせぇ…」

「は?」

「今更そんな説明させるなんて、めんどくせぇ奴だっていったんだよ。…あのな、お前と知り合って、みんなの胸糞悪ぃ態度の理由を知って、俺はどんどんこの里は嫌いになった。そして、お前の悲しみを知って憎んだ。でもな、憎みきれなかった。なんでだと思う…?」

「なんで、だ…?」

「俺は親父や、母親のことが好きだ。仲間のことも嫌いじゃねぇ。それにな、イルカ先生を筆頭に、みんながみんなお前に悪意を抱いてるわけじゃない、そう知っているからだ…。そんな理由で憎みきれない俺を、お前は馬鹿だと笑うか?」

「ううん…」

「だからな、そんなもんだと思うぜ?理由なんてもんわ」





だろ?
そう言って穏やかに笑うシカマルの顔を見て、ナルトはなんだか泣きそうになった
こいつは俺に甘いから
こんなに血に染まった俺に





「泣きたいなら泣けよ。俺しかいないし」





ナルトのもう、枯れてしまったと思っていた涙腺からジワリと溢れ出す
自分を抱きしめるシカマルの温もりがさらに胸に沁みる
死体にはない温もり
里人とは違う暖かな眼差し





「お前、絶対に損するタイプだぞ…。面倒なことさけまくるタイプなのに。俺に、甘くするなよ…」

「…めんどくせぇけど、俺はお前のことが好きだからな。ドベなナルトでもなく、暗部でも最強と名高い【蒼輝】でもなく、うずまきナルトのことがな。…ナルト。俺は、イルカ先生もそうだと思うぞ?確かに最初は戸惑うかもしれねぇけどよ、でも、お前はお前なんだから…」

「でも、俺は、拒絶されたくない…」

「そうやって、いつまでも、あの人を騙し続けるのか?お前はそれでいいのか…?」





いい、
何度もそう思ってたはずなのに、そのように言葉が紡げなかった
あの人を騙し続けるという罪悪感がそうなせるのか…?
自分へ向ける、あの笑顔を思い出すだけで胸が痛くなる





「…本当に、受け入れてくれると思うか?」





ありのままの自分を受け入れて欲しい
そう、願う
昔の自分にはありのままの自分を受け入れてくれる者はいなかった
でも、今の自分にはシカマルという、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいる
それは、とても甘美なる幸福だった





「あぁ。俺が保障するぜ?それに、お前だって、イルカ先生がそんなことで態度を変える奴だと思わねぇだろ?…俺が信じられないか?」

「信じる」





行って来い、
勢い良く背中を叩かれた
痛い、がなんだか勇気を貰ったような気がする





「あぁ。行って来る」





笑った
いつものように
もう、弱音は吐かない














シカマルは風のように消え去った跡を見つめた





「敵に塩を送っちまったか…」





実はイルカはナルトが蒼輝だということを知っていることをシカマルは知っていた
いや、イルカが気づいていたと言うべきか
あの人はそれでもナルトを受け入れ、彼の心を壊さぬよう、惑わさぬよう、ずっと待っていた
告白しにくる彼を…





「あの全てを包み込む優しさには勝てない、か…」





でも、
あのナルトが生きてこられたのは彼のお陰
そして、ナルトの幸せのためならそれも仕方がない
濃紺の夜空に浮かぶ月を見上げながら、彼の幸せを想った…
















「…イルカ先生、はじめまして。蒼輝です」

「…やっと、会いに来てくれたんだな…。待ってたよ…」














******あとがき。******
モノカキさんに30のお題より。最初は「はじめまして」です。
私的見解、スレたナルトとイルカ先生の出会いがテーマ。あ、でも、話的にはシカナルですが(死)何故かイルカ先生がほとんど出てこなかったですι
1度目はドベなナルトとして、2度目は本当のナルトとしての出会い。
ナルチョはイルカ先生が好きだからこそ、言うのが怖かったのです愛ゆえ、ですねvv
てか、どうしてナルトが蒼輝だってイルカ先生が知ってるんだヨ!?(汗)


03.3.27 みなみ朱木








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